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第8章 愛と哀しみ
2.可愛いヤキモチ
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あれから二日ほどが経ち、つい数日前までいた黄色エルフの街がある森の、フェルモと出会ったあの場所まで来た。
「ふぅ~。漸く、ってところか………。」
一度来た道を戻ってまた同じ道を辿り、少しばかり旅のやり直しをしたといった感じだったので特にこれといった新しい発見も無く皆つまらなそうだったが、再スタートを始めようと思っていた場所に無事に着けたことには御の字といったところか。
「さ~て! 途中止めにしていたこの場所に来るのは決めていたが、ここからどうしようか……。」
「取りあえず、川! 川に行きたい!!」
俺がどっちの方角に進もうか悩んでいると、元気よく挙手をしてアンドレアが意見を出してきた。
「川? 何かしたいことでもあるの、アンドレア。」
「おいらさ、そろそろまた魚が食べたいんだよ! 肉も良いけど……おいらたちゃ、やっぱり魚が無いと……なぁ?」
そう言って同意を求める様に兄弟猫のピエトロの肩に手を回し、ポンポンと肉球で叩いた。
「そ、そだね。」
アンドレアとは対照的に気の弱いピエトロは自分の意見を言うでなく、ハハハッと愛想笑いをしながら合わせるように返事をした。
その有り様がなんだか俺に似ていて、ピエトロのことが気になって仕方なかった。
ひとの意見に合わせるばかりしていると、後で自分が割を食うことだってあるというに……俺には何も言えない。
それを分かってはいても、どうしようもできないというピエトロの気持ちが痛い程よく分かるからだ。
ピエトロは誰よりも優しい――それ故なのだ。
似ているからと言って俺自身がそうであるなんて自分じゃ思ってはいないが、ピエトロに関して言えば優しい故に気が弱い。
怖がりな所もあるが、巣立ちの後もこうして心配して追いかけてきて常にアンドレアが一緒に居ようとするぐらいに兄弟猫にも愛されているので生きてもいけている。
でも、もしこれが一人だったらと思うと―――。
「狩りも下手だし……ピエトロは、自然界では生きていくのが難しい性格なんだろうな。」
思わずそう呟いてしまった。
「ん?」
俺のぼやきに自分が呼ばれたのかとピエトロがこちらに振り向いてきた。
「いや、なんでもないよ。」
俺の顔を見上げるピエトロの頭を撫でた。
「川! 川に行こうぜ~!」
ノリノリのアンドレアは行こう行こうと俺を誘い、ずっとはしゃいでいた。
「そうだな~。ここからそう離れた所でもないだろうし、行ってみるか。」
その言葉に「ヤッター!」と言って無邪気に喜ぶアンドレアに、俺はしょうがないなと少し顔が緩んだ。
一度止めていた精霊の手に自らの魔力を再び通し、近くにある川で検索をかけて再出発させた。
「どんな魚があるかな~?」
機嫌の良いアンドレアとは違い、俺に体をピトリとくっ付けてピエトロはさっきからモジモジと落ち着かない様子で体を揺すっている。
「どうしたの?」
「僕……ちょっと川が怖くて………。」
「大丈夫だよ。」
耳をペタンと伏せて肩を落とすピエトロの背中を、落ち着かせるようにポンポンとリズムよく叩いた。
「お兄ちゃ~ん! ワタチも~! ワタチもして~。」
そこへピエトロのことを羨ましそうに見つめたパウロが間に乱入してきた。
「はい、はい。」
体格こそ大人のアダムやイブより少し大きいものの、まだまだ子猫であるパウロが俺がピエトロに少し構ってばかりいたことでどうやらヤキモチを焼いているっぽかった。
私は特別だからと言わんばかりに俺の膝の上に乗り、パウロは俺の太もも辺りを枕にしてコロンとそのまま寝っ転がったのだった。
そして俺はパウロに求められる通りにピエトロと同じく背中をポンポンと叩くと、嬉しそうな顔をしてスヤスヤと眠りだした。
「まったく……パウロは甘えん坊さんだなぁ。」
その可愛らしい寝顔に思わずクスリと笑ってしまった。
「まだ子猫なんですから、それぐらいでちょうど良いんですよ。子猫の時代なんてあっという間なんですから……後から寂しくなっちゃわないようにゆっくりと堪能してくださいな。」
俺の何気ない呟きに、イブがニコニコとした顔でそう話しかけてきたのだった。
「おっ! そろそろじゃないか?」
ずっと窓から外を見ているアダムが窓に顔を向けたまま、皆に聞こえる声でそう告げた。
俺はアダムの横へと行き、同じ様に外を見る。
「へ~ぇ。広い川原があって、流れも穏やかで……。良い川じゃないか……。」
降りる位置と安全を確認すると、俺は精霊の手をスッと降下させて川原に停めた。
精霊の手のドアを開けると皆が一斉に降り、俺と共に外へと出ていく。
俺もそうなのだが、ずっと乗って移動していたから少々乗り物疲れを起こしていたのだろう。
座りっぱなしだった俺は両手を空へと伸ばし、ストレッチをして足とかいろんなスジを伸ばした。
「さすがにちょっと疲れたな……。急ぎの旅でもないんだからもう少しゆっくり進むべきだったか………。」
とはいいつつも、同じ道を辿っている間は皆が終始退屈そうにしていたので、休憩を少な目にして早く進ませたことに後悔はしていない。
楽しそうに川に飛び込んで泳ぐアンドレア、それを感嘆の声をあげながら見学するアダムとイブ、――を遠目で見つめるピエトロ、四人をそっちのけで川原に生えている草に寄って来る小さな虫を追いかけて一緒に遊ぶパウロとシモーネ………誰もが暫しの休息を楽しんでいる。
