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第一部最終章 いつの日か、君に
エッチなことはいけません
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ワイワイガヤガヤ。
「お前っさー」
隣を歩くリンに向けて、ヒョウはジト目を向けた。
「ふふっ。とてもお似合いですよ? 兄様」
向けられたリンは、くすぐったそうに笑った。
「本気で言ってんだろうなー」
ヒョウがリンにあてがったのは、リンの服と同色の、白の猫耳と尻尾であった。自分で言うことじゃないが、中々にいいチョイスをしたと、ヒョウは思っていた。
そして、リンがヒョウにあてがったのは、たぬきのヘアバンドと尻尾であった。タヌキには悪いが、猫や犬に比べると、どうにも間抜けに思えてしまう。
「嘘じゃないですよ。というより兄様なら、何をお付けしてもお似合いになると思いますよ?」
「誉められているのかいないのか」
「誉めています。という言い方は、あたしの立場ではやや失礼かもしれませんが」
「お前の立場だったら何を言っても構わないさ」
「え……」
「そりゃそうだろ? 妹なんだからよ」
「そう――ですよね。そうです」
「……」
「兄様」
「ん~?」
「リンはやはり、子供っぽいのでしょうか?」
確かに、リンの今日の服装は気合が入っている。
ただの腰紐ワンピースなのだが、生地が上等だからか、非常に上品に見える。
それに伴って、リンが大人びて見えるというのも間違いではないが、それにしたって、五歳六歳上乗せされるかって言ったら、そんなはずもない。
まあせいぜい、十二十三十四ぐらいか。大まけにまけて。
「そりゃそうだろ。お前は子供なんだから」
リンがシュンとして、目を伏せた。
まーたこいつは、すぐスネる。
ヒョウは思った。
「子供っぽいのが嫌なのか?」
ヒョウが尋ねた。
「そうですね。リンも早く大人になりたいです」
「ふむ」
指であごを擦る。
「兄様?」
「そう言えば、手っ取り早く大人になる方法があると聞いたことがあるんだが――」
「え」
リンの単音が聞こえて、目を向ける。
リンは両手で口元を隠し、ヒョウのことを見上げていた。
違和感を感じ、ヒョウは口を開いた。
「何だよ」
「あ――いえその、精神的にではなく、ちゃんとした意味で大人になりたいです」
「お前っさー。そんな即現実的なこと言うなよなー」
「も、申し訳ありません。答えがわかってしまったので」
「え、マジで?」
「あ、申し訳ありません。答えがわかったのではなく、精神論であることがわかりました」
「あーそういうことね」
まあそりゃそうっちゃ、そりゃそうだ。
「まあいいか。じゃあこの話は――」
「え!?」
「え? 何だよ」
「あの……お答えをお聞きするわけには、いかないのでしょうか……? リンはとても気になります」
シュンとしながら、リンが言った。
なんて我儘な奴だとヒョウは思った。
「今更言ってもなー」
「大丈夫です。考えてくれたお気持ちだけでも嬉しいですから。だから、例えどのようなお答えであっても、リンは必ず喜びます。お約束します」
無垢な目で見上げながら、リンが言う。
ほんとかよとヒョウは思った。
まあいずれにせよ、どこかには行かなければならないのだ。
違う場所にしようとも思ったが、リンがそこまで言うなら、ここでもいいか。
ヒョウが指さす、その先は――
「朝飯まだだろ? 飯行こうぜ」
カフェだった。
コーヒー=大人という、さもしい論理だった。
簡単に言えばネタで、そんなためてためて言うような内容じゃない。
下らないだろう。
だから言いたくなかったのだ。
「ふふ。あはは。あはは」
リンの笑い声が聞こえて、ヒョウは目を向けた。
リンは珍しく、本当に珍しく、お腹を抱えて笑っていた。
こんな風にも笑えるんだなと思って、ヒョウはしばし、リンを見つめた。
「あ、申し訳ございません、兄様」
リンが五指を合わせて、笑った。
そんなにおかしかったのかと思った。
腹が立ったわけではない。
ただ、微妙に噛み合っていないなと思った。
目を上向けて、ちょっと考えてみる。
そして。
『あ』と思った。
「はい。リンも行きたいです。お心遣い、とても嬉しく思っています、兄様」
目を向けた先で、リンが笑っていた。
頭をガリガリとかいて、目を背ける。
問いただそうとは思わなかった。
