生活魔法は万能です

浜柔

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52 銃

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 甘薯尽くしはルキアスの口にはちょっと甘すぎはしたものの、それなりに美味しくいただけた。これで貰った甘薯を食事にすることに不安は無い。
 時間的余裕が増えて気が楽になったルキアスはガズイやマイサに聞かれるままこれまでの旅の話を話した。聞く側の夫婦は殆ど終始驚くやら感心するやらの様子で聞いていたが、迷子から始まるエピソードには苦笑いを禁じ得なかった。

「親子ドンブリが判らないんですよね」

 とここでまた首を傾げるルキアスに対し、夫は妻に提案した。

「おい、材料が有ったら、明日の朝飯に作ってやれ」
「そうね。出来ると思うわ」

 こうして翌朝の朝食は決まった。
 そしてその朝食後にガズイに耳打ちされた裏の意味に、ルキアスはトマトのように顔を染め上げられ、大いに狼狽えさせられることになるが、お愛嬌である。
 それはさておき、話が一段落したところでルキアスは今居る部屋を見回した。すると壁に銃らしき物が掛けられている。これにはもしかしたら判らなかった部分が判るかもと思わずにいられないルキアスだ。

「あれは銃ですか?」
「ああ、あれか。最近は少なくなったが、猪なんかが畑を荒らしに来ることがあってな。あの銃はその退治用だ」
「あー、猪ですか。それであの、銃ってどんな構造なのか教えて貰えないでしょうか?」

 ルキアスは猪に興味が無い。ガズイが愚痴をこぼしたそうにしているのを察しはしたが、それを聞いていたら肝心の事を聞けず仕舞いになりかねない。内心で謝りつつも話を流した。
 ガズイの方もそんなルキアスの様子に、今のルキアスにとって必要なのは自分の愚痴ではないと察した。

「ああ、ダンジョンなら銃がいいかも知れないな。構造くらいいいぞ」

 ガズイは壁に掛かった銃を取って来ると、テーブルに銃と弾丸を広げた。

「これが弾丸だ。ここが鉛の弾頭で、この薬莢の中には火薬が入っている。その火薬を爆発させて、そこで発生するガスの圧力で弾頭を飛ばす訳だ。だから銃身もこんなに長くなっている」

 ガズイは部分部分を指差しながら説明した。そして銃と弾丸を手に取って実演する。勿論発射まではしない。

「弾丸をこうして入れて、撃鉄を起こし、この引き金を引いて撃つ」
「なるほど」

(よく判らない)

 銃と弾丸を触らせて貰ってルキアスが判ったのも、思ったよりずっしりとした重さがあることくらいだ。考えていたものとは構造が大きく違うため、応用できる見込みが薄い。

「因みに銃って幾らぐらいでしょう?」
「安いのなら二〇万ダールくらいだな。弾丸はこれのなら一発が五〇ダールだ」
「ありがとうございます……」

 弾丸六、七発でルキアスが今想定している一日の食費が飛ぶ。購入は夢のまた夢であった。
 その後は他愛のない話を幾らかして就寝。翌朝、早い時間にルキアスはガズイの家を辞した。
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