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七 魔法はとても便利だね
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新居で迎えた初めての朝なのに、気分は晴れやかとはいかない。お店を開けるかどうかが怪しくなっているためだ。しかし、少しずつでも作業をしなければ何も動かない。昨日の内に買っていたパンで朝食を済ませると、また掃除に取り掛かることにした。
まずは灯りを点ける。それには、魔光石と言う魔力を込めると暫く光り続ける魔法道具を使う。この魔法道具は防寒具を買った店で買ったものだ。その店は冒険者向けの店らしく、携帯に便利な道具や魔法道具を色々売っていた。魔光石は一つ一万円だったが、これを二つ買った。魔力さえ有ればよく、燃料で追加の出費がいらないのが利点だ。そうそう壊れるものではないらしいので、長く使えることを期待している。
その魔光石のお陰で、窓を閉めていても部屋はそこそこ明るい。窓を開けても、建物の真ん中付近の部屋だと光が殆ど届かなくて薄暗いままだ。それを考えれば、窓を閉めて全て魔光石頼みにしても大差無い。むしろ魔光石を使った方が明るい場所さえある。だから、窓を閉めて掃除だ。この方が人目を気にする必要も無い。服を全部脱いで汚れないようにすることだってできるのだ。
そんな訳で、少々心細い思いをしながらも裸で掃き掃除を始めた。
ばさばさ。もあもあ。ざりざり。
天井を掃けば埃が舞い飛ぶし、床はずっと砂を踏んだような感触がしている。のっけから挫けそうである。
無心だ。ここは無心になるしかない。そう自分に言い聞かせ、黙々と箒を動かし続けた。
ひたすら手を動かし続けた甲斐も有り、昼をかなり回った頃に一通りの掃き掃除が終わった。途中で水桶一つと雑巾を見つけたが、何に使ったのか気になる汚れ方をしていたので、掃除には使わなかった。
まだ拭き掃除が残っているのだけど、既に今日の気力を使い果たしているので明日に回す。盥に魔法で水を溜め、身体を洗ったらまた買い物に出掛けるつもりだ。
買い物の目標は、防寒着を買った店に有った「初級魔法とその応用」と言う本だ。一〇万円だったので二の足を踏んだのだけど、物価がこう高いのでは魔法で代用可能なものならなんでも代用した方が良いような気がするのだ。それに、風の魔法を覚えれば掃除も捗るに違いない。
そして、あたしは草原のただ中に来ている。
昼食をパンの残りで済ませて本を買い求めた後、走って来た。チートのお陰で五分も走れば町が地平線の向こうに消えてしまうのだから、走る事自体は大した手間ではない。
ここに来たのは、勿論魔法の練習のためだ。自宅は元より、町中で練習なんて怖いことはできない。
早速、拘束の魔法で保護して本を広げる。難しい言い回しの有る契約書はまだ読めなかったが、この本は簡単な言い回しなので読むことができる。読んでしまえば書いている内容そのものはかなり単純だった。
魔法とは、魔力を変化させて流れを作ることだ。それによって物体に干渉し、現象を引き起こす。その現象の事を指して魔法と呼ぶ場合もある。
魔法そのものの説明はそれだけだった。なんだか国語辞典に載っている様な内容だ。よくよく見ると、参考資料に国語辞典が有った。著作権みたいなものが有る世界には思えないのに、なんて律儀な著者なんだ。
変なところに感動してしまったが、魔法の説明を国語辞典に頼るなんて変な話でもある。一体どう言うことなんだと読み進めてみれば、その理由がなんとなく判った。魔法はどちらかと言うと、体で覚えるものなのだ。歩き方や自転車の乗り方を言葉で説明しようと思っても上手く説明できないようなものである。