(ったく、無駄にマセてるんだから、こいつはよー)
カランカラン。
ふて腐れながらヒョウは、カフェの扉を開けた。
「お前っさー」
隣を歩くリンに向けて、ヒョウはジト目を向けた。
「ふふっ。とてもお似合いですよ? 兄様」
向けられたリンは、くすぐったそうに笑った。
「本気で言ってんだろうなー」
ヒョウがリンにあてがったのは、リンの服と同色の、白の猫耳と尻尾であった。自分で言うことじゃないが、中々にいいチョイスをしたと、ヒョウは思っていた。
そして、リンがヒョウにあてがったのは、たぬきのヘアバンドと尻尾であった。タヌキには悪いが、猫や犬に比べると、どうにも間抜けに思えてしまう。
「嘘じゃないですよ。というより兄様なら、何をお付けしてもお似合いになると思いますよ?」
「誉められているのかいないのか」
「誉めています。という言い方は、あたしの立場ではやや失礼かもしれませんが」
「お前の立場だったら何を言っても構わないさ」
「え……」
「そりゃそうだろ? 妹なんだからよ」
「そう――ですよね。そうです」
「……」
「兄様」
「ん~?」
「リンはやはり、子供っぽいのでしょうか?」
確かに、リンの今日の服装は気合が入っている。
ただの腰紐ワンピースなのだが、生地が上等だからか、非常に上品に見える。
それに伴って、リンが大人びて見えるというのも間違いではないが、それにしたって、五歳六歳上乗せされるかって言ったら、そんなはずもない。
まあせいぜい、十二十三十四ぐらいか。大まけにまけて。
「そりゃそうだろ。お前は子供なんだから」
リンがシュンとして、目を伏せた。
まーたこいつは、すぐスネる。
ヒョウは思った。
「子供っぽいのが嫌なのか?」
ヒョウが尋ねた。
「そうですね。リンも早く大人になりたいです」
「ふむ」
指であごを擦る。
「兄様?」
「そう言えば、手っ取り早く大人になる方法があると聞いたことがあるんだが――」
「え」
リンの単音が聞こえて、目を向ける。
リンは両手で口元を隠し、ヒョウのことを見上げていた。
違和感を感じ、ヒョウは口を開いた。
「何だよ」
「あ――いえその、精神的にではなく、ちゃんとした意味で大人になりたいです」
「お前っさー。そんな即現実的なこと言うなよなー」
「も、申し訳ありません。答えがわかってしまったので」
「え、マジで?」
「あ、申し訳ありません。答えがわかったのではなく、精神論であることがわかりました」
「あーそういうことね」
まあそりゃそうっちゃ、そりゃそうだ。
「まあいいか。じゃあこの話は――」
「え!?」
「え? 何だよ」
「あの……お答えをお聞きするわけには、いかないのでしょうか……? リンはとても気になります」
シュンとしながら、リンが言った。
なんて我儘な奴だとヒョウは思った。
「今更言ってもなー」
「大丈夫です。考えてくれたお気持ちだけでも嬉しいですから。だから、例えどのようなお答えであっても、リンは必ず喜びます。お約束します」
無垢な目で見上げながら、リンが言う。
ほんとかよとヒョウは思った。
まあいずれにせよ、どこかには行かなければならないのだ。
違う場所にしようとも思ったが、リンがそこまで言うなら、ここでもいいか。
ヒョウが指さす、その先は――
「朝飯まだだろ? 飯行こうぜ」
カフェだった。
コーヒー=大人という、さもしい論理だった。
簡単に言えばネタで、そんなためてためて言うような内容じゃない。
下らないだろう。
だから言いたくなかったのだ。
「ふふ。あはは。あはは」
リンの笑い声が聞こえて、ヒョウは目を向けた。
リンは珍しく、本当に珍しく、お腹を抱えて笑っていた。
こんな風にも笑えるんだなと思って、ヒョウはしばし、リンを見つめた。
「あ、申し訳ございません、兄様」
リンが五指を合わせて、笑った。
そんなにおかしかったのかと思った。
腹が立ったわけではない。
ただ、微妙に噛み合っていないなと思った。
目を上向けて、ちょっと考えてみる。
そして。
『あ』と思った。
「はい。リンも行きたいです。お心遣い、とても嬉しく思っています、兄様」
目を向けた先で、リンが笑っていた。
頭をガリガリとかいて、目を背ける。
問いただそうとは思わなかった。
(ったく、無駄にマセてるんだから、こいつはよー)
カランカラン。
ふて腐れながらヒョウは、カフェの扉を開けた。
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