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第6章 仲間と絆
2.聖書と聖人
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「そういえば、お兄ちゃん…。」
「何?」
アダムと遊んでいたリリアが突然思い出したかの様に俺の方に向き、チラリと昼寝をしているパウロを見てから話しかけてきた。
「色々あってゆっくり話ができる時も無かったし、とても気になってるんだけど……。あの私が悪い奴らに襲われた時にパウロが……、パウロであってパウロじゃなくなったじゃない? あれって本当に神様だったの? それに時が解放されたって………。」
「うん……。前も…、パウロと初めて出会った時にも、神様がパウロの体を借りて俺に話しかけてきたんだ。だから本当だよ…。時が解放されたってのは……。」
たぶん神力のことなのだろう……。
神様が現れたのとほぼ同時に指輪が光りだし、その中から出てきた聖書にまた一節、詩の様なものが紡がれた。
「心の底から想う、真に愛する者を見つけた証に守りの力を授ける……か…。俺の大事だと思う存在、リリアやパウロたちを害した相手に向かって、怒りの感情がスイッチとなって神雷によって罰を与える力だって神様は言っていたな……。」
「お兄ちゃん…。」
「リリア…。」
目をウルウルとさせたリリアに見つめられ、俺もリリアの手を握って見つめ合った。
「んニャッホン! ルカ様? リリア様とラブラブなのは結構ですが大事なことを忘れちゃいけませんよ?」
「…っ!」
ホワ~っとしたハートでも飛び交っていそうな雰囲気になったのをイブに窘められ、俺とリリアはハッと我に返ると、なんとなくお互いに気まずくなって目を逸らし、照れてしまった。
「そ、そうだなっ!」
俺に与えられた3つの神力の内の1つ、俺の怒りの感情をスイッチとして俺の大事な存在に危害を加えたものに感情を具現化して攻撃する神雷……。
「聖書には『守りの力』ってあったけど、これって……防御力じゃなくて攻撃力だよな…。」
「攻撃に勝る防御はない、ってやつじゃにゃいか? 」
そうアンドレアは俺に話しかけてきた。
「そうかもしれないけど……。俺はなんだか怖いな…。」
聖書を破壊するものからこの世界を守る為に必要だと思って神様が与えた力なのだろうが……、ただ怖かった。
この世界では魔物とも言われる獣などの形をしたものは食料の為にと狩ることに少しは慣れたのだが…、流石に人の形をしたものを殺したとなると自分自身が怖くなった。
「悪漢の青エルフに襲われたあの時は、神様が俺の茫然自失とした様を見て心配して、悪漢とはいえただの人であったので生き返らせてはくれたけど……。生き返れば俺の心の靄が晴れるってもんでもないしな~ぁ。」
確かにリリアが襲われはしたけど、殺す程でもなかったことなのに殺してしまったという事実が俺の心の中に影を落としていた。
「力加減を誤らなければ殺すことはないかもしれないし、感情が昂らない様に気を付けよう…。」
「ねぇ、お兄ちゃん。」
俺が考え事をしていると、さっきまで寝ていたパウロが声をかけてきた。
「お腹が空いたにゃ~。」
「そうだな…。そろそろお昼にするか……。」
昼食を作る為に開けた見晴らしの良い場所に精霊の手を止めようと人工精霊に思考を飛ばすと、人工精霊が素早く最適な場所を見つけて精霊の手をふわりと止めた。
「人工精霊ってのは便利だなぁ。いちいち自分で場所を探さなくても良いもんな~……。」
「これってさ、お兄ちゃん。自然に居る精霊じゃどうしてダメなんだろうね。人工的に精霊を作るなんて大変そうなのに……。」
「自然のあちこちに存在している精霊たちは、寿命を終えたエルフたちの肉体を捨てた後の姿だって前にアージェが言っていただろ…? だから流石に心を持つ自然の精霊を使うのは憚られるんじゃないか?」
俺の返答に、質問したリリアは精霊の手から降りて昼食の準備をしていた手が止まり、「う~ん……。」と頭をひねりだした。
無理もない……。
死んだ後に精霊になるだなんて、このオフィーリア国の住民であるエルフだけに存在する現象であり、俺は勿論のこと、死生観の全く違う国であるサクラヴェール国で生まれ育ったリリアには理解の難しいことなのだから。
「私たちサクラヴェール国の人間は、死ねば聖人様の居る神の国に招かれ、新たな肉体を与えられて別世界に行くことができるって言われてたから…、なんだか不思議……。」
「別世界?」
「うん。ニノン……だったかな? 月に数回行っていた街の教会学校でそう教えられたよ。」
ニノンとは……、もしかしてニホン(日本)のことなのだろうか………。
サクラヴェール国の創主である聖人、“桜庭 命”が遺した教えなのだからたぶんそうなのだろう。
この世界では全ての国が基本的に『聖書と聖人』を柱として据えた宗教国家であり、それぞれの国毎にそれぞれの聖人が聖書に遺した教えや思い、力といったモノが魔力によってそのまま形となって顕現されてできた国なのだから、“桜庭 命”がそう望んでいたのならそれはおかしなことでもない。