魔法の覚え方は既に体系化されていて、初級魔法の丸覚えから始める。初級魔法は魔力の制御を呪文として言語化されていて、使う者が魔力の流れを感じられなくとも指先に魔力を込めつつ呪文さえ唱えれば魔法を発動できる。呪文を通じて何度も魔法を発動することで段々と魔力の流れを感じられるようになり、呪文を省略しても発動できるようになっていく。最終的には無詠唱でも魔法の発動が可能だ。
魔法は火、風、水、土に大別でき、それぞれ初級から学ぶ必要がある。ざっくりと、火は現象を、風は気体を、水は液体を、土は固体に影響を与える魔法体系である。これは、それぞれで魔力の流れ方が違うためだ。
その初級魔法の呪文は意味不明の言葉の羅列になっていて、日常生活で偶然発動するようなことは殆ど無い。そのため、誰かに教わるか、この本のようなものを読まなければ取っ掛かりすら見つけられない。また、半端な教わり方をすると、応用が利かずに一つ覚えのようにしか発動できない。
応用ができるようになってしまえば、複合するなどして新たな魔法を構築することも可能になる。そんな新たな魔法は殆どが無詠唱で行われるため、後世に伝えられることも殆ど無い。
あたしは魔法について知らなさすぎたようだ。もう少し知っていればもっと楽だったような気がする。そう考えると若干凹む。だけど、今からはそうじゃない。まずは風の魔法から練習だ。
ページを開いて呪文を読んでいく。
――かぜよふけふけごろにゃんにゃんみぎからひだりへとんてんしゃんみっちゃんみちみちおろろんろん。
「…………アホか!」
ベシッ!
わわわ!
思わず本を叩き付けてしまった。保護していなかったら、今頃本がバラバラになってるところだ。
冷静に冷静に。そうあたしは冷静だ! よしっ!
なんにしても迂闊だった。なまじ意味が判る言葉が入っているだけにイラッときてしまった。気を取り直して呪文を唱えてみる。
「かぜよふけふけごろにゃんにゃんみぎからひだりへとんてんしゃんみっちゃんみちみちおろろんろん」
ごわっ。
右から左へと結構強く風が吹いた。強さは込める魔力に比例するので、少し込めすぎだったようだ。今度は、込める魔力を減らして呪文を唱える。
そよっ。
微かに風が吹いた。この程度なら家の中でも練習できそうだ。
残る問題は、右から左にばっかりじゃ不便だと言うことだ。だから、風の向きを変えたいのだが「無詠唱ができるようになったら、応用で風の向きを変えられます」ってなんだ! また本を叩き付けたくなったが、ぐっと我慢した。
風の魔法は置いといて、別の魔法の練習だ。
本を読み進めていくと、魔法は戦闘用として発展したため、応用するには戦闘用の魔法を覚えないといけないのだと書かれていた。着火の魔法や飲み水を出す魔法は応用した例として本に載っている。つまり、あたしは今まで応用できなくて当然だったのだ。さっき試した風の魔法も、応用した結果なので熟練しても風の向きを変えられるだけと言う。
風の魔法に拘らなくて良かった。
そうと判れば、一通りの攻撃魔法を唱えてみる。呪文には風の魔法同様に中途半端に意味の通じる言葉が混ざっていて馬鹿にされた気分にもなるが、そこはぐっと我慢する。
水の刃を飛ばす魔法、水で壁を作る魔法、強風を起こす魔法、竜巻を起こす魔法、土や石の礫を飛ばす魔法、土の壁を作る魔法、光の玉を浮かべる魔法、火の玉を飛ばす魔法の順で試した。水と土には、魔法で生成する場合と周辺に有るものを使う場合との二種類が載っていたので、試したのは合計一二種類になる。その後、応用した魔法として、飲み水を出す魔法、着火の魔法、穴を掘る魔法を試した。
飲み水を出す魔法と着火の魔法は、おかみさんに習ったのとは呪文が違った。ついでに本に書かれていたのと魔力の流れ方も違った。多分、冒険でよく使うだろうこの二つの呪文については昔の冒険者達が呪文を改変したのだ。応用は利かなくなるのと引き替えに唱えやすいものにしたに違いない。
そうして本に書かれていた呪文は全て試した。つまり、全部で一六種類の呪文が載っていた訳だ。後は自分で応用しろって感じに書かれているので練習次第なのだろう。
