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「ロマさん。ありがとう。来てくれなかったら寝てる間に溺れるところだった」
「いいってことよ。こんなのはお互い様だ」
ルキアスにはとてもそうは思えない。何度か話しただけの相手のために自分の命を賭けるのだからロマは驚くほどのお人好しだ。
「でもぼくが宿泊所に居るってどうして判ったの?」
「なあに、今から祭りだってのにお前さんが宿泊所の方に行くのを見てな。その後も姿が見えなかったから眠ってると思ったんだ」
「ありがとうございます」
「まだお礼には早い。ここから脱出した後に取っておけ。今は早くここから出ることだ」
「はい! あ、でも、魔物と戦わなけりゃいけないんじゃ?」
ダンジョンタワーの防衛機構が動いた時には魔物と戦わされるように言ったのはルキアスの目の前に立つロマだ。
ところがロマは苦笑する。
「お前さん戦えるか?」
「……言ってみただけです」
「だろ? 俺もだ!」
ロマは呵々と笑う。
「もし入口を閉じられてても、その近くなら水も来ないだろう。とにかくそこまで行かなきゃな」
「はい!」
水の中、それも流れに逆らう形で歩くのは極めて困難だったものの、それ程時間は掛からず階段には到着した。しかしルキアスとロマは我が目を疑った。階段を流れ落ちる水は腰ほどの高さにも達する激流だ。その影響でフロア上でも腰まで浸かり、踏ん張らなければ水の勢いに流されそうになる。
「ここを登るの?」
「俺が降りた時はもっと少なかったんだがな……。でも仕方がない。登るぞ」
ロマが壁に貼り付くようにしながら階段に挑む。手摺りも無く、他の手掛かりも無い中だ。
そしてそれは無謀だった。
「うおっ!」
「ロマさん!」
ロマは階段を上がろうとしたところで敢え無く水に流され、水中に没した。
「ロマさん! ロマさーん!」
水中には聞こえる筈もないが、ルキアスは声の限りに叫んだ。未だ水上にロマの姿は無い。水中は波に紛れて見えない。
「ロマさーん!」
しかしその時、階段とは反対側に十数歩先、階段から流れ落ちる水の音に紛れながらも何かが水から飛び出す音がした。そして続いたのが人の声だ。
「ごふぁあっ! げほっ! ぐほっ! げはっ!」
「ロマさん! 良かった!」
咳き込んではいるものの、ロマは無事のようだ。
「あー、死ぬかと思った」
「死んだかと思ったよ!」
「悪ぃ、悪ぃ。しかしどうにかして水の勢いが収まらないと無理だな」
「でも待ってたらお終いだし……」
フロアの水嵩は鳩尾にも達している。待てば待つほど登るのが困難にもなるだろう。
「遮る物でも有ればなぁ」
「あ!」
ルキアスはロマの一言で可能性に気が付いた。
「ロマさん。今度はぼくが試すから付いて来て」
「大丈夫なのか?」
「試してみないと判らないけど、これしか方法が無さそうだから」
「何か手があるんだな?」
「うん。一応」
「頼りないがまあいい。頼むぞ」
「うん」
ルキアスは階段の壁際にどうにか縋り付く。
「『傘』!」
「『傘』!?」
ロマの疑問に答える余裕も無く、ルキアスは『傘』を壁に貼り付けるように張った。思惑通りに流れる水の圧力が無くなり、その隙に階段を一段上がる。
だがここでもう『傘』は砕け散った。
「いいってことよ。こんなのはお互い様だ」
ルキアスにはとてもそうは思えない。何度か話しただけの相手のために自分の命を賭けるのだからロマは驚くほどのお人好しだ。
「でもぼくが宿泊所に居るってどうして判ったの?」
「なあに、今から祭りだってのにお前さんが宿泊所の方に行くのを見てな。その後も姿が見えなかったから眠ってると思ったんだ」
「ありがとうございます」
「まだお礼には早い。ここから脱出した後に取っておけ。今は早くここから出ることだ」
「はい! あ、でも、魔物と戦わなけりゃいけないんじゃ?」
ダンジョンタワーの防衛機構が動いた時には魔物と戦わされるように言ったのはルキアスの目の前に立つロマだ。
ところがロマは苦笑する。
「お前さん戦えるか?」
「……言ってみただけです」
「だろ? 俺もだ!」
ロマは呵々と笑う。
「もし入口を閉じられてても、その近くなら水も来ないだろう。とにかくそこまで行かなきゃな」
「はい!」
水の中、それも流れに逆らう形で歩くのは極めて困難だったものの、それ程時間は掛からず階段には到着した。しかしルキアスとロマは我が目を疑った。階段を流れ落ちる水は腰ほどの高さにも達する激流だ。その影響でフロア上でも腰まで浸かり、踏ん張らなければ水の勢いに流されそうになる。
「ここを登るの?」
「俺が降りた時はもっと少なかったんだがな……。でも仕方がない。登るぞ」
ロマが壁に貼り付くようにしながら階段に挑む。手摺りも無く、他の手掛かりも無い中だ。
そしてそれは無謀だった。
「うおっ!」
「ロマさん!」
ロマは階段を上がろうとしたところで敢え無く水に流され、水中に没した。
「ロマさん! ロマさーん!」
水中には聞こえる筈もないが、ルキアスは声の限りに叫んだ。未だ水上にロマの姿は無い。水中は波に紛れて見えない。
「ロマさーん!」
しかしその時、階段とは反対側に十数歩先、階段から流れ落ちる水の音に紛れながらも何かが水から飛び出す音がした。そして続いたのが人の声だ。
「ごふぁあっ! げほっ! ぐほっ! げはっ!」
「ロマさん! 良かった!」
咳き込んではいるものの、ロマは無事のようだ。
「あー、死ぬかと思った」
「死んだかと思ったよ!」
「悪ぃ、悪ぃ。しかしどうにかして水の勢いが収まらないと無理だな」
「でも待ってたらお終いだし……」
フロアの水嵩は鳩尾にも達している。待てば待つほど登るのが困難にもなるだろう。
「遮る物でも有ればなぁ」
「あ!」
ルキアスはロマの一言で可能性に気が付いた。
「ロマさん。今度はぼくが試すから付いて来て」
「大丈夫なのか?」
「試してみないと判らないけど、これしか方法が無さそうだから」
「何か手があるんだな?」
「うん。一応」
「頼りないがまあいい。頼むぞ」
「うん」
ルキアスは階段の壁際にどうにか縋り付く。
「『傘』!」
「『傘』!?」
ロマの疑問に答える余裕も無く、ルキアスは『傘』を壁に貼り付けるように張った。思惑通りに流れる水の圧力が無くなり、その隙に階段を一段上がる。
だがここでもう『傘』は砕け散った。
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