「いったいどんな人だったんだろうな……、“桜庭 命”って………。」
「何?」
アダムと遊んでいたリリアが突然思い出したかの様に俺の方に向き、チラリと昼寝をしているパウロを見てから話しかけてきた。
「色々あってゆっくり話ができる時も無かったし、とても気になってるんだけど……。あの私が悪い奴らに襲われた時にパウロが……、パウロであってパウロじゃなくなったじゃない? あれって本当に神様だったの? それに時が解放されたって………。」
「うん……。前も…、パウロと初めて出会った時にも、神様がパウロの体を借りて俺に話しかけてきたんだ。だから本当だよ…。時が解放されたってのは……。」
たぶん神力のことなのだろう……。
神様が現れたのとほぼ同時に指輪が光りだし、その中から出てきた聖書にまた一節、詩の様なものが紡がれた。
「心の底から想う、真に愛する者を見つけた証に守りの力を授ける……か…。俺の大事だと思う存在、リリアやパウロたちを害した相手に向かって、怒りの感情がスイッチとなって神雷によって罰を与える力だって神様は言っていたな……。」
「お兄ちゃん…。」
「リリア…。」
目をウルウルとさせたリリアに見つめられ、俺もリリアの手を握って見つめ合った。
「んニャッホン! ルカ様? リリア様とラブラブなのは結構ですが大事なことを忘れちゃいけませんよ?」
「…っ!」
ホワ~っとしたハートでも飛び交っていそうな雰囲気になったのをイブに窘められ、俺とリリアはハッと我に返ると、なんとなくお互いに気まずくなって目を逸らし、照れてしまった。
「そ、そうだなっ!」
俺に与えられた3つの神力の内の1つ、俺の怒りの感情をスイッチとして俺の大事な存在に危害を加えたものに感情を具現化して攻撃する神雷……。
「聖書には『守りの力』ってあったけど、これって……防御力じゃなくて攻撃力だよな…。」
「攻撃に勝る防御はない、ってやつじゃにゃいか? 」
そうアンドレアは俺に話しかけてきた。
「そうかもしれないけど……。俺はなんだか怖いな…。」
聖書を破壊するものからこの世界を守る為に必要だと思って神様が与えた力なのだろうが……、ただ怖かった。
この世界では魔物とも言われる獣などの形をしたものは食料の為にと狩ることに少しは慣れたのだが…、流石に人の形をしたものを殺したとなると自分自身が怖くなった。
「悪漢の青エルフに襲われたあの時は、神様が俺の茫然自失とした様を見て心配して、悪漢とはいえただの人であったので生き返らせてはくれたけど……。生き返れば俺の心の靄が晴れるってもんでもないしな~ぁ。」
確かにリリアが襲われはしたけど、殺す程でもなかったことなのに殺してしまったという事実が俺の心の中に影を落としていた。
「力加減を誤らなければ殺すことはないかもしれないし、感情が昂らない様に気を付けよう…。」
「ねぇ、お兄ちゃん。」
俺が考え事をしていると、さっきまで寝ていたパウロが声をかけてきた。
「お腹が空いたにゃ~。」
「そうだな…。そろそろお昼にするか……。」
昼食を作る為に開けた見晴らしの良い場所に精霊の手を止めようと人工精霊に思考を飛ばすと、人工精霊が素早く最適な場所を見つけて精霊の手をふわりと止めた。
「人工精霊ってのは便利だなぁ。いちいち自分で場所を探さなくても良いもんな~……。」
「これってさ、お兄ちゃん。自然に居る精霊じゃどうしてダメなんだろうね。人工的に精霊を作るなんて大変そうなのに……。」
「自然のあちこちに存在している精霊たちは、寿命を終えたエルフたちの肉体を捨てた後の姿だって前にアージェが言っていただろ…? だから流石に心を持つ自然の精霊を使うのは憚られるんじゃないか?」
俺の返答に、質問したリリアは精霊の手から降りて昼食の準備をしていた手が止まり、「う~ん……。」と頭をひねりだした。
無理もない……。
死んだ後に精霊になるだなんて、このオフィーリア国の住民であるエルフだけに存在する現象であり、俺は勿論のこと、死生観の全く違う国であるサクラヴェール国で生まれ育ったリリアには理解の難しいことなのだから。
「私たちサクラヴェール国の人間は、死ねば聖人様の居る神の国に招かれ、新たな肉体を与えられて別世界に行くことができるって言われてたから…、なんだか不思議……。」
「別世界?」
「うん。ニノン……だったかな? 月に数回行っていた街の教会学校でそう教えられたよ。」
ニノンとは……、もしかしてニホン(日本)のことなのだろうか………。
サクラヴェール国の創主である聖人、“桜庭 命”が遺した教えなのだからたぶんそうなのだろう。
この世界では全ての国が基本的に『聖書と聖人』を柱として据えた宗教国家であり、それぞれの国毎にそれぞれの聖人が聖書に遺した教えや思い、力といったモノが魔力によってそのまま形となって顕現されてできた国なのだから、“桜庭 命”がそう望んでいたのならそれはおかしなことでもない。
「いったいどんな人だったんだろうな……、“桜庭 命”って………。」
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