生活魔法は万能です

浜柔

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436 気付かなかっただけ

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 ルキアスが逃げられないと悟ってベンチに座り直せば、ヨーコからのプレッシャーも消えた。
 ルキアスはヨーコの話を聞かない方が良い予感がしつつも、話を聞いたからと取って食われる訳ではないのを確信してもいるので、話を聞くだけは聞こうと腹を据えた。
 すると目の前の天ぷらも気になった。食べずにおくのは勿体なくもあり、惜しくもあるので箸を伸ばす。

「判った。聞くよ。だけど今日はどうしたの? いきなり居るからびっくりしたよ」
「何を言うておる。我はおぬしがここに来てから毎日ここに来ておる。おぬしが気付かなかっただけじゃ」
「え……?」
「我を知覚するには魔力が足りておらなんだのじゃ」
「魔力が足りない? だったら第四階層なんかでも見えなかった筈じゃない?」
「そこが我の神たる部分じゃ。我の見掛けの魔力は背景と同化する。この階層ではこの階層の強さ、上の階層なら上の階層の強さじゃ。知覚が可能か否かはその魔力との相対関係となる。上の階層では我の見掛けの魔力が弱い故、あの時のおぬしにも見えたのじゃ」
「ってことは、ここに居る間にぼくの魔力が上がった?」
「うむ」
「いつの間に……?」

 ルキアスは首を傾げずにいられなかった。

「このダンジョンの特性によるものじゃ。おぬしはこのダンジョンの有り様を変だと思わなんだか?」
「低い階層で魔物がわざと攻撃して来なかったりは感じてたけど……」

 それだけ言ってルキアスがヨーコの表情を覗うと、続きを待つようにじっと見詰められているだけだった。

「……探索者のトレーニングのため……とか?」
「……まあ、良かろう」

 ヨーコは一つ頷いた。

「その通り。このダンジョンは探索者を育てるためにある。主に戦闘力と魔力じゃ。魔力は使うだけでなく、浸って居るだけでも鍛えられる故、階層の深さに合わせて濃くしておる。魔力に浸るのなら濃いほどに鍛えられるからの。じゃが、過ぎれば毒にもなる。急に強い魔力に晒されれば過剰反応を示して死をも招きかねん。おぬしが無事じゃったのは日頃に鍛えておったからじゃろう」

 生活魔法と言えど同時に十数個を常に使い続ければ異常な部類だと言う。

「沢山魔法を使ってたのが変なところで役に立ったんだね……」

 ルキアスは喜んで良いのか判らなかった。それにこのダンジョンの目的がトレーニングなのに多くの探索者が死亡しているのも気になるところだ。

「だけど、何のためにトレーニングをさせるの?」
「それこそが本題じゃ」

 ヨーコは居住まいを正した。
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