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第6章 仲間と絆
1.反省
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「お兄ちゃん。これ、楽チンで良いね~ぇ。」
俺たちはオズリックを旅立ち、黄色エルフが統治する街がある森に向かっていた。
その森にある街も、海に生きる多くの水属性の魔物を食らい、その力を取り込むことによって身を青く変えて生きている青エルフが統治する港湾都市オズリックの様な特別自治区である街の1つである。
水属性の魔物の力を受け継ぐエルフは青エルフとなるので、他の属性のエルフも少数は居たがオズリックでは殆どの住民が青エルフであり、その街を統治する者も必然的に青エルフだった。
これから行く街は森に生きる大地属性の魔物の力を受け継ぐ黄色エルフが多く住む街であり、青エルフとは性質も性格も異なる為に街を探すのも容易ではない。
「どの国よりもグンと進んだオフィーリア国の文明を遠ざけて、古き良き暮らしを守って生活する懐古主義のエルフが集まっている街だっけ? どんな街なんだろうね、お兄ちゃん。」
俺には空飛ぶ車にも見えるオフィーリア国特有の乗り物、精霊の手の窓から見る初めての景色にリリアはキャッキャッとアダムと2人でお喋りをしたりして楽しそうにしていた
オズリックの街に着いてすぐから機嫌はそんなに良くはなかったが、あの俺がした失態の朝から口も利いてくれなかった事がまるで嘘の様に明るいリリアの様子に胸を撫で下ろした。
街中を散策してる時に襲ってきた悪漢のエルフ2人からリリアを守ったことで、話をしてくれるようにはなったが相変わらず機嫌は悪いままだった。
俺はリリアに機嫌を直してもらおうとパウロたちには宿で留守番をしてもらい、初めてのデートをした。
猫たちが居ないだけでしていることは日常と然程変わらなかったが、リリアにとってはそれが特別でとても嬉しかった様だった。
だがそれだけでリリアは俺を許すことはなく、森でした約束を守る為に結局は正式な婚姻の儀式をする為に覚悟を決めてオズリックの街のトップである総統に正体を明かす事にした。
俺はまた欲深い人たちが群がることになるのだろうかと不安の中、休戦協定を結んだ隣国に縁ある者ということで、賓客として丁寧に扱われはしたが……それだけだった。
色々と覚悟を決めてから臨んだのだが、そもそもがオフィーリア国では祖である双子王がこの世界の神を神と認めずに元居た世界の神を崇拝し、この国の国民も自国の聖人しか神と認めぬ風潮があった。
そして特別自治区である聖書の加護を外れた街においてはそれすらも無く、救世主である双子王のことも神聖視せずに無宗教の者も比較的多かった。
“加護無き者”にとっては救世主である双子王はオフィーリア国を作った単なる創始者でしかなく、この世界の管理者である本来の神様もまた、単なる監視者でしかない様だ。
そんな中で俺が史上5人目の神に遣わされた救世主だと名乗った所で、特に何もなかったのだ。
ただ魔力が群を抜いて高い証である黒髪黒目であり、顔の作りからしてサクラヴェール国民と同じ見た目であったことから神官の身分である特別な人を指す、『黒人』だと認識されてそれなりの歓待は受けた。
その時に参加したパーティーではカルラの姿も見たが、俺と目が合うとサッとすぐに目を逸らしてどこかへと逃げてしまった。
後になって思い出したことなのだが…、あの夜抱き合いながら「今度こそは好きな人との子供を産みたいの…。」と俺に囁いたカルラは、翌朝に俺が「無かったことに…。」と言ったのと部屋の中で怒って不機嫌になっているリリアの姿を見て何か察していたみたいだった。
そこへ全議員が必ず出席しなければならない公式パーティーに参加させられ、再会した俺の姿から立場を顧みて、俺たちに近づくことさえも止めたのだろう。
「面と向かって好きと言われたから意識をする様にはなったが……、初恋の女の子に似ていたから勘違いしただけで本当は好きでも何でもないのかもしれない…。」
リリアのことだったり公式パーティーに呼ばれたりと、ここ数日忙しかったのもあってカルラのことは考える余裕も無くすっかりと忘れてしまっていた。
「あれによって想いが遂げられた様な錯覚に陥ってしまって、心の中に居た佐藤もすっかり消えちまったな……。あれは“恋”では無く、俺はもしかして佐藤とやりたいだけだったのかな……。」
なんだかんだとあったがかけられた魔法が解けた様に迷いもなくなり、今の俺にとっては目の前のリリアのことだけが大切な人なんだと、まっすぐに思える様になった。
「5歳も離れてるし、まだ子供だし……、何より自覚は無かったけど俺がずっと佐藤のことを忘れられずにいた所為でどこかしら迷いもあったからな~……。だから佐藤にそっくりなカルラにも魅かれたんだろうし…。リリアも俺に迷いがあることに勘付いてたから、それが不安となって焼きもちって形で表れてたのかもな……。」
総統が証人となって正式な婚姻の儀式をオズリックの街の儀式塔で行い、すっかりと憑き物が落ちたかの様にまっすぐにリリアを見て話す様になった俺の姿から、リリアは安心したのか以前の様な焼きもちを焼かなくなった。