俺はその光景を見て、来て良かったなと微笑ましく眺めていたのだった。
「ふぅ~。漸く、ってところか………。」
一度来た道を戻ってまた同じ道を辿り、少しばかり旅のやり直しをしたといった感じだったので特にこれといった新しい発見も無く皆つまらなそうだったが、再スタートを始めようと思っていた場所に無事に着けたことには御の字といったところか。
「さ~て! 途中止めにしていたこの場所に来るのは決めていたが、ここからどうしようか……。」
「取りあえず、川! 川に行きたい!!」
俺がどっちの方角に進もうか悩んでいると、元気よく挙手をしてアンドレアが意見を出してきた。
「川? 何かしたいことでもあるの、アンドレア。」
「おいらさ、そろそろまた魚が食べたいんだよ! 肉も良いけど……おいらたちゃ、やっぱり魚が無いと……なぁ?」
そう言って同意を求める様に兄弟猫のピエトロの肩に手を回し、ポンポンと肉球で叩いた。
「そ、そだね。」
アンドレアとは対照的に気の弱いピエトロは自分の意見を言うでなく、ハハハッと愛想笑いをしながら合わせるように返事をした。
その有り様がなんだか俺に似ていて、ピエトロのことが気になって仕方なかった。
ひとの意見に合わせるばかりしていると、後で自分が割を食うことだってあるというに……俺には何も言えない。
それを分かってはいても、どうしようもできないというピエトロの気持ちが痛い程よく分かるからだ。
ピエトロは誰よりも優しい――それ故なのだ。
似ているからと言って俺自身がそうであるなんて自分じゃ思ってはいないが、ピエトロに関して言えば優しい故に気が弱い。
怖がりな所もあるが、巣立ちの後もこうして心配して追いかけてきて常にアンドレアが一緒に居ようとするぐらいに兄弟猫にも愛されているので生きてもいけている。
でも、もしこれが一人だったらと思うと―――。
「狩りも下手だし……ピエトロは、自然界では生きていくのが難しい性格なんだろうな。」
思わずそう呟いてしまった。
「ん?」
俺のぼやきに自分が呼ばれたのかとピエトロがこちらに振り向いてきた。
「いや、なんでもないよ。」
俺の顔を見上げるピエトロの頭を撫でた。
「川! 川に行こうぜ~!」
ノリノリのアンドレアは行こう行こうと俺を誘い、ずっとはしゃいでいた。
「そうだな~。ここからそう離れた所でもないだろうし、行ってみるか。」
その言葉に「ヤッター!」と言って無邪気に喜ぶアンドレアに、俺はしょうがないなと少し顔が緩んだ。
一度止めていた精霊の手に自らの魔力を再び通し、近くにある川で検索をかけて再出発させた。
「どんな魚があるかな~?」
機嫌の良いアンドレアとは違い、俺に体をピトリとくっ付けてピエトロはさっきからモジモジと落ち着かない様子で体を揺すっている。
「どうしたの?」
「僕……ちょっと川が怖くて………。」
「大丈夫だよ。」
耳をペタンと伏せて肩を落とすピエトロの背中を、落ち着かせるようにポンポンとリズムよく叩いた。
「お兄ちゃ~ん! ワタチも~! ワタチもして~。」
そこへピエトロのことを羨ましそうに見つめたパウロが間に乱入してきた。
「はい、はい。」
体格こそ大人のアダムやイブより少し大きいものの、まだまだ子猫であるパウロが俺がピエトロに少し構ってばかりいたことでどうやらヤキモチを焼いているっぽかった。
私は特別だからと言わんばかりに俺の膝の上に乗り、パウロは俺の太もも辺りを枕にしてコロンとそのまま寝っ転がったのだった。
そして俺はパウロに求められる通りにピエトロと同じく背中をポンポンと叩くと、嬉しそうな顔をしてスヤスヤと眠りだした。
「まったく……パウロは甘えん坊さんだなぁ。」
その可愛らしい寝顔に思わずクスリと笑ってしまった。
「まだ子猫なんですから、それぐらいでちょうど良いんですよ。子猫の時代なんてあっという間なんですから……後から寂しくなっちゃわないようにゆっくりと堪能してくださいな。」
俺の何気ない呟きに、イブがニコニコとした顔でそう話しかけてきたのだった。
「おっ! そろそろじゃないか?」
ずっと窓から外を見ているアダムが窓に顔を向けたまま、皆に聞こえる声でそう告げた。
俺はアダムの横へと行き、同じ様に外を見る。
「へ~ぇ。広い川原があって、流れも穏やかで……。良い川じゃないか……。」
降りる位置と安全を確認すると、俺は精霊の手をスッと降下させて川原に停めた。
精霊の手のドアを開けると皆が一斉に降り、俺と共に外へと出ていく。
俺もそうなのだが、ずっと乗って移動していたから少々乗り物疲れを起こしていたのだろう。
座りっぱなしだった俺は両手を空へと伸ばし、ストレッチをして足とかいろんなスジを伸ばした。
「さすがにちょっと疲れたな……。急ぎの旅でもないんだからもう少しゆっくり進むべきだったか………。」
とはいいつつも、同じ道を辿っている間は皆が終始退屈そうにしていたので、休憩を少な目にして早く進ませたことに後悔はしていない。
楽しそうに川に飛び込んで泳ぐアンドレア、それを感嘆の声をあげながら見学するアダムとイブ、――を遠目で見つめるピエトロ、四人をそっちのけで川原に生えている草に寄って来る小さな虫を追いかけて一緒に遊ぶパウロとシモーネ………誰もが暫しの休息を楽しんでいる。
俺はその光景を見て、来て良かったなと微笑ましく眺めていたのだった。
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