222 / 627
222 島は
しおりを挟む
流されるままにもてなしを受けていたルキアスも、テンションが下がったことで、すっかり忘れていた当初の目的を思い出した。
「あのう、ここら辺……、いえ、回廊の柱が見える範囲で島は在りませんか?」
ここからなら見える螺旋回廊の柱を指差しつつ船長に尋ねた。
「島? 島かぁ……。生憎柱が見える場所に島はねぇな」
「そうなんですね……」
柱の向こう側までは見ていないが予感がしないでもなかったルキアスだ。
「皆さんは柱の見えない場所ではどうやって方角を確かめてます?」
「普通に羅針盤だ」
「現在位置が判らなくなってたら方角が判っても意味無くないですか?」
「んなこたぁあるもんか。進んだ大体の方角さえ憶えてりゃ、その反対に進めば柱が見える場所までは戻って来れるもんだ」
「なるほど……」
ルキアスは道理だと頷いた。乗組員も多く、異常な流され方もしないだろう大型船なら方角を確かめつつ航行することで、一時的に方角を失っても遭難するには至らないだろう。
しかし『傘』で飛ぶルキアスはどうか。ザネクと二人だけだから方角ばかりを気にしても居られず、過ぎるくらいに小回りが利くので、気付けば明後日の方向の可能性がある。そのまま転用するのは危険だ。
さてどう応用するべきか。ルキアスが考えていると、どよめきが聞こえた。振り向けば漁師達が『傘』を撫で回している。
「こんな固ぇ『傘』は初めてだ」
ペチペチと手の平で軽く叩く程度なら割れないようだ。しかし少し力を入れて叩けばパリンと音がして割れた。
「割れたかぁ。やっぱりまだまだだな。もっと固くできなきゃ話にならないもんな」
ザネクは口とは裏腹にドヤ顔だ。そしてまた『傘』を差す。すると先とは別の漁師が撫で回し始めた。どうやらザネクは漁師達と『傘』談義をし、差した『傘』を漁師達に触らせているらしい。
「これだけ固けりゃ雨で壊れることはないだろ? もっとだなんてどこを目指してるんだ?」
「空飛ぶんだよ」
「はぁ? 飛べる訳ねぇだろぉ」
漁師は心底呆れたように言うがザネクは不敵に笑って返す。
「ルキアスのなら飛べるぜ。みんな見たろ?」
「おいおい、あれが『傘』だって言うのかよ?」
「勿論だ」
「おいおいどう言う事だ? 俺見てないんだが?」
漁師の一部は自分の作業に忙しくて目にしてないらしい。
「それがな……」
説明しようとした漁師は話し掛けたところで止め、ルキアスを見た。
「なあ、兄ちゃんがルキアスだろ? 百聞は一見に如かず、本当かどうか見せちゃくれないか?」
「はあ……」
今一つ事情を把握しきれないルキアスは生返事。ザネクを見れば肩を竦めて苦笑いだ。
「兄ちゃん。見せてやっちゃくれないか?」
船長にも頼まれてしまった。
「はあ、まあ、構いませんが……」
そんな訳でルキアスは『傘』を横に向けて差した。
「あのう、ここら辺……、いえ、回廊の柱が見える範囲で島は在りませんか?」
ここからなら見える螺旋回廊の柱を指差しつつ船長に尋ねた。
「島? 島かぁ……。生憎柱が見える場所に島はねぇな」
「そうなんですね……」
柱の向こう側までは見ていないが予感がしないでもなかったルキアスだ。
「皆さんは柱の見えない場所ではどうやって方角を確かめてます?」
「普通に羅針盤だ」
「現在位置が判らなくなってたら方角が判っても意味無くないですか?」
「んなこたぁあるもんか。進んだ大体の方角さえ憶えてりゃ、その反対に進めば柱が見える場所までは戻って来れるもんだ」
「なるほど……」
ルキアスは道理だと頷いた。乗組員も多く、異常な流され方もしないだろう大型船なら方角を確かめつつ航行することで、一時的に方角を失っても遭難するには至らないだろう。
しかし『傘』で飛ぶルキアスはどうか。ザネクと二人だけだから方角ばかりを気にしても居られず、過ぎるくらいに小回りが利くので、気付けば明後日の方向の可能性がある。そのまま転用するのは危険だ。
さてどう応用するべきか。ルキアスが考えていると、どよめきが聞こえた。振り向けば漁師達が『傘』を撫で回している。
「こんな固ぇ『傘』は初めてだ」
ペチペチと手の平で軽く叩く程度なら割れないようだ。しかし少し力を入れて叩けばパリンと音がして割れた。
「割れたかぁ。やっぱりまだまだだな。もっと固くできなきゃ話にならないもんな」
ザネクは口とは裏腹にドヤ顔だ。そしてまた『傘』を差す。すると先とは別の漁師が撫で回し始めた。どうやらザネクは漁師達と『傘』談義をし、差した『傘』を漁師達に触らせているらしい。
「これだけ固けりゃ雨で壊れることはないだろ? もっとだなんてどこを目指してるんだ?」
「空飛ぶんだよ」
「はぁ? 飛べる訳ねぇだろぉ」
漁師は心底呆れたように言うがザネクは不敵に笑って返す。
「ルキアスのなら飛べるぜ。みんな見たろ?」
「おいおい、あれが『傘』だって言うのかよ?」
「勿論だ」
「おいおいどう言う事だ? 俺見てないんだが?」
漁師の一部は自分の作業に忙しくて目にしてないらしい。
「それがな……」
説明しようとした漁師は話し掛けたところで止め、ルキアスを見た。
「なあ、兄ちゃんがルキアスだろ? 百聞は一見に如かず、本当かどうか見せちゃくれないか?」
「はあ……」
今一つ事情を把握しきれないルキアスは生返事。ザネクを見れば肩を竦めて苦笑いだ。
「兄ちゃん。見せてやっちゃくれないか?」
船長にも頼まれてしまった。
「はあ、まあ、構いませんが……」
そんな訳でルキアスは『傘』を横に向けて差した。
53
あなたにおすすめの小説
異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~
夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。
雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。
女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。
異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。
調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。
そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。
※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。
※サブタイトル追加しました。
荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク
普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。
だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。
洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。
------
この子のおかげで作家デビューできました
ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが
最強の赤ん坊! 異世界に来てしまったので帰ります!
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
病弱な僕は病院で息を引き取った
お母さんに親孝行もできずに死んでしまった僕はそれが無念でたまらなかった
そんな僕は運がよかったのか、異世界に転生した
魔法の世界なら元の世界に戻ることが出来るはず、僕は絶対に地球に帰る
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる