36 / 49
第2部 再会・自立編
3.初冬の雨の夜に戻って来た!
しおりを挟む
年末が近づいて来た。明日からは12月、もう師走だ。クリスマスやら年末セールやらで、世の中は急にあわただしくなってくる。11月の終わりはずっと雨が降っている。秋から冬に移る冷たい雨、山茶花梅雨だ。
駅からアパートが近いのでなんとかしのげているが、会社から地下鉄の駅の入口まではかなり離れているので濡れてしまった。ズボンと靴がずぶ濡れだ。
アパートに着くとすぐに服と靴を脱いで乾かす。靴に新聞紙を丸めて入れておく。今日は帰りが遅くなった。もう9時少し前になっている。そういえば、家出して来た未希と出会ったのも丁度4年前のこんないやな雨の晩だった。
ドアをノックする音がする。聞き違いかな? やはり誰かがドアをノックしている。玄関へ行って「何かようですか? どなたですか?」と言うが、返事がない。
部屋に戻りかけようとするとまたノックの音がする。すぐにドアを開けた。雨に濡れた若い女性が立っていた。すぐに誰だか分かった。
「未希か?」
薄明りの中で頷いた。1年8か月ぶりの未希だった。
「入ってもいいですか?」
「もちろんだ。どうした今頃、何かあったのか?」
未希はうなだれて入ってきた。手には小さなバッグと折り畳み傘を持っている。ソファーに座らせると憔悴しているのがすぐに分かった。
雨に濡れて寒そうなのですぐにお湯を沸かす。コーヒーを入れてカップを手に持たせる。カップの手が震えている。別れた時よりも随分女らしくなっている。
「どうしたんだ、今頃、急に訪ねてきて、何かあったのか? 聞かせてくれるか?・・・・言わないと分からない。今でも俺は未希の保護者だから」
立て続けに話しかける。
「ごめんなさい。ここにおいてください」
未希はただ泣くばかりだった。理由を言わない。
「まあ、いいか、夫婦喧嘩でもした娘が実家に帰ってきたと思えば。寒そうだから風呂を準備する。入って温まりなさい」
俺はバスタブにお湯を入れた。未希はもう泣き止んでいたが、うなだれている。バスタブがお湯で満杯になるまでの間、どうしてやったものかと考えている。でも理由が分からないと対応のしようがない。
風呂の準備ができたので、未希に入浴を促す。未希は俺の目の前で服を脱ぎ始めた。とっさのことなので唖然として見ていた。
忘れていた未希の裸がそこにあった。腕と脚に青あざがある。あの時と同じだ。未希は無言でそれを見せたかったかもしれない。そのまま浴室に入って行った。
そうだ! 着替えとバスタオル。あの時と同じで、未希の着るものなんてこの男所帯にあるはずもない。この前と同じようにトレーナーの上下とシャツとパンツを出して持って行く。
「未希、着替えをここに置いておくから。いつかと同じトレーナーと下着だ。これしかない」
しばらくして、未希はトレーナー姿で俺が座っているソファーのところへ来た。
「相変わらずダブダブだな」
そう言うと、未希は初めて少し笑った。寂しそうな笑顔だった。
「あの時もこれを貸してくれましたね。ダブダブで大きかったけど暖かかった」
「どうした? 身体に青あざなんか作って」
「彼に暴力を振われました」
「いつもか?」
「最近、ひどくなりました」
「それで家出して来たのか?」
未希は頷いた。未希の左手の薬指に指輪の痕が残っていた。これからどうしてやったものかと考えていると、未希が抱きついて来た。
「抱いて下さい。好きなようにして下さい。あの時と同じように。そして私をここにおいてください」
抱きついてきた未希を俺は力いっぱい抱き締めた。未希の身体はあれから少しも変わっていない。未希の匂いがする。懐かしい未希の匂いがする。
このまま俺のものにしたいと思ったが、思い留まった。未希から身体を離す。
「未希、それはできない。未希は今、結婚している。俺が今、未希を抱けば、未希は不倫をしたことになる。未希にそういうことをさせたくないし、俺もしたくない」
「あの時は私を思い通りにしたのに」
「あの時、未希は、見ただけで結婚していないのが分かったし、18歳だと言った。確かに俺は未希に人には言えないようなひどいことをした。今はそれを悔やんでいる。だからなおさらできないんだ」
「分かった。おじさんは私を大事にしてくれた。今も大事にしてくれる。ありがとう」
「今日はここに泊めてあげる。俺のベッドで寝るといい、俺はこのソファーで寝るから。明日は金曜日だが、俺は会社を休む。朝からゆっくり話を聞こう。今日はこれで休んだ方が良い」
俺も突然のことで気が動転していた。しばらく考える時間が欲しい。未希は奥の部屋に行った。しばらくしてから覗くともう眠っていた。俺は風呂に入ってからソファーで寝た。
目が冴えてほとんど眠れなかった。未希を抱き締めた感覚が腕やら胸から抜けなかった。
未希がほしいと思った。未希を抱きたいと思った。あそこも固くなって、未希を抱けるほどに甦っていることに気づいた。嬉しかった。
