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51 甘薯尽くし
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ルキアスは大きな甘薯を一抱えほどと、売り物にならないと言う小さな甘薯を二抱えほど、芋蔓も二抱え貰った。芋蔓はもっと貰おうと思えば貰えたが、手間が掛かるので諦めた。それでも全部で二〇日分くらいの食料になる。口に合えばだが。
そうする内に日も暮れて。
「ボウズ、もうこんな時間なんだ。今夜は家に泊まって行きな」
「あ、ありがとうございます」
ルキアスは即、言葉に甘えた。足を延ばして眠れるならそれに越したことはない。
「今帰ったぞ!」
「あら、お帰りなさい。収穫は終わったの?」
農夫の声に応えるように家の奥からエプロン姿の中年女性がやって来た。農夫の妻だ。彼女はきょんとルキアスに目を留める。
「あなたのお友達? 随分お若いお友達ね?」
「いやこのボウズには収穫を手伝って貰ったんだ。お陰で畑一枚は収穫が済んだ。そんで、旅の途中らしいから今晩は泊めてやろうと思ってな」
「まあ、そうなのぉ? それはありがとうねぇ。ゆっくりしていってちょうだいねぇ」
にこにこと笑いながら女性はまた家の奥へと戻って行った。
「俺達は先に風呂だ」
この辺りは阿吽の呼吸らしい。一瞬呆気に取られたルキアスだったが、泥まみれのままなのを思い出す。
「あ、はい……」
しかしふと疑問が。
(え? 一緒に?)
裸の付き合いを厭いはしないルキアスだが、さすがにむくつけき農夫と密着するような状況にはなりたくない。戦々恐々としつつ農夫に案内されるまま風呂場へと行く。
しかし風呂場を見て、二人で入浴しても十分余裕があるだろうその広さに、そっと胸を撫で下ろした。
農夫は風呂好き長風呂のようで、ルキアスが汚れた服を洗濯する余裕すらあった。だからこそ風呂が大きかったのだとルキアスも納得だ。そして風呂から上がれば夕食の仕度が整えられていた。
並べられた料理は甘薯尽くし。甘薯の炊き込みご飯、きんとん、スープに揚げ物もある。ルキアスにとって目新しいのは炊き込みご飯だ。その白い粒が何か判らなかったが、米だと聞いて納得した。今日町で見たばかりである。他の料理は甘薯を馬鈴薯に置き換えれば食べ慣れたものに近かった。
「一杯食べてね。えーと、ところでお名前は?」
妻は夫に聞くが夫はびっくりした顔をして首を横に振る。
「もう、気が利かないんだから。この人はガズイ、わたしはマイサ、よろしくね」
「ルキアスです。よろしくお願いします」
挨拶をした後でルキアスはバツの悪そうな顔をガズイに見せる。するとガズイも同じような顔でルキアスに顔を向けていた。
その後は和やかに食事は進み、その途中ルキアスはガズイの身の上を少しだけ聞かされた。彼には三人の子供が居るものの、全員が別の仕事に就いたか嫁いで出て行ってしまったらしい。
そんな話を少しだけ寂しげに語るガズイの姿がルキアスには酷く印象に残った。
そうする内に日も暮れて。
「ボウズ、もうこんな時間なんだ。今夜は家に泊まって行きな」
「あ、ありがとうございます」
ルキアスは即、言葉に甘えた。足を延ばして眠れるならそれに越したことはない。
「今帰ったぞ!」
「あら、お帰りなさい。収穫は終わったの?」
農夫の声に応えるように家の奥からエプロン姿の中年女性がやって来た。農夫の妻だ。彼女はきょんとルキアスに目を留める。
「あなたのお友達? 随分お若いお友達ね?」
「いやこのボウズには収穫を手伝って貰ったんだ。お陰で畑一枚は収穫が済んだ。そんで、旅の途中らしいから今晩は泊めてやろうと思ってな」
「まあ、そうなのぉ? それはありがとうねぇ。ゆっくりしていってちょうだいねぇ」
にこにこと笑いながら女性はまた家の奥へと戻って行った。
「俺達は先に風呂だ」
この辺りは阿吽の呼吸らしい。一瞬呆気に取られたルキアスだったが、泥まみれのままなのを思い出す。
「あ、はい……」
しかしふと疑問が。
(え? 一緒に?)
裸の付き合いを厭いはしないルキアスだが、さすがにむくつけき農夫と密着するような状況にはなりたくない。戦々恐々としつつ農夫に案内されるまま風呂場へと行く。
しかし風呂場を見て、二人で入浴しても十分余裕があるだろうその広さに、そっと胸を撫で下ろした。
農夫は風呂好き長風呂のようで、ルキアスが汚れた服を洗濯する余裕すらあった。だからこそ風呂が大きかったのだとルキアスも納得だ。そして風呂から上がれば夕食の仕度が整えられていた。
並べられた料理は甘薯尽くし。甘薯の炊き込みご飯、きんとん、スープに揚げ物もある。ルキアスにとって目新しいのは炊き込みご飯だ。その白い粒が何か判らなかったが、米だと聞いて納得した。今日町で見たばかりである。他の料理は甘薯を馬鈴薯に置き換えれば食べ慣れたものに近かった。
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その後は和やかに食事は進み、その途中ルキアスはガズイの身の上を少しだけ聞かされた。彼には三人の子供が居るものの、全員が別の仕事に就いたか嫁いで出て行ってしまったらしい。
そんな話を少しだけ寂しげに語るガズイの姿がルキアスには酷く印象に残った。
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