生活魔法は万能です

浜柔

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423 切り出し

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 翌日、ルキアスがノルマのように肉を『捏ね』ていると、タイラクが一人の男を連れて来た。

「防具職人のホーカーだ」
「ルキアスです」

 どうして防具職人がこんな場所に居るのかと問えば、ここなら深層の魔物の素材に不自由しないからだと言う。
 ここで狩られた魔物の素材をダンジョン外で手に入れようとするなら、仲介するダンジョンタワーのマージンを含めた費用が製造前に必要となる。しかしここで生活する探索者の発注する防具をここで製造するならその費用が要らない。ダンジョンタワーを通さない上、支払うのが発注者になるからだ。
 発注者はダンジョンタワーの買取所の買取相場に応じた素材の代金と職人の手間賃を支払い、素材の代金はここでの分配規則に応じて各人に支払われる。概ね討伐参加者の均等割となっている。

「お前さんには皮の切り出しに手を貸して貰いたい」
「ぼくじゃ切り取れないのばかりなんですが……」
「指示通りに『捏ね』てくれればいい。後は俺の方でやる」

 ルキアスは確認を求めてタイラクを見た。

「ホーカーの言う通りにやってみてくれ。手間賃は支払うぞ」
「判りました。やってみます」

 そうしてルキアスがホーカーに付いて行くと、リザード大将が転がっていた。皮には既に人の上半身に似た当たり線らしきものが引かれている。

「その線の外側に沿って『捏ね』てくれ」
「大雑把にしかできないので、線の内側も『捏ね』られてしまいますけど……」
「これは試作品だから精度は気にしなくていい。どの程度の精度が出るかを見るのも目的だからな」
「良かった。それなら……」

 安心だと、ルキアスは作業を行った。
 ルキアスが『捏ね』終わった後、ホーカーは剣かと見紛う物を取り出した。だが剣にしてはおかしい。刀身は真っ直ぐで先端が丸くなっており、刃がギザギザしている。何より柄ではなく取っ手の付いた四角い箱が付いている。

「ちょっと離れてろよ」
「あの、それって?」

 ルキアスはホーカーが持っている物を指差した。

「こいつか? こいつはチェーンソーって言ってな、宝箱から出た魔道具だ。どんな代物かは今見せてやるからな」

 ホーカーがスイッチを入れると、甲高い音を起てながら刃が回り出した。

「うええ……?」

 ルキアスは怖気を感じて二、三歩引いた。
 ホーカーは回る刃先をルキアスが『捏ね』た部分へと押し当てる。すると破片を撒き散らしながら皮が切れた。

「うええ……」
「うはははははは!」

 シュールな光景にルキアスは更に引くが、ホーカーは奇妙なテンションで高笑いしながら切り進める。

「切れる、切れるぞ! これ程簡単に切れるとは!」

 ルキアスが後で聞けば、チェーンソーでも切るのに酷く苦労していたらしい。
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