絶対に未希を取り戻して、今度こそ俺のものにする。どんなことをしても。そう決心した。
駅からアパートが近いのでなんとかしのげているが、会社から地下鉄の駅の入口まではかなり離れているので濡れてしまった。ズボンと靴がずぶ濡れだ。
アパートに着くとすぐに服と靴を脱いで乾かす。靴に新聞紙を丸めて入れておく。今日は帰りが遅くなった。もう9時少し前になっている。そういえば、家出して来た未希と出会ったのも丁度4年前のこんないやな雨の晩だった。
ドアをノックする音がする。聞き違いかな? やはり誰かがドアをノックしている。玄関へ行って「何かようですか? どなたですか?」と言うが、返事がない。
部屋に戻りかけようとするとまたノックの音がする。すぐにドアを開けた。雨に濡れた若い女性が立っていた。すぐに誰だか分かった。
「未希か?」
薄明りの中で頷いた。1年8か月ぶりの未希だった。
「入ってもいいですか?」
「もちろんだ。どうした今頃、何かあったのか?」
未希はうなだれて入ってきた。手には小さなバッグと折り畳み傘を持っている。ソファーに座らせると憔悴しているのがすぐに分かった。
雨に濡れて寒そうなのですぐにお湯を沸かす。コーヒーを入れてカップを手に持たせる。カップの手が震えている。別れた時よりも随分女らしくなっている。
「どうしたんだ、今頃、急に訪ねてきて、何かあったのか? 聞かせてくれるか?・・・・言わないと分からない。今でも俺は未希の保護者だから」
立て続けに話しかける。
「ごめんなさい。ここにおいてください」
未希はただ泣くばかりだった。理由を言わない。
「まあ、いいか、夫婦喧嘩でもした娘が実家に帰ってきたと思えば。寒そうだから風呂を準備する。入って温まりなさい」
俺はバスタブにお湯を入れた。未希はもう泣き止んでいたが、うなだれている。バスタブがお湯で満杯になるまでの間、どうしてやったものかと考えている。でも理由が分からないと対応のしようがない。
風呂の準備ができたので、未希に入浴を促す。未希は俺の目の前で服を脱ぎ始めた。とっさのことなので唖然として見ていた。
忘れていた未希の裸がそこにあった。腕と脚に青あざがある。あの時と同じだ。未希は無言でそれを見せたかったかもしれない。そのまま浴室に入って行った。
そうだ! 着替えとバスタオル。あの時と同じで、未希の着るものなんてこの男所帯にあるはずもない。この前と同じようにトレーナーの上下とシャツとパンツを出して持って行く。
「未希、着替えをここに置いておくから。いつかと同じトレーナーと下着だ。これしかない」
しばらくして、未希はトレーナー姿で俺が座っているソファーのところへ来た。
「相変わらずダブダブだな」
そう言うと、未希は初めて少し笑った。寂しそうな笑顔だった。
「あの時もこれを貸してくれましたね。ダブダブで大きかったけど暖かかった」
「どうした? 身体に青あざなんか作って」
「彼に暴力を振われました」
「いつもか?」
「最近、ひどくなりました」
「それで家出して来たのか?」
未希は頷いた。未希の左手の薬指に指輪の痕が残っていた。これからどうしてやったものかと考えていると、未希が抱きついて来た。
「抱いて下さい。好きなようにして下さい。あの時と同じように。そして私をここにおいてください」
抱きついてきた未希を俺は力いっぱい抱き締めた。未希の身体はあれから少しも変わっていない。未希の匂いがする。懐かしい未希の匂いがする。
このまま俺のものにしたいと思ったが、思い留まった。未希から身体を離す。
「未希、それはできない。未希は今、結婚している。俺が今、未希を抱けば、未希は不倫をしたことになる。未希にそういうことをさせたくないし、俺もしたくない」
「あの時は私を思い通りにしたのに」
「あの時、未希は、見ただけで結婚していないのが分かったし、18歳だと言った。確かに俺は未希に人には言えないようなひどいことをした。今はそれを悔やんでいる。だからなおさらできないんだ」
「分かった。おじさんは私を大事にしてくれた。今も大事にしてくれる。ありがとう」
「今日はここに泊めてあげる。俺のベッドで寝るといい、俺はこのソファーで寝るから。明日は金曜日だが、俺は会社を休む。朝からゆっくり話を聞こう。今日はこれで休んだ方が良い」
俺も突然のことで気が動転していた。しばらく考える時間が欲しい。未希は奥の部屋に行った。しばらくしてから覗くともう眠っていた。俺は風呂に入ってからソファーで寝た。
目が冴えてほとんど眠れなかった。未希を抱き締めた感覚が腕やら胸から抜けなかった。
未希がほしいと思った。未希を抱きたいと思った。あそこも固くなって、未希を抱けるほどに甦っていることに気づいた。嬉しかった。
絶対に未希を取り戻して、今度こそ俺のものにする。どんなことをしても。そう決心した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる