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第6章 仲間と絆
3.コンプレックス
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俺たちは昼食を食べ終えると、精霊の手に搭載してある人工精霊が奏でる音楽をBGMにお茶を飲みながら休憩していた。
最近では猫たちも皆、パウロから与えられた力の影響で人前以外では二足歩行になっているのもあってか手先が随分と器用になってきた中、一人ピエトロだけが不器用であった。
「ピエトロ。君は皆と一緒に遊ばないのかい?」
人間に化けれる様になったパウロの助けになりたいと、人間の様に自由自在に手を使える様にする為にどうしたらいいのかとパウロ以外の猫たちに相談された俺は、訓練にもなりそうなお手玉などの手や指を使う遊びを教えた。
だが、ピエトロだけは何度やっても上手くはいかず、猫たちの輪にも混ざれないのですっかりといじけてしまっていた。
「僕は……。僕は狩りができないばかりでなく、皆と一緒に手遊びをすることもできないんだにゃ……。同じ兄弟なのに何でこんなにもアンドレアとは違うんだろうにゃ……。」
両手で自分の尻尾を掴んで項垂れているピエトロは、ため息を吐きながら座っている俺の太ももの辺りにコテンともたれ掛かってきた。
「ルカ様…。僕ね…、小さい頃からママによく言われてたんだにゃ……。『お前は、どうして他の兄弟たちと違って鈍くさいんだろうね。』って………。」
「ピエトロ……。」
外からの見た目には一人っ子であった俺には落ち込んでいるピエトロを慰めれる様な言葉が思い浮かばす、ただそっと頭を撫でることしかできなかった。
「そういえば……、イタリアのおばあちゃん家に親戚一同が集まった時には、イトコたちから散々見た目の事を弄られてたな~ぁ。本当にこの家の血筋の子かって……。自分とイトコ同士だとは到底思えないって……。おばあちゃんは優しかったけど………。」
そうボソリと呟きながら昔を懐かしんでいると、視界に段々と靄がかかってきて、意識も徐々に遠くなってきた……。
「……カ! ルカ! 早く起きなさい!! 遅刻するわよっ!」
「ぅ、うぅ~ん……。ここは………?」
次に意識を取り戻した時に目の前に見えたものは、長年見慣れていた光景であった。
「ここは……、僕の、部屋? えっ…? どうして……。」
僕がボーっとしたまま今の状況が分からずに突っ立っていると、部屋のドアが勢いよく開け放たれた。
「ルカ! いい加減……。なんだ…、起きてるじゃないの。起きたなら着替えて降りていらっしゃい。」
「母……さん…?」
「何よ?」
久方ぶりに母さんの顔を見た俺は、自然と目からジワリと涙が染み出てきた。
「な…、何? 涙ぐんじゃって、本当にどうしたのよ……? どっか痛いの? 体調悪いなら……。」
「う、ううん。……何でもない。大丈夫だよ。」
俺は目から流れ出ていた涙を着ていたパジャマの袖で拭い、母さんを心配させまいと笑顔を見せた。
「そう…? 変な子ねぇ……。大丈夫なら早く朝ごはん食べに降りていらっしゃい。」
「は~い。」
俺が元気に返事をすると、母さんは首を捻りながらも1階へ階段を降りて行った。
「これは……夢? それとも……あの世界での事が夢?」
訳が分からなくなりながらも、俺は手慣れた動作でとりあえず制服に着替えて階段を降りた。
「やっと起きてきたわね…。おはよう、寝坊すけさん。」
「おはよう、母さん。」
俺が食卓の席に着くと、ジャムかクリームが挟んであるクロワッサンに牛乳たっぷりのカプチーノとカットされた果物が1~2種類という我が家では定番の朝ごはんが目の前に並べられていた。
「懐かしい……。」
「……えっ?」
小さい頃から見慣れていた光景を久しぶりに見て、思わず呟いてしまった俺の一言に母さんも父さんも反応してしまい、俺は少し焦った。
「な、何でもないよ。さっ! 食べよ! いただきま~す。」
母さんもイタリアで子供の頃から食べ慣れているという、何の変哲もないシンプルなその朝ごはんに胸の奥がじんわりと温かくなった。
俺の記憶にある通り、共働きである両親は毎日朝ごはんの時に“今日の予定”の話をする。
お互いに今日は何時に帰るだとか、夕飯はどちらが用意するだとか……、そんな何のこともない話なのだが、今の俺には喜びや懐かしさが入り混じった何とも言えない気持ちになった。
「ほら、ルカ。ボーっとして……。まだ目が覚めていないのか?」
ニッと悪戯っぽく笑う父さんにそう言われ、俺は食べている途中で止まっていた手を動かした。
食卓の傍にあるチェストにいつも飾られている少し幼い俺と黒の姿が入った写真立て……。
朝は特に芳香剤の様にエスプレッソの匂いが充満した家の中のなんとも香ばしい匂い……。
何を見ても“懐かしい我が家”の風景に、俺は思わず涙が零れていた。
「ちょっと、ルカ……! やっぱり貴方、どこか体調でも悪いんじゃないの?」
「泣いたりなんかして……。何か辛いことでもあったのか?」
心配そうに俺の顔を覗き込む両親の顔を見てハッと我に返った。
「えっ? あっ……。 目にゴミでも入ったかな? 何でもない! 本当に何でもないから……。」
「そう? 本当に?」
「うん。 大丈夫だよ! さっ! 学校に遅れちゃう…。」
