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222 島は
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流されるままにもてなしを受けていたルキアスも、テンションが下がったことで、すっかり忘れていた当初の目的を思い出した。
「あのう、ここら辺……、いえ、回廊の柱が見える範囲で島は在りませんか?」
ここからなら見える螺旋回廊の柱を指差しつつ船長に尋ねた。
「島? 島かぁ……。生憎柱が見える場所に島はねぇな」
「そうなんですね……」
柱の向こう側までは見ていないが予感がしないでもなかったルキアスだ。
「皆さんは柱の見えない場所ではどうやって方角を確かめてます?」
「普通に羅針盤だ」
「現在位置が判らなくなってたら方角が判っても意味無くないですか?」
「んなこたぁあるもんか。進んだ大体の方角さえ憶えてりゃ、その反対に進めば柱が見える場所までは戻って来れるもんだ」
「なるほど……」
ルキアスは道理だと頷いた。乗組員も多く、異常な流され方もしないだろう大型船なら方角を確かめつつ航行することで、一時的に方角を失っても遭難するには至らないだろう。
しかし『傘』で飛ぶルキアスはどうか。ザネクと二人だけだから方角ばかりを気にしても居られず、過ぎるくらいに小回りが利くので、気付けば明後日の方向の可能性がある。そのまま転用するのは危険だ。
さてどう応用するべきか。ルキアスが考えていると、どよめきが聞こえた。振り向けば漁師達が『傘』を撫で回している。
「こんな固ぇ『傘』は初めてだ」
ペチペチと手の平で軽く叩く程度なら割れないようだ。しかし少し力を入れて叩けばパリンと音がして割れた。
「割れたかぁ。やっぱりまだまだだな。もっと固くできなきゃ話にならないもんな」
ザネクは口とは裏腹にドヤ顔だ。そしてまた『傘』を差す。すると先とは別の漁師が撫で回し始めた。どうやらザネクは漁師達と『傘』談義をし、差した『傘』を漁師達に触らせているらしい。
「これだけ固けりゃ雨で壊れることはないだろ? もっとだなんてどこを目指してるんだ?」
「空飛ぶんだよ」
「はぁ? 飛べる訳ねぇだろぉ」
漁師は心底呆れたように言うがザネクは不敵に笑って返す。
「ルキアスのなら飛べるぜ。みんな見たろ?」
「おいおい、あれが『傘』だって言うのかよ?」
「勿論だ」
「おいおいどう言う事だ? 俺見てないんだが?」
漁師の一部は自分の作業に忙しくて目にしてないらしい。
「それがな……」
説明しようとした漁師は話し掛けたところで止め、ルキアスを見た。
「なあ、兄ちゃんがルキアスだろ? 百聞は一見に如かず、本当かどうか見せちゃくれないか?」
「はあ……」
今一つ事情を把握しきれないルキアスは生返事。ザネクを見れば肩を竦めて苦笑いだ。
「兄ちゃん。見せてやっちゃくれないか?」
船長にも頼まれてしまった。
「はあ、まあ、構いませんが……」
そんな訳でルキアスは『傘』を横に向けて差した。
「あのう、ここら辺……、いえ、回廊の柱が見える範囲で島は在りませんか?」
ここからなら見える螺旋回廊の柱を指差しつつ船長に尋ねた。
「島? 島かぁ……。生憎柱が見える場所に島はねぇな」
「そうなんですね……」
柱の向こう側までは見ていないが予感がしないでもなかったルキアスだ。
「皆さんは柱の見えない場所ではどうやって方角を確かめてます?」
「普通に羅針盤だ」
「現在位置が判らなくなってたら方角が判っても意味無くないですか?」
「んなこたぁあるもんか。進んだ大体の方角さえ憶えてりゃ、その反対に進めば柱が見える場所までは戻って来れるもんだ」
「なるほど……」
ルキアスは道理だと頷いた。乗組員も多く、異常な流され方もしないだろう大型船なら方角を確かめつつ航行することで、一時的に方角を失っても遭難するには至らないだろう。
しかし『傘』で飛ぶルキアスはどうか。ザネクと二人だけだから方角ばかりを気にしても居られず、過ぎるくらいに小回りが利くので、気付けば明後日の方向の可能性がある。そのまま転用するのは危険だ。
さてどう応用するべきか。ルキアスが考えていると、どよめきが聞こえた。振り向けば漁師達が『傘』を撫で回している。
「こんな固ぇ『傘』は初めてだ」
ペチペチと手の平で軽く叩く程度なら割れないようだ。しかし少し力を入れて叩けばパリンと音がして割れた。
「割れたかぁ。やっぱりまだまだだな。もっと固くできなきゃ話にならないもんな」
ザネクは口とは裏腹にドヤ顔だ。そしてまた『傘』を差す。すると先とは別の漁師が撫で回し始めた。どうやらザネクは漁師達と『傘』談義をし、差した『傘』を漁師達に触らせているらしい。
「これだけ固けりゃ雨で壊れることはないだろ? もっとだなんてどこを目指してるんだ?」
「空飛ぶんだよ」
「はぁ? 飛べる訳ねぇだろぉ」
漁師は心底呆れたように言うがザネクは不敵に笑って返す。
「ルキアスのなら飛べるぜ。みんな見たろ?」
「おいおい、あれが『傘』だって言うのかよ?」
「勿論だ」
「おいおいどう言う事だ? 俺見てないんだが?」
漁師の一部は自分の作業に忙しくて目にしてないらしい。
「それがな……」
説明しようとした漁師は話し掛けたところで止め、ルキアスを見た。
「なあ、兄ちゃんがルキアスだろ? 百聞は一見に如かず、本当かどうか見せちゃくれないか?」
「はあ……」
今一つ事情を把握しきれないルキアスは生返事。ザネクを見れば肩を竦めて苦笑いだ。
「兄ちゃん。見せてやっちゃくれないか?」
船長にも頼まれてしまった。
「はあ、まあ、構いませんが……」
そんな訳でルキアスは『傘』を横に向けて差した。
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