突然、お隣さんと暮らすことになりました~実は推しの配信者だったなんて!?~

ミズメ

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第三章 めざすは運動会!

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「……ひなちゃん、具合はどう?」
 ぽやぽやとした気持ちで微睡んでいると、枕元から柔らかな声がした。
「お母さん……?」
 わたしは思わずそう聞いてしまう。
「ごめんね、ヨウちゃんじゃないのよ。熱は……少し下がったかな? 頭は痛くない?」
「あ……はい、大丈夫です、アキさん」
 ようやく意識がはっきりしてきて、今わたしに声をかけているのがお母さんではないことに気がついた。
 額に手を載せられ、それがじんわり冷たくて気持ちいい。
 お母さんの手も、どこかひんやりしていた。
 反対にお父さんの手はいつも熱くて、手を繋ぐと汗でビショビショになったっけ。
「何か食べられそう? お粥かうどんか……あとはプリンもあるわよ」
「あ……プリン」
「プリンね。わかった、取ってくるわね」
 お母さんも、わたしが熱を出したらいつもプリンを買ってくれた。
 どんなに熱でキツくても、プリンならつるりと食べることが出来たから。
 わたしはゆっくりと身体を起こす。
 窓の外はもううっすらと薄紫色だ。
 もう夜が近いんだなぁ。
 学校には行きたくないとは思っていたけど、まさか本当に休むことになるなんて思わなかった。
「……返事、出来なかったな」
 蒼太くんが朝から声をかけてくれたとき。
 わたしは起きていたのに返事が出来なかった。
 声を出すのがこわくて。
「はい、お待たせ。紫音が買ってきてくれたのよ。あとはプリントは蒼太が持ってきてくれたから安心してね」
「あ、はい、ありがとうございます……!」
 紫音くんと蒼太くんが……!
 感謝の気持ちでいっぱいになる。
「あと、これ。ひなちゃんのお友だちからのお手紙だって」
「てがみ……ですか」
「ええ。かわいいピンクの便箋を蒼太から預かっているわ。はい、どうぞ」
 わたしはゴクリと唾を飲む。
 あのときの便箋もピンク色だったから、またこの手紙の中身があんな内容だったらと思うとこわい。
 でも、アキさんから手紙を受け取らないのも不自然だよね……
 わたしはまた心臓が飛び出しそうになりながら、おそるおそるその手紙を手に取った。
「じゃ、私はあっちに戻るね。何かあったら呼んで」
「ありがとうございます」
 病院に連れて行ってくれたり、今日一日お世話になりっぱなしだ。
 ただでさえずっとお世話になっているのに。
 一度は見る気になれなくて、手紙をそっとヘッドボードに置く。
 まずはプリンを食べてから……でもいいよね。
 「……」
 う、やっぱり気になる……。
 わたしは横目でちらりと見る。
 蒼太くんが直接預かったものなら、変なことは書いていないかもしれない。
 靴箱に入っていたものと同じ便せんなのは、偶然なのかな。
 プリンを食べ終わったわたしは、さっきの手紙にまた手を伸ばした。
 ピンクをベースに、リボンやハートが散りばめられていてとってもかわいい。
「あっ……結愛ちゃん……!」
 裏返してみると、そこにはしっかり差出人の名前が記されていた。
 丸っぽくくるんとしたかわいい字。
 グループワークのときに目にしていたものと同じだ。
「……結愛ちゃんは、ちがうよね」
 ドキドキしながら封筒を開ける。
 またあんな言葉があったらどうしよう。
 ふう、と何度か深呼吸をして、わたしは手紙を読んだ。
《ひなちゃん、カゼは大丈夫?》
《この前は、ぐあいがわるいのに気がつかずに怒ってかえってごめんなさい》
《げんきになったら、またいっしょにかえろうね》
「……っ、あ、結愛ちゃん……」
 並べられてある言葉は、全部わたしを心配してくれるものだった。
 一昨日、通学路で別れるとき、わたしの態度が悪くて怒らせてしまったと思っていたのに、そのことについてもなぜか結愛ちゃんの方が謝っている。
 わたしが考え事をしていたせいで、結愛ちゃんの話をちゃんと聞けなかったのに。
 今度あったら、わたしも謝ろう。
「あれ、二枚目もある……」
 便せんは二枚つづりで、もう一枚にもなにか書いてある。
《ひなちゃんがやすんでるあいだ、蒼太くんにあいつらが近付かないようみはっとくからまかせて!》
 その文章とともに、怒っている顔のネコちゃんのイラストが書かれていた。
「ふふ……かわいいネコちゃんだあ」
 あいつらって、誰だろう……?
 そう思ったけど、結愛ちゃんの気合いが十分なのはよく伝わってきた。
 不思議だ。
 学校に行きたくないと思っていたのに、結愛ちゃんが待っていてくれると思うと心強い気持ちになってきた。
「これは蒼太くんが持ってきてくれたプリント……。蒼太くんにもあとでお礼を言わなきゃ」
 家で話すくらいなら、きっと邪魔にはならないだろう。
 そんなことを考えてしまう。
「あれ? これって――」
 プリントを整理していると、裏紙のようなものがはらりと落ちた。
 なんだろう。誰かの字……?
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