俺はその場を誤魔化す様にバタバタと洗面所に向かい、冷たい水で顔を洗って気を引き締めた。
「これが夢にしろ現実にしろ。母さんにも父さんにも心配を掛けちゃダメだ……。」
最近では猫たちも皆、パウロから与えられた力の影響で人前以外では二足歩行になっているのもあってか手先が随分と器用になってきた中、一人ピエトロだけが不器用であった。
「ピエトロ。君は皆と一緒に遊ばないのかい?」
人間に化けれる様になったパウロの助けになりたいと、人間の様に自由自在に手を使える様にする為にどうしたらいいのかとパウロ以外の猫たちに相談された俺は、訓練にもなりそうなお手玉などの手や指を使う遊びを教えた。
だが、ピエトロだけは何度やっても上手くはいかず、猫たちの輪にも混ざれないのですっかりといじけてしまっていた。
「僕は……。僕は狩りができないばかりでなく、皆と一緒に手遊びをすることもできないんだにゃ……。同じ兄弟なのに何でこんなにもアンドレアとは違うんだろうにゃ……。」
両手で自分の尻尾を掴んで項垂れているピエトロは、ため息を吐きながら座っている俺の太ももの辺りにコテンともたれ掛かってきた。
「ルカ様…。僕ね…、小さい頃からママによく言われてたんだにゃ……。『お前は、どうして他の兄弟たちと違って鈍くさいんだろうね。』って………。」
「ピエトロ……。」
外からの見た目には一人っ子であった俺には落ち込んでいるピエトロを慰めれる様な言葉が思い浮かばす、ただそっと頭を撫でることしかできなかった。
「そういえば……、イタリアのおばあちゃん家に親戚一同が集まった時には、イトコたちから散々見た目の事を弄られてたな~ぁ。本当にこの家の血筋の子かって……。自分とイトコ同士だとは到底思えないって……。おばあちゃんは優しかったけど………。」
そうボソリと呟きながら昔を懐かしんでいると、視界に段々と靄がかかってきて、意識も徐々に遠くなってきた……。
「……カ! ルカ! 早く起きなさい!! 遅刻するわよっ!」
「ぅ、うぅ~ん……。ここは………?」
次に意識を取り戻した時に目の前に見えたものは、長年見慣れていた光景であった。
「ここは……、僕の、部屋? えっ…? どうして……。」
僕がボーっとしたまま今の状況が分からずに突っ立っていると、部屋のドアが勢いよく開け放たれた。
「ルカ! いい加減……。なんだ…、起きてるじゃないの。起きたなら着替えて降りていらっしゃい。」
「母……さん…?」
「何よ?」
久方ぶりに母さんの顔を見た俺は、自然と目からジワリと涙が染み出てきた。
「な…、何? 涙ぐんじゃって、本当にどうしたのよ……? どっか痛いの? 体調悪いなら……。」
「う、ううん。……何でもない。大丈夫だよ。」
俺は目から流れ出ていた涙を着ていたパジャマの袖で拭い、母さんを心配させまいと笑顔を見せた。
「そう…? 変な子ねぇ……。大丈夫なら早く朝ごはん食べに降りていらっしゃい。」
「は~い。」
俺が元気に返事をすると、母さんは首を捻りながらも1階へ階段を降りて行った。
「これは……夢? それとも……あの世界での事が夢?」
訳が分からなくなりながらも、俺は手慣れた動作でとりあえず制服に着替えて階段を降りた。
「やっと起きてきたわね…。おはよう、寝坊すけさん。」
「おはよう、母さん。」
俺が食卓の席に着くと、ジャムかクリームが挟んであるクロワッサンに牛乳たっぷりのカプチーノとカットされた果物が1~2種類という我が家では定番の朝ごはんが目の前に並べられていた。
「懐かしい……。」
「……えっ?」
小さい頃から見慣れていた光景を久しぶりに見て、思わず呟いてしまった俺の一言に母さんも父さんも反応してしまい、俺は少し焦った。
「な、何でもないよ。さっ! 食べよ! いただきま~す。」
母さんもイタリアで子供の頃から食べ慣れているという、何の変哲もないシンプルなその朝ごはんに胸の奥がじんわりと温かくなった。
俺の記憶にある通り、共働きである両親は毎日朝ごはんの時に“今日の予定”の話をする。
お互いに今日は何時に帰るだとか、夕飯はどちらが用意するだとか……、そんな何のこともない話なのだが、今の俺には喜びや懐かしさが入り混じった何とも言えない気持ちになった。
「ほら、ルカ。ボーっとして……。まだ目が覚めていないのか?」
ニッと悪戯っぽく笑う父さんにそう言われ、俺は食べている途中で止まっていた手を動かした。
食卓の傍にあるチェストにいつも飾られている少し幼い俺と黒の姿が入った写真立て……。
朝は特に芳香剤の様にエスプレッソの匂いが充満した家の中のなんとも香ばしい匂い……。
何を見ても“懐かしい我が家”の風景に、俺は思わず涙が零れていた。
「ちょっと、ルカ……! やっぱり貴方、どこか体調でも悪いんじゃないの?」
「泣いたりなんかして……。何か辛いことでもあったのか?」
心配そうに俺の顔を覗き込む両親の顔を見てハッと我に返った。
「えっ? あっ……。 目にゴミでも入ったかな? 何でもない! 本当に何でもないから……。」
「そう? 本当に?」
「うん。 大丈夫だよ! さっ! 学校に遅れちゃう…。」
俺はその場を誤魔化す様にバタバタと洗面所に向かい、冷たい水で顔を洗って気を引き締めた。
「これが夢にしろ現実にしろ。母さんにも父さんにも心配を掛けちゃダメだ……。」
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