2 / 10
02
しおりを挟む「あの薬、薄毛になるんだね……?」
ライラの回答を聞いたフォンは、どこか恐る恐ると言った様子で確認をしてくる。
なぜ彼がたじろいでいるのかは不明だが、ライラはこれまでの試薬や薬品の成分解析の結果を元に明瞭に述べた。
「はい。そのようです」
残念ながら、実験の結果は"薄毛の可能性が0.1%ある"というものだった。
実験を手伝ってくれたモフモフの体毛が自慢の小さな生物<モフねずみ>の中に、薄毛の傾向が出たものがいたのだ。
若干お腹の辺りの毛が寂しくなってしまった被験体No.999の<モフねずみ>――通称『モフマール』は現在療養中である。
そのモフマールのことを思い出しながら、ライラは悲しげに眉を下げた。
「学生の頃に発明したものですが、実験を元に成分を見直していたら、副作用が気になりまして。今のままだと、将来、利用者が薄毛になるかもしれないんです。よほど高頻度で利用しなければ問題はないかもしれないのですけれど」
「……え」
「ですから、その副作用を出来るだけ減らせるようにと思いまして。製品化するにあたり、0.1%でも身体に害があるのであれば、それは成功とは言えません。同時に毛生え薬も発明中です」
「そ、そうか……是非頑張って……」
「はい! 頑張ります!」
なぜだか頭皮を押さえるフォンの姿を不思議に思いつつ、ライラは新薬の調合に勤しむことにした。
(フォンも応援してくれています。頑張って成果を出さなくては! もしかしたら、フォンも使ってみたかったのかもしれませんね)
今のところ、ライラが作成した<髪の色を変える魔法薬>は試薬品の状態だ。
リカードの依頼で毎日作って渡しているものの、彼が何に使っているのかは分からない。
それに、たまに瓶の数が合わないことがあり、こちらについては犯人は大体目星がついている。
(そうです。リカードにもお伝えしなくては。もしかしたら、彼も薄毛に……?)
「どうしよう」「僕も発明しなきゃ」とフォンがぶつぶつと何やら呟いている傍らで、ライラはそんなことを考えていた。
「遅くなった! ふたりともおつかれー! って、今日はやけに静かだな……?」
遅れてリカードがこの研究室に到着した時、そこにはいつもどおり研究に没頭するライラと、やけに鬼気迫る表情で作業をするフォンの姿があった。
「ああ、リカード! 聞いてください。実はあの<髪の色を変える魔法薬>に薄毛の副作用が見られるのです!」
「あっ、本当? わ~……それは困った事になったな……?」
ライラから例の薄毛の話を聞かされたリカードは、心配そうな彼女をよそに、なぜだか憐れみの表情をフォンに向けていた。
89
あなたにおすすめの小説
聖女追放された私ですが、追放先で開いたパン屋が大繁盛し、気づけば辺境伯様と宰相様と竜王が常連です
さら
恋愛
聖女として仕えていた少女セラは、陰謀により「力を失った」と断じられ、王都を追放される。行き着いた辺境の小さな村で、彼女は唯一の特技である「パン作り」を生かして小さな店を始める。祈りと癒しの力がわずかに宿ったパンは、人々の疲れを和らげ、心を温める不思議な力を持っていた。
やがて、村を治める厳格な辺境伯が常連となり、兵士たちの士気をも支える存在となる。続いて王都の切れ者宰相が訪れ、理屈を超える癒しの力に驚愕し、政治的な価値すら見出してしまう。そしてついには、黒曜石の鱗を持つ竜王がセラのパンを食べ、その力を認めて庇護を約束する。
追放されたはずの彼女の小さなパン屋は、辺境伯・宰相・竜王が並んで通う奇跡の店へと変わり、村は国中に名を知られるほどに繁栄していく。しかし同時に、王都の教会や貴族たちはその存在を脅威とみなし、刺客を放って村を襲撃する。だが辺境伯の剣と宰相の知略、竜王の咆哮によって、セラと村は守られるのだった。
人と竜を魅了したパン屋の娘――セラは、三人の大国の要人たちに次々と想いを寄せられながらも、ただ一つの答えを胸に抱く。
「私はただ、パンを焼き続けたい」
追放された聖女の新たな人生は、香ばしい香りとともに世界を変えていく。
「不吉な子」と罵られたので娘を連れて家を出ましたが、どうやら「幸運を呼ぶ子」だったようです。
荒瀬ヤヒロ
恋愛
マリッサの額にはうっすらと痣がある。
その痣のせいで姑に嫌われ、生まれた娘にも同じ痣があったことで「気味が悪い!不吉な子に違いない」と言われてしまう。
自分のことは我慢できるが娘を傷つけるのは許せない。そう思ったマリッサは離婚して家を出て、新たな出会いを得て幸せになるが……
醜さを理由に毒を盛られたけど、何だか綺麗になってない?
京月
恋愛
エリーナは生まれつき体に無数の痣があった。
顔にまで広がった痣のせいで周囲から醜いと蔑まれる日々。
貴族令嬢のため婚約をしたが、婚約者から笑顔を向けられたことなど一度もなかった。
「君はあまりにも醜い。僕の幸せのために死んでくれ」
毒を盛られ、体中に走る激痛。
痛みが引いた後起きてみると…。
「あれ?私綺麗になってない?」
※前編、中編、後編の3話完結
作成済み。
女避けの為の婚約なので卒業したら穏やかに婚約破棄される予定です
くじら
恋愛
「俺の…婚約者のフリをしてくれないか」
身分や肩書きだけで何人もの男性に声を掛ける留学生から逃れる為、彼は私に恋人のふりをしてほしいと言う。
期間は卒業まで。
彼のことが気になっていたので快諾したものの、別れの時は近づいて…。
王太子殿下の想い人が騎士団長だと知った私は、張り切って王太子殿下と婚約することにしました!
奏音 美都
恋愛
ソリティア男爵令嬢である私、イリアは舞踏会場を離れてバルコニーで涼んでいると、そこに王太子殿下の逢引き現場を目撃してしまいました。
そのお相手は……ロワール騎士団長様でした。
あぁ、なんてことでしょう……
こんな、こんなのって……尊すぎますわ!!
初恋に見切りをつけたら「氷の騎士」が手ぐすね引いて待っていた~それは非常に重い愛でした~
ひとみん
恋愛
メイリフローラは初恋の相手ユアンが大好きだ。振り向いてほしくて会う度求婚するも、困った様にほほ笑まれ受け入れてもらえない。
それが十年続いた。
だから成人した事を機に勝負に出たが惨敗。そして彼女は初恋を捨てた。今までたった 一人しか見ていなかった視野を広げようと。
そう思っていたのに、巷で「氷の騎士」と言われているレイモンドと出会う。
好きな人を追いかけるだけだった令嬢が、両手いっぱいに重い愛を抱えた令息にあっという間に捕まってしまう、そんなお話です。
ツッコミどころ満載の5話完結です。
頭頂部に薔薇の棘が刺さりまして
犬野きらり
恋愛
第二王子のお茶会に参加して、どうにかアピールをしようと、王子の近くの場所を確保しようとして、転倒。
王家の薔薇に突っ込んで転んでしまった。髪の毛に引っ掛かる薔薇の枝に棘。
失態の恥ずかしさと熱と痛みで、私が寝込めば、初めましての小さき者の姿が見えるようになり…
この薔薇を育てた人は!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる