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第8章 愛と哀しみ
5.あの子の正体は……
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ピエトロが率先して動きだすと場の空気も変わっていき、オロオロとしていたアダムや皆も動き出した。
この“猫っぽい”生き物に触った時、俺からしてみれば少し冷えてるかもしれないなという程度にしか感じられなかったが、ネコ種としてはかなり体が冷えていたらしくこのままだと危ないからとアンドレアに焚き火を用意するようにと頼まれたのだった。
「精霊の手に乗せるんじゃダメなの? あの中は暖かいし……。」
「確かにあの中は人工精霊の力によって常に快適で暖かいですが………足りません。やはり火の温もりに敵うものはなく、体が冷えた時にはそれが一番最適でしょう。」
――だそうだ。
皆は協力し合って焚き木となる枯れ枝を集め、俺は言われた通りにそれで焚き火をこしらえた。
焚き火の温もりにウトウトと舟を漕ぎ出したシモーネをリリアは膝の上に抱いて座り、イブも同じ様に膝の上に乗って寄り添うようにして香箱座りした。
そして俺の膝の上には“猫っぽい”生き物と、それを間に挟んでピエトロとアンドレアが鎮座した。
残ったパウロとアダムはというと……俺の膝の上にもリリアの膝の上にも載れなくなったので、俺の横でちょこんと揃えた両手とお尻だけを地面につけて所謂『三つ指座り』をしていた。
「ワタチの場所が……。」
「まぁまぁ、良いじゃないか。たまには、さ。」
パウロは自分だけの特等席が奪われたと少し拗ねていたが、弱っていた“猫っぽい”生き物を心配してずっと抱いていた俺が焚き火の前に座るとすぐにピエトロがそこへ飛んできたのだった。
そのピエトロを追う様にして兄弟猫であるアンドレアが飛んできて、すぐに場所は埋まってしまったというわけである。
俺の中では猫たちに優劣はなく、しいて言うならば弱っている者が優先といったところだろうか……。
だけども小学生の時に同じ家に追加で同居猫を迎える場合、先住猫を優先してって聞いたことあるしその辺を考えて、弱っているこの子が少しでも元気になった後からになるが俺と一番最初に出会ったパウロを特別可愛がらなければと思ったのだった。
「お兄ちゃんの膝の上はワタチのものなんだからねっ!」
俺に忘れるなよと言わんばかりにジッと強い目線で見つめ、パウロは言い放った。
まさかこうなるとはと思う程に予定にもなかった旅仲間であるネコが増えていくにつれ、パウロは少しずつ甘えん坊度が増していっている。
「ごめんな、パウロ。今だけ。今だけだから。後でちゃんとパウロの席を作るから。」
俺が頭を撫でると「しょうがないな~」といった雰囲気で、目を細めて脚にスリスリしてきた。
「そういえば……イブ。さっきこの子の魔力が強そうって言っていたけど、それはこの被毛の色を見て言ったの?」
パウロの事も含めてやっと落ち着いてきたところで、俺はふと先程のイブの言葉を思い出して疑問に思ったことを聞いてみた。
「そうですよ~。このちょっと黒ずんだような毛色は魔力が強い証でしょう。魔力が強い者は幼い時には自分でコントロールが利かずに気を失って倒れてしまう事もチラホラ……。傍に母親が居ればそういうことは滅多とありませんがねぇ。この子はどう見ても独りです。強くなる素質がある者ほど、まだ自力ではどうにも対処できない幼い内により多くの力を求めた大きな生き物に食べられてしまうものですから……。」
「弱肉強食ってやつか―――。」
「えぇ。より強い魔力を持つ者を食べれば、それだけ食べた者も大きく成長できますから狙われやすいのです。」
確かに改めてこの子の毛色を見れば、少し濃い芥子色って感じのちょっとくすんだ色をしているのでそれだけ強い魔力を持っているということだろう。
何があってあんな所に倒れていたのかは分からないが、弱った体が狙われない様にと警戒して隠れる為に草むらの中にいたのかもしれない。
そうこうして話し込んでいると、膝の上でモゾモゾとあの子が動き出した。
「おっ……! 気が付いたかい?」
“猫っぽい”生き物は意識を取り戻したのかバッと目を開け、自分自身に起こった異変を感じるとゴムボールでも跳ねたかの様にジャンプした。
そして俺の目をキッと睨みつけて大きく見開いた目を離そうとせず、ヴーヴーと唸ってくるのだった。
「あっ……吃驚したよね? ごめんね。君が倒れていたから助けようと―――。」
その子の小さな耳は後ろへペタリと引き下げられ、体の大きさが倍に見える程毛が逆立っていた。
しかしこうやって自分で立ち上がった姿を見てみると「アレッ?」と気付くことがあった。
「君……後ろの足が―――。」
ついそこで俺が気になった部分をよく見てみようと少し動いて近付こうとすると、尻尾をクネクネとさせて蛇のように動かして後退りした。
もしかして後ろの足だけ猛獣にでも食べられたのではと危惧したがどうやらそうではないらしい。
一応の確認として手は――あるが、飾りかと思えるぐらいにマンチカンよりもやや短い。
パッと見は猫であるが、蛇の様な……ちょっとモグラの様な……そんな感じの見た目である。