普通ならばだ。
そう、普通なら練習が必要な筈だ。だけどあたしの場合、本に書かれていた魔法を一通り試す間に魔力の流れが判るようになっていた。こんなところにもチートが隠れていたのだ。ちょっとだけ嬉しい。念のために一通り無詠唱で魔法を発動させてみると、全て上手く発動した。後は応用した魔法を考えれば良いだけだ。
応用した魔法の候補は、掃除機、コンロ、シャワー辺りが必須だ。既にどうすれば良いか判っているのでとにかく試してみる。
まずは掃除機だ。親指と人差し指で輪を作り、残りの指は人差し指に添えるように丸める。それを両手で作って重ね、筒に見立てる。最後に、筒に見立てた片方で筒から空気を吸い出すように風を起こすと、手の中を風が流れるのを感じた。そのまま地面に手を下ろすと、土埃が手の中を通って舞い散った。
うふふん。ちょっと気分が良い。麻袋に口金でも付けてしまえば掃除機っぽいものができあがるだろう。
次に、コンロだ。料理の時に燃料を節約できるかどうかは、出費面で大きく違ってくるので是非とも使いたい。これは火の玉の魔法を途中で止めたままにする要領で行う。作った火の玉を目標に投擲するのではなく、そのまま留まらせるのだ。ここで確認しなければいけないのは、意識しなくても一定の強さで維持できるかどうかである。
そんな訳で、火の玉を浮かべたままシャワーの方の実験をする。シャワーと言うより蛇口から水が流れるに等しいものだが、流れ続けることが重要だ。これには飲み水を出す魔法を持続させれば良い。おかみさんに習った方ではできないが、本に書かれた方であれば可能だった。
シャワーの実験を終えて火の玉を見ると、燃えたままだった。横目で見ていた範囲では大きさが変化した感じも無かった。最後の実験として魔力を絞っていけば、火の玉を消すこともできた。これなら、コンロ、正確には薪の代わりとして火の玉を使える。
「ふぅ」
一息ついて周りを見回すと、既に逢魔が時だ。少し嫌な事を思い出してしまって泣きたくなるが、じっと我慢して帰りを急ぐ。明日は掃除の残りをして、おかみさんの店でまた働くことにしよう。
今にして思うと、魔法を簡単に覚えられたのは女神のお陰である。ムカつく存在だったが、チートをくれたことには感謝しておこう。それに、あのでっかいトカゲより強い筈なのに女神は全く怖くなかった。多分、あたしが怖がらないようにしていたのだと思う。
そしてチートで思い出したが、最近筋力が上がっている気がする。拘束の魔法が何とか養成ギプスみたいなトレーニング効果をもたらしているっぽい。トカゲを一撃で倒せたのもそのためだ。一体どこまで筋力が上がるのか、少々不安でもある。
女神の話と言えば、邪神の復活がどうのと言っていたが、この世界ではまだ一度も聞いたことが無い。誰かが何処かで何かをしているのかも知れないが、ずっと聞かないままなのを願おう。
まずは灯りを点ける。それには、魔光石と言う魔力を込めると暫く光り続ける魔法道具を使う。この魔法道具は防寒具を買った店で買ったものだ。その店は冒険者向けの店らしく、携帯に便利な道具や魔法道具を色々売っていた。魔光石は一つ一万円だったが、これを二つ買った。魔力さえ有ればよく、燃料で追加の出費がいらないのが利点だ。そうそう壊れるものではないらしいので、長く使えることを期待している。
その魔光石のお陰で、窓を閉めていても部屋はそこそこ明るい。窓を開けても、建物の真ん中付近の部屋だと光が殆ど届かなくて薄暗いままだ。それを考えれば、窓を閉めて全て魔光石頼みにしても大差無い。むしろ魔光石を使った方が明るい場所さえある。だから、窓を閉めて掃除だ。この方が人目を気にする必要も無い。服を全部脱いで汚れないようにすることだってできるのだ。
そんな訳で、少々心細い思いをしながらも裸で掃き掃除を始めた。
ばさばさ。もあもあ。ざりざり。
天井を掃けば埃が舞い飛ぶし、床はずっと砂を踏んだような感触がしている。のっけから挫けそうである。
無心だ。ここは無心になるしかない。そう自分に言い聞かせ、黙々と箒を動かし続けた。
ひたすら手を動かし続けた甲斐も有り、昼をかなり回った頃に一通りの掃き掃除が終わった。途中で水桶一つと雑巾を見つけたが、何に使ったのか気になる汚れ方をしていたので、掃除には使わなかった。
まだ拭き掃除が残っているのだけど、既に今日の気力を使い果たしているので明日に回す。盥に魔法で水を溜め、身体を洗ったらまた買い物に出掛けるつもりだ。
買い物の目標は、防寒着を買った店に有った「初級魔法とその応用」と言う本だ。一〇万円だったので二の足を踏んだのだけど、物価がこう高いのでは魔法で代用可能なものならなんでも代用した方が良いような気がするのだ。それに、風の魔法を覚えれば掃除も捗るに違いない。
そして、あたしは草原のただ中に来ている。
昼食をパンの残りで済ませて本を買い求めた後、走って来た。チートのお陰で五分も走れば町が地平線の向こうに消えてしまうのだから、走る事自体は大した手間ではない。
ここに来たのは、勿論魔法の練習のためだ。自宅は元より、町中で練習なんて怖いことはできない。
早速、拘束の魔法で保護して本を広げる。難しい言い回しの有る契約書はまだ読めなかったが、この本は簡単な言い回しなので読むことができる。読んでしまえば書いている内容そのものはかなり単純だった。
魔法とは、魔力を変化させて流れを作ることだ。それによって物体に干渉し、現象を引き起こす。その現象の事を指して魔法と呼ぶ場合もある。
魔法そのものの説明はそれだけだった。なんだか国語辞典に載っている様な内容だ。よくよく見ると、参考資料に国語辞典が有った。著作権みたいなものが有る世界には思えないのに、なんて律儀な著者なんだ。
変なところに感動してしまったが、魔法の説明を国語辞典に頼るなんて変な話でもある。一体どう言うことなんだと読み進めてみれば、その理由がなんとなく判った。魔法はどちらかと言うと、体で覚えるものなのだ。歩き方や自転車の乗り方を言葉で説明しようと思っても上手く説明できないようなものである。
魔法の覚え方は既に体系化されていて、初級魔法の丸覚えから始める。初級魔法は魔力の制御を呪文として言語化されていて、使う者が魔力の流れを感じられなくとも指先に魔力を込めつつ呪文さえ唱えれば魔法を発動できる。呪文を通じて何度も魔法を発動することで段々と魔力の流れを感じられるようになり、呪文を省略しても発動できるようになっていく。最終的には無詠唱でも魔法の発動が可能だ。
魔法は火、風、水、土に大別でき、それぞれ初級から学ぶ必要がある。ざっくりと、火は現象を、風は気体を、水は液体を、土は固体に影響を与える魔法体系である。これは、それぞれで魔力の流れ方が違うためだ。
その初級魔法の呪文は意味不明の言葉の羅列になっていて、日常生活で偶然発動するようなことは殆ど無い。そのため、誰かに教わるか、この本のようなものを読まなければ取っ掛かりすら見つけられない。また、半端な教わり方をすると、応用が利かずに一つ覚えのようにしか発動できない。
応用ができるようになってしまえば、複合するなどして新たな魔法を構築することも可能になる。そんな新たな魔法は殆どが無詠唱で行われるため、後世に伝えられることも殆ど無い。
あたしは魔法について知らなさすぎたようだ。もう少し知っていればもっと楽だったような気がする。そう考えると若干凹む。だけど、今からはそうじゃない。まずは風の魔法から練習だ。
ページを開いて呪文を読んでいく。
――かぜよふけふけごろにゃんにゃんみぎからひだりへとんてんしゃんみっちゃんみちみちおろろんろん。
「…………アホか!」
ベシッ!
わわわ!
思わず本を叩き付けてしまった。保護していなかったら、今頃本がバラバラになってるところだ。
冷静に冷静に。そうあたしは冷静だ! よしっ!
