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浜柔

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223 ザネクの『傘』

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 成り行きでルキアスが差した『傘』を、漁師達が叩いたり蹴ったりしながらその強度に感心する。

「固ぇ」
「ビクともしねぇぞ」
「正直目の前で見ても『傘』とは信じられねぇ」
「しかしさっきの兄ちゃんの『傘』だって十分に非常識だもんな……」

 漁師達は顔を見合わせて首を傾げている。常識が打ち砕かれるのはなかなか受け入れ難いようだ。
 ルキアスは『傘』を一旦消し、再度下に向けて差すとザネクと共に乗ってみせる。そのまま浮かんで周囲を飛ぶ。

「マジか! 乗ってみてぇ!」
「俺だ! 俺も乗せてくれ!」
「いや、俺だ俺! 俺が先だ!」

 漁師達が異口同音に「乗せてくれ」と言い始めたから収拾が付かない。
 すると船長が苦笑混じりにルキアスに向けて言った。

「これじゃ却って迷惑掛けちまうから、悪ぃがそのまま行ってくれ。また改めて礼はさせて貰うからよ」
「あ、はい。じゃあそうさせて貰います」

 ルキアスは軽く挨拶を交わした後、螺旋回廊の柱の方へと進路を取る。
 後方からは嘆きの声と、船長の「てめぇら今日は死ぬほど残業だ!」と叫ぶ声が聞こえた。




 暫く進んだところで、ルキアスはふと思った。

(あれ? でもザネクの『傘』っていつの間にあんなに固くなったんだろう?)

 ルキアスが知っているザネクの『傘』は軽く叩くだけで割れる強度だった。

「ザネク? ザネクの『傘』っていつの間にあんなに固くなったの?」
「おっと、ルキアスにはいきなり飛ぶところを見せて驚かそうと思ってたのに、迂闊だったな」

 ザネクは小さく舌を出して応えた。

「いやいや、そんな気遣いは要らないよ」
「そりゃ残念。『傘』の方はアレだ。ずっと出しっぱなしにしてたからだ。移動中は暇だったろ? 今も出してるぞ」
「あーっ」

 よくよく下を見れば、それらしいものが見える。殆ど線一本だから目を凝らさないと煌めく水面に紛れてしまう。
 ルキアスは今の今まで気付いていなかった。だが練習にはもってこいだろうと瞬時に理解する。周囲を警戒しなくて済む『傘』での飛行中はさぞや『傘』に集中しやすかろう。
 謎が解けたところで今日この後のこと。

「今日は今からまた島を探すのは大変そうだよね?」
「今からじゃなぁ。それに方角も判らないんじゃ、出直すしかないだろうな」
「方角なら『日時計』で判るよ」

 『日時計』は方角が固定されていて、時間を読み取りにくいのが欠点なのだが、その欠点がそのまま方位磁針の役割も果たしている。正午の方角が北だ。

「あー、そっか。でも帰ろうぜ。今からじゃやっぱ気が乗らないからな」

 ルキアスもその意見に賛成だった。
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