「まるでこれはツチノコならぬ―――“ツチネコ”だな。あの有名な。」
目の前で警戒心剥き出しで唸っているこの奇妙な“猫っぽい”生き物とは逆に、俺はその姿がなんだか可愛らしくて可愛らしくて、プッと吹き出して笑ってしまったのだった。
この“猫っぽい”生き物に触った時、俺からしてみれば少し冷えてるかもしれないなという程度にしか感じられなかったが、ネコ種としてはかなり体が冷えていたらしくこのままだと危ないからとアンドレアに焚き火を用意するようにと頼まれたのだった。
「精霊の手に乗せるんじゃダメなの? あの中は暖かいし……。」
「確かにあの中は人工精霊の力によって常に快適で暖かいですが………足りません。やはり火の温もりに敵うものはなく、体が冷えた時にはそれが一番最適でしょう。」
――だそうだ。
皆は協力し合って焚き木となる枯れ枝を集め、俺は言われた通りにそれで焚き火をこしらえた。
焚き火の温もりにウトウトと舟を漕ぎ出したシモーネをリリアは膝の上に抱いて座り、イブも同じ様に膝の上に乗って寄り添うようにして香箱座りした。
そして俺の膝の上には“猫っぽい”生き物と、それを間に挟んでピエトロとアンドレアが鎮座した。
残ったパウロとアダムはというと……俺の膝の上にもリリアの膝の上にも載れなくなったので、俺の横でちょこんと揃えた両手とお尻だけを地面につけて所謂『三つ指座り』をしていた。
「ワタチの場所が……。」
「まぁまぁ、良いじゃないか。たまには、さ。」
パウロは自分だけの特等席が奪われたと少し拗ねていたが、弱っていた“猫っぽい”生き物を心配してずっと抱いていた俺が焚き火の前に座るとすぐにピエトロがそこへ飛んできたのだった。
そのピエトロを追う様にして兄弟猫であるアンドレアが飛んできて、すぐに場所は埋まってしまったというわけである。
俺の中では猫たちに優劣はなく、しいて言うならば弱っている者が優先といったところだろうか……。
だけども小学生の時に同じ家に追加で同居猫を迎える場合、先住猫を優先してって聞いたことあるしその辺を考えて、弱っているこの子が少しでも元気になった後からになるが俺と一番最初に出会ったパウロを特別可愛がらなければと思ったのだった。
「お兄ちゃんの膝の上はワタチのものなんだからねっ!」
俺に忘れるなよと言わんばかりにジッと強い目線で見つめ、パウロは言い放った。
まさかこうなるとはと思う程に予定にもなかった旅仲間であるネコが増えていくにつれ、パウロは少しずつ甘えん坊度が増していっている。
「ごめんな、パウロ。今だけ。今だけだから。後でちゃんとパウロの席を作るから。」
俺が頭を撫でると「しょうがないな~」といった雰囲気で、目を細めて脚にスリスリしてきた。
「そういえば……イブ。さっきこの子の魔力が強そうって言っていたけど、それはこの被毛の色を見て言ったの?」
パウロの事も含めてやっと落ち着いてきたところで、俺はふと先程のイブの言葉を思い出して疑問に思ったことを聞いてみた。
「そうですよ~。このちょっと黒ずんだような毛色は魔力が強い証でしょう。魔力が強い者は幼い時には自分でコントロールが利かずに気を失って倒れてしまう事もチラホラ……。傍に母親が居ればそういうことは滅多とありませんがねぇ。この子はどう見ても独りです。強くなる素質がある者ほど、まだ自力ではどうにも対処できない幼い内により多くの力を求めた大きな生き物に食べられてしまうものですから……。」
「弱肉強食ってやつか―――。」
「えぇ。より強い魔力を持つ者を食べれば、それだけ食べた者も大きく成長できますから狙われやすいのです。」
確かに改めてこの子の毛色を見れば、少し濃い芥子色って感じのちょっとくすんだ色をしているのでそれだけ強い魔力を持っているということだろう。
何があってあんな所に倒れていたのかは分からないが、弱った体が狙われない様にと警戒して隠れる為に草むらの中にいたのかもしれない。
そうこうして話し込んでいると、膝の上でモゾモゾとあの子が動き出した。
「おっ……! 気が付いたかい?」
“猫っぽい”生き物は意識を取り戻したのかバッと目を開け、自分自身に起こった異変を感じるとゴムボールでも跳ねたかの様にジャンプした。
そして俺の目をキッと睨みつけて大きく見開いた目を離そうとせず、ヴーヴーと唸ってくるのだった。
「あっ……吃驚したよね? ごめんね。君が倒れていたから助けようと―――。」
その子の小さな耳は後ろへペタリと引き下げられ、体の大きさが倍に見える程毛が逆立っていた。
しかしこうやって自分で立ち上がった姿を見てみると「アレッ?」と気付くことがあった。
「君……後ろの足が―――。」
ついそこで俺が気になった部分をよく見てみようと少し動いて近付こうとすると、尻尾をクネクネとさせて蛇のように動かして後退りした。
もしかして後ろの足だけ猛獣にでも食べられたのではと危惧したがどうやらそうではないらしい。
一応の確認として手は――あるが、飾りかと思えるぐらいにマンチカンよりもやや短い。
パッと見は猫であるが、蛇の様な……ちょっとモグラの様な……そんな感じの見た目である。
「まるでこれはツチノコならぬ―――“ツチネコ”だな。あの有名な。」
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