生活魔法は万能です

浜柔

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111 よく出来ている

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 ホーンラビットはザネクの一撃で骸となった。それでもルキアスはザネクを心配してしまう。

「ザネク、大丈夫!?」
「このくらい何て事ないぜ」

 ザネクは事も無げだ。ルキアスはホッと一安心したが、ザネクは些か怪訝そうにする。

「それよりルキアスはホーンラビットに気付かなかったのか?」
「うん。ザネクが斬り付けるまでは判らなかった」
「それって大丈夫か? ルキアスを後から見ていてやけに不用心だとは思っていたが……」
「え? ぼくって不用心?」
「驚くほどにな」

 ルキアスが困惑の表情を見せるが、ザネクは「こっちこそ困惑だ」と内心でごちる。

「もっと周囲を注意しなけりゃ、ホーンラビットに不意打ちを食らって怪我するぞ」

 最悪の事態もあり得なくないとザネクは言う。
 だがルキアスにはピンと来なかった。いきなり襲われた事が無いので実感が湧かない。それでもザネクがかなり警戒していることは判る。こうして話している間も緊張感を持って周囲に目を配っているのだから。

「今まで逃げられたことはあっても、いきなり襲われたことはないよ。ホーンラビットだけを狩ってたらそうなるみたい。だからカピバラを倒さないようにするのに気を使うくらいかな」

 先はいきなり向かって来られてびっくりしたが、よくよく考えればザネクかリュミアが狙われただけだったように思えるのだ。

「そう言うこと……ね。ルキアスくんとは別に魔物から襲われない人の噂は聞いたことがある……わ。今までは信用していいものか判らなかったけれど、噂は正しかったの……ね。だけどつくづくダンジョンってよく出来てるもの……ね」

 最後の方は殆ど独り言に近かった。しかし聞く者には気になる台詞でもある。

「リュミア姉ちゃん? よく出来てるって?」
「ほら、慣れない間はホーンラビットから襲われたくないものだけど、慣れたら探すより襲われた方が楽で……しょ?」
「言われてみればそうだな」
「それを切り替えるタイミングを意図的にできるとしたらどうかし……ら? 探索者に便宜を図っているようじゃな……い?」

 ルキアスはダンジョンが生活に苦しむ『天職無し』を憐れに思った昔の大賢者が創ったとも言われているのを思い出した。
 ザネク、それにエリリースも何かに思い至ったような顔をする。

「不思議ですわね。そうだとすると有用だと思いますのに、どうして噂でしかないのでしょう?」
「下の階層を目指すには遠回りになるからじゃないかし……ら。下の階層の魔物は不意打ちをして来るものだから、その対処の練習を致命傷になりにくいホーンラビットで練習しておいた方がいいもの……ね」

 エリリースは頷きを返した。ルキアスとザネクも話を聞きながら頷いた。
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