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第8章 愛と哀しみ
3.自己嫌悪と積極性
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「お兄ちゃん……。」
リリアが俺の服の袖を掴み、クイックイッと引っ張って俺の頭を自分の目線にまで下がらせようとした。
「ん?」
なんだろうかとリリアと目線が合うところまで屈んでみると――。
「あのね……。」
リリアはつま先立ちで少し背伸びをし、エイッと勢いをつけて俺の頬にチュッとキスをした。
突然の事にビックリした俺がキスをされた側の自分の頬を触ってリリアの方を見ると、照れた様子で顔を紅潮させてプイっと目線を逸らした。
こんな時に何て言えばいいのか……どう反応したらいいかも分からずにドギマギしていると、少し口篭もりながらリリアの方から話しかけてきた。
「あの、ね……。猫たちと仲良くするのも大事だけど、私ももっとお兄ちゃんと仲良くなりたいな……。少し――少しだけね、寂しくなっちゃったの。」
言い終わると、恥ずかしさからなのかリリアは自分の顔をバッと両手で覆い隠した。
「ごめんね、リリア。気が付かなくって……。」
リリアは両手で顔を覆ったまま、無言で首を横に振った。
「えっと………。」
これ以上の言葉が出てこない俺は何と言えばいいのかと四苦八苦し、「えっと……」と何度か繰り返し漏らすだけだった。
「わっ、私っ! アンドレアたちの所へ行ってくるね。」
何とも言えない空気に耐えられなくなったのか、そう言ってリリアは逃げ出した。
会話に困ってしまっていた俺は正直、助かったと思い安堵したが―――。
「あぁ~! もうっ! 情けないっ!! 情けない……。」
それ以上に年下のリリアに気を使われた自分自身に苛立ち、頭をガシガシと掻きむしった。
年上として、男として……リリアにとって頼りがいのある存在でありたいとは常に思っているが、俺に恋心を抱いているリリアの女心をどう扱ってい良いのやら分からないのが現状だ。
年下とは全然思えないぐらいに、こんなヘナチョコの俺よりも数段もリリアの方が大人だと思えることばかりだし………。
この異世界に来る以前、地球に居た頃には女友達だっていたし、人付き合いという意味では女との付き合いに慣れていないってことはない。
でもあくまでも『友達』だったし、異性とは言っても同性の男友達と、会話も遊んだりする内容も然程違いはなかった。
確かにその友達グループの中に好きだった女の子はいたが……同い年なのもあったし、相手が俺のことを何とも思ってはいなかったのは明らかで、会話一つに今ほど悩んだことはほぼ無かったのだった。
「女の子のことを、ただ一方的に好きってだけならこんなにも悩まなくて済むのに……。女の子の方から好かれるって言うのは――俺からも大事にしたいって思っているような関係は、簡単に話しができなくなるほど悩むものなんだなぁ………。」
情けなくも、今の俺には自分自身を責める以外のことに目を向ける余裕はなかった。
――と、モヤモヤして考え事をしていると、向こうの方から俺を呼ぶ声が聞こえてきた。
「お兄ちゃ~ん!」
「んにゃ~ん!」
聞こえてきた声に目を向けると、驚いたような焦った様な様子でパウロとシモーネが俺を目掛けて慌てて駆けてきた。
「ど、どうしたの? 何か……あった?」
二人の異様な様子に俺はギョッとし、鳩尾辺りに二人そろって突撃された痛みも放って尋ねた。
「あの、ね……変な………変な子が居るの……。」
息も絶え絶えに俺に答えるパウロの耳は警戒からか後ろの方に向けつつも尻尾は3倍ぐらいにボワリと膨らんでおり、シモーネはシモーネで俺の脇の辺りに頭を埋めて体を丸めていた。
「変な子? どこに居るの?」
パウロは俺の問いかけに腕をピッと伸ばし、さっきまで楽しそうに遊んでいた水際近くの草むらを指し示したのだった。
こちらに敵意を示すようなものならば排除するなり逃げるなりしなければならないが、どうにもそういう感じではなさそうだと感じた俺はしっかりとしがみ付く二人を抱えたまま確認に行くことにした。
「大丈夫……大丈夫だよ。何かあっても俺が守ってやるからね。」
両腕で抱きかかえたパウロとシモーネに頬擦りをして少し落ち着かせると、多少は警戒しながらもゆっくりとその場所へと近付いたのだった。
今は両手とも使えないものだから足で草を踏みつけ、少しずつかき分けながら進むと―――。
「――えっ!?」
そこにはぐったりと弱り切った“猫っぽい”生き物が転がっていた。
どうしたものかと思ったが、取りあえずは抱えていた二人を下へと降ろし、ソーッと胴体辺りを触ってみるが反応がなかった。
だが体が少し冷えているんじゃないかという感じではあったがそれは死体の冷たさではなく、手の平に伝わってきたその温もりと体内より響く鼓動から生きているのは確かだった。
咄嗟に「助けなければっ!」と思った俺はサッと手を伸ばして抱きかかえ、リリアたちが居る方へと走った。
「リリア~! アンドレア~! ピエトロ~! アダム~! イブ~!」
走りながら皆の名前を呼ぶとワイワイと楽しく遊んでいたらしき動きも会話もピタリと止め、俺の方に一斉に向いてきた。
「お兄ちゃん?」
「どうなされたのです?」
リリアとイブはなんだろうかとキョトンとした顔をしている。
「おや?」
アダムは首を伸ばしてこちらの様子を窺っているようだ。
「あぁ~……。今、もう少しで大物が獲れたのに――。」
声を掛けたことで俺が邪魔をしてしまっていたようでアンドレはしょんぼりと耳とヒゲを下げ、悔しそうな顔をしている。
