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浜柔

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192 アダマント

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 ルキアスが発見した金属は金属らしい粘りを持ちながら鋼玉の硬さを持つアダマントと呼ばれる金属だ。握り拳二つ分程の大きさ。突き出た岩は大きかったが、その先端にちょこっと在っただけだった。
 ザネクはこれを全部ルキアスに譲った。探索中に見付けたものだから本来なら等分にするところだが、量が多くない上に金属だから切り分けようにも難しい。こんな場合は売った代金を分けるのが常道だが、これでは幾許かの現金にしかならない。それよりもルキアスが何かに使えるならルキアスに任せた方が有意義と考えた。それにこの程度で命の借りを返せるとは考えないが、幾らかでも返しておきたいとも考えたのだ。
 ルキアスに貸しを作った覚えは無く、ザネクが借りに思っているだけではあるが。

 そうしてルキアスはアダマントの固まりを手に入れた。ザネクの本意まで察せていないのは致し方ない部分だ。
 ともあれ、手に入れたのだ。何に使おうかと頭を悩ませる。
 候補としては蒸気銃の蒸気タンクか、銃の銃身だ。どちらにするかは幾つか実験してみてからになる。
 そう、蒸気銃を完全に諦めた訳ではない。加えて市販のも含めて銃をもっと強力にできないかが頭の片隅に引っ掛かってもいる。アダマントがそれらを解決する糸口になるのではと期待している。

 最初に熱の伝わり易さを試す。伝わり易ければタンクに使え、伝わり難ければ使えない。
 これは『加熱』が基本的には物の表面に作用するよう出来ているのが関係している。大きな理由が目標設定のし易さにある。水のように目に見えていれば容易だが、水蒸気のように人の目にあやふやな存在では難しい。その点、タンクの外側から間接的に加熱するなら存在があやふやになることもなく安定して加熱可能だ。
 しかし逆に熱が伝わり難いようならタンクのカバーに使えるので、全く伝わらなくならそれはそれで嬉しい結果となる。
 ルキアスはアダマントの塊の端に触れつつ、反対側の端を緩く『加熱』する。五〇度くらいだろうか。少し触れた程度で火傷はしないがはっきりと熱さを感じる程度の温度だ。
 そして数秒後。予想よりも速く熱が伝わった。恐らく鉄よりも速い。蒸気タンクに最適と言えるだろう。

 続けて爆発力に対する耐久力を試したいところ。銃弾の発射時の衝撃に耐えられるかだ。つまり銃身に使えるかを調べたい。
 しかしルキアスはその手段を今は持ち得ない。ハンマーか何かで叩いてみてもきっと爆発力に耐えられるかの参考にもならない。
 だからルキアスは『捏ね』られるかを先に試す。むしろ最も大事な試験だ。『捏ね』られなければ宝の持ち腐れになるのだから。

「ぐぬぬ……」

 『捏ね』られないこともなかったが、鉄の一〇倍以上の時間が必要だった。
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