「結局なんだかんだと色々あって1週間もあの街に居てしまって、使命を疎かにしてしまっていたから反省しなきゃな~………。」
俺たちはオズリックを旅立ち、黄色エルフが統治する街がある森に向かっていた。
その森にある街も、海に生きる多くの水属性の魔物を食らい、その力を取り込むことによって身を青く変えて生きている青エルフが統治する港湾都市オズリックの様な特別自治区である街の1つである。
水属性の魔物の力を受け継ぐエルフは青エルフとなるので、他の属性のエルフも少数は居たがオズリックでは殆どの住民が青エルフであり、その街を統治する者も必然的に青エルフだった。
これから行く街は森に生きる大地属性の魔物の力を受け継ぐ黄色エルフが多く住む街であり、青エルフとは性質も性格も異なる為に街を探すのも容易ではない。
「どの国よりもグンと進んだオフィーリア国の文明を遠ざけて、古き良き暮らしを守って生活する懐古主義のエルフが集まっている街だっけ? どんな街なんだろうね、お兄ちゃん。」
俺には空飛ぶ車にも見えるオフィーリア国特有の乗り物、精霊の手の窓から見る初めての景色にリリアはキャッキャッとアダムと2人でお喋りをしたりして楽しそうにしていた
オズリックの街に着いてすぐから機嫌はそんなに良くはなかったが、あの俺がした失態の朝から口も利いてくれなかった事がまるで嘘の様に明るいリリアの様子に胸を撫で下ろした。
街中を散策してる時に襲ってきた悪漢のエルフ2人からリリアを守ったことで、話をしてくれるようにはなったが相変わらず機嫌は悪いままだった。
俺はリリアに機嫌を直してもらおうとパウロたちには宿で留守番をしてもらい、初めてのデートをした。
猫たちが居ないだけでしていることは日常と然程変わらなかったが、リリアにとってはそれが特別でとても嬉しかった様だった。
だがそれだけでリリアは俺を許すことはなく、森でした約束を守る為に結局は正式な婚姻の儀式をする為に覚悟を決めてオズリックの街のトップである総統に正体を明かす事にした。
俺はまた欲深い人たちが群がることになるのだろうかと不安の中、休戦協定を結んだ隣国に縁ある者ということで、賓客として丁寧に扱われはしたが……それだけだった。
色々と覚悟を決めてから臨んだのだが、そもそもがオフィーリア国では祖である双子王がこの世界の神を神と認めずに元居た世界の神を崇拝し、この国の国民も自国の聖人しか神と認めぬ風潮があった。
そして特別自治区である聖書の加護を外れた街においてはそれすらも無く、救世主である双子王のことも神聖視せずに無宗教の者も比較的多かった。
“加護無き者”にとっては救世主である双子王はオフィーリア国を作った単なる創始者でしかなく、この世界の管理者である本来の神様もまた、単なる監視者でしかない様だ。
そんな中で俺が史上5人目の神に遣わされた救世主だと名乗った所で、特に何もなかったのだ。
ただ魔力が群を抜いて高い証である黒髪黒目であり、顔の作りからしてサクラヴェール国民と同じ見た目であったことから神官の身分である特別な人を指す、『黒人』だと認識されてそれなりの歓待は受けた。
その時に参加したパーティーではカルラの姿も見たが、俺と目が合うとサッとすぐに目を逸らしてどこかへと逃げてしまった。
後になって思い出したことなのだが…、あの夜抱き合いながら「今度こそは好きな人との子供を産みたいの…。」と俺に囁いたカルラは、翌朝に俺が「無かったことに…。」と言ったのと部屋の中で怒って不機嫌になっているリリアの姿を見て何か察していたみたいだった。
そこへ全議員が必ず出席しなければならない公式パーティーに参加させられ、再会した俺の姿から立場を顧みて、俺たちに近づくことさえも止めたのだろう。
「面と向かって好きと言われたから意識をする様にはなったが……、初恋の女の子に似ていたから勘違いしただけで本当は好きでも何でもないのかもしれない…。」
リリアのことだったり公式パーティーに呼ばれたりと、ここ数日忙しかったのもあってカルラのことは考える余裕も無くすっかりと忘れてしまっていた。
「あれによって想いが遂げられた様な錯覚に陥ってしまって、心の中に居た佐藤もすっかり消えちまったな……。あれは“恋”では無く、俺はもしかして佐藤とやりたいだけだったのかな……。」
なんだかんだとあったがかけられた魔法が解けた様に迷いもなくなり、今の俺にとっては目の前のリリアのことだけが大切な人なんだと、まっすぐに思える様になった。
「5歳も離れてるし、まだ子供だし……、何より自覚は無かったけど俺がずっと佐藤のことを忘れられずにいた所為でどこかしら迷いもあったからな~……。だから佐藤にそっくりなカルラにも魅かれたんだろうし…。リリアも俺に迷いがあることに勘付いてたから、それが不安となって焼きもちって形で表れてたのかもな……。」
総統が証人となって正式な婚姻の儀式をオズリックの街の儀式塔で行い、すっかりと憑き物が落ちたかの様にまっすぐにリリアを見て話す様になった俺の姿から、リリアは安心したのか以前の様な焼きもちを焼かなくなった。
「結局なんだかんだと色々あって1週間もあの街に居てしまって、使命を疎かにしてしまっていたから反省しなきゃな~………。」
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