ピエトロは―――顏こそこちらに向けてはいるが、チラチラとアンドレアの方を見ていてそれどころではないらしい………。
リリアが俺の服の袖を掴み、クイックイッと引っ張って俺の頭を自分の目線にまで下がらせようとした。
「ん?」
なんだろうかとリリアと目線が合うところまで屈んでみると――。
「あのね……。」
リリアはつま先立ちで少し背伸びをし、エイッと勢いをつけて俺の頬にチュッとキスをした。
突然の事にビックリした俺がキスをされた側の自分の頬を触ってリリアの方を見ると、照れた様子で顔を紅潮させてプイっと目線を逸らした。
こんな時に何て言えばいいのか……どう反応したらいいかも分からずにドギマギしていると、少し口篭もりながらリリアの方から話しかけてきた。
「あの、ね……。猫たちと仲良くするのも大事だけど、私ももっとお兄ちゃんと仲良くなりたいな……。少し――少しだけね、寂しくなっちゃったの。」
言い終わると、恥ずかしさからなのかリリアは自分の顔をバッと両手で覆い隠した。
「ごめんね、リリア。気が付かなくって……。」
リリアは両手で顔を覆ったまま、無言で首を横に振った。
「えっと………。」
これ以上の言葉が出てこない俺は何と言えばいいのかと四苦八苦し、「えっと……」と何度か繰り返し漏らすだけだった。
「わっ、私っ! アンドレアたちの所へ行ってくるね。」
何とも言えない空気に耐えられなくなったのか、そう言ってリリアは逃げ出した。
会話に困ってしまっていた俺は正直、助かったと思い安堵したが―――。
「あぁ~! もうっ! 情けないっ!! 情けない……。」
それ以上に年下のリリアに気を使われた自分自身に苛立ち、頭をガシガシと掻きむしった。
年上として、男として……リリアにとって頼りがいのある存在でありたいとは常に思っているが、俺に恋心を抱いているリリアの女心をどう扱ってい良いのやら分からないのが現状だ。
年下とは全然思えないぐらいに、こんなヘナチョコの俺よりも数段もリリアの方が大人だと思えることばかりだし………。
この異世界に来る以前、地球に居た頃には女友達だっていたし、人付き合いという意味では女との付き合いに慣れていないってことはない。
でもあくまでも『友達』だったし、異性とは言っても同性の男友達と、会話も遊んだりする内容も然程違いはなかった。
確かにその友達グループの中に好きだった女の子はいたが……同い年なのもあったし、相手が俺のことを何とも思ってはいなかったのは明らかで、会話一つに今ほど悩んだことはほぼ無かったのだった。
「女の子のことを、ただ一方的に好きってだけならこんなにも悩まなくて済むのに……。女の子の方から好かれるって言うのは――俺からも大事にしたいって思っているような関係は、簡単に話しができなくなるほど悩むものなんだなぁ………。」
情けなくも、今の俺には自分自身を責める以外のことに目を向ける余裕はなかった。
――と、モヤモヤして考え事をしていると、向こうの方から俺を呼ぶ声が聞こえてきた。
「お兄ちゃ~ん!」
「んにゃ~ん!」
聞こえてきた声に目を向けると、驚いたような焦った様な様子でパウロとシモーネが俺を目掛けて慌てて駆けてきた。
「ど、どうしたの? 何か……あった?」
二人の異様な様子に俺はギョッとし、鳩尾辺りに二人そろって突撃された痛みも放って尋ねた。
「あの、ね……変な………変な子が居るの……。」
息も絶え絶えに俺に答えるパウロの耳は警戒からか後ろの方に向けつつも尻尾は3倍ぐらいにボワリと膨らんでおり、シモーネはシモーネで俺の脇の辺りに頭を埋めて体を丸めていた。
「変な子? どこに居るの?」
パウロは俺の問いかけに腕をピッと伸ばし、さっきまで楽しそうに遊んでいた水際近くの草むらを指し示したのだった。
こちらに敵意を示すようなものならば排除するなり逃げるなりしなければならないが、どうにもそういう感じではなさそうだと感じた俺はしっかりとしがみ付く二人を抱えたまま確認に行くことにした。
「大丈夫……大丈夫だよ。何かあっても俺が守ってやるからね。」
両腕で抱きかかえたパウロとシモーネに頬擦りをして少し落ち着かせると、多少は警戒しながらもゆっくりとその場所へと近付いたのだった。
今は両手とも使えないものだから足で草を踏みつけ、少しずつかき分けながら進むと―――。
「――えっ!?」
そこにはぐったりと弱り切った“猫っぽい”生き物が転がっていた。
どうしたものかと思ったが、取りあえずは抱えていた二人を下へと降ろし、ソーッと胴体辺りを触ってみるが反応がなかった。
だが体が少し冷えているんじゃないかという感じではあったがそれは死体の冷たさではなく、手の平に伝わってきたその温もりと体内より響く鼓動から生きているのは確かだった。
咄嗟に「助けなければっ!」と思った俺はサッと手を伸ばして抱きかかえ、リリアたちが居る方へと走った。
「リリア~! アンドレア~! ピエトロ~! アダム~! イブ~!」
走りながら皆の名前を呼ぶとワイワイと楽しく遊んでいたらしき動きも会話もピタリと止め、俺の方に一斉に向いてきた。
「お兄ちゃん?」
「どうなされたのです?」
リリアとイブはなんだろうかとキョトンとした顔をしている。
「おや?」
アダムは首を伸ばしてこちらの様子を窺っているようだ。
「あぁ~……。今、もう少しで大物が獲れたのに――。」
声を掛けたことで俺が邪魔をしてしまっていたようでアンドレはしょんぼりと耳とヒゲを下げ、悔しそうな顔をしている。
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