なんにしても迂闊だった。なまじ意味が判る言葉が入っているだけにイラッときてしまった。気を取り直して呪文を唱えてみる。
「かぜよふけふけごろにゃんにゃんみぎからひだりへとんてんしゃんみっちゃんみちみちおろろんろん」
ごわっ。
右から左へと結構強く風が吹いた。強さは込める魔力に比例するので、少し込めすぎだったようだ。今度は、込める魔力を減らして呪文を唱える。
そよっ。
微かに風が吹いた。この程度なら家の中でも練習できそうだ。
残る問題は、右から左にばっかりじゃ不便だと言うことだ。だから、風の向きを変えたいのだが「無詠唱ができるようになったら、応用で風の向きを変えられます」ってなんだ! また本を叩き付けたくなったが、ぐっと我慢した。
風の魔法は置いといて、別の魔法の練習だ。
本を読み進めていくと、魔法は戦闘用として発展したため、応用するには戦闘用の魔法を覚えないといけないのだと書かれていた。着火の魔法や飲み水を出す魔法は応用した例として本に載っている。つまり、あたしは今まで応用できなくて当然だったのだ。さっき試した風の魔法も、応用した結果なので熟練しても風の向きを変えられるだけと言う。
風の魔法に拘らなくて良かった。
そうと判れば、一通りの攻撃魔法を唱えてみる。呪文には風の魔法同様に中途半端に意味の通じる言葉が混ざっていて馬鹿にされた気分にもなるが、そこはぐっと我慢する。
水の刃を飛ばす魔法、水で壁を作る魔法、強風を起こす魔法、竜巻を起こす魔法、土や石の礫を飛ばす魔法、土の壁を作る魔法、光の玉を浮かべる魔法、火の玉を飛ばす魔法の順で試した。水と土には、魔法で生成する場合と周辺に有るものを使う場合との二種類が載っていたので、試したのは合計一二種類になる。その後、応用した魔法として、飲み水を出す魔法、着火の魔法、穴を掘る魔法を試した。
飲み水を出す魔法と着火の魔法は、おかみさんに習ったのとは呪文が違った。ついでに本に書かれていたのと魔力の流れ方も違った。多分、冒険でよく使うだろうこの二つの呪文については昔の冒険者達が呪文を改変したのだ。応用は利かなくなるのと引き替えに唱えやすいものにしたに違いない。
そうして本に書かれていた呪文は全て試した。つまり、全部で一六種類の呪文が載っていた訳だ。後は自分で応用しろって感じに書かれているので練習次第なのだろう。
普通ならばだ。
そう、普通なら練習が必要な筈だ。だけどあたしの場合、本に書かれていた魔法を一通り試す間に魔力の流れが判るようになっていた。こんなところにもチートが隠れていたのだ。ちょっとだけ嬉しい。念のために一通り無詠唱で魔法を発動させてみると、全て上手く発動した。後は応用した魔法を考えれば良いだけだ。
応用した魔法の候補は、掃除機、コンロ、シャワー辺りが必須だ。既にどうすれば良いか判っているのでとにかく試してみる。
まずは掃除機だ。親指と人差し指で輪を作り、残りの指は人差し指に添えるように丸める。それを両手で作って重ね、筒に見立てる。最後に、筒に見立てた片方で筒から空気を吸い出すように風を起こすと、手の中を風が流れるのを感じた。そのまま地面に手を下ろすと、土埃が手の中を通って舞い散った。
うふふん。ちょっと気分が良い。麻袋に口金でも付けてしまえば掃除機っぽいものができあがるだろう。
次に、コンロだ。料理の時に燃料を節約できるかどうかは、出費面で大きく違ってくるので是非とも使いたい。これは火の玉の魔法を途中で止めたままにする要領で行う。作った火の玉を目標に投擲するのではなく、そのまま留まらせるのだ。ここで確認しなければいけないのは、意識しなくても一定の強さで維持できるかどうかである。
そんな訳で、火の玉を浮かべたままシャワーの方の実験をする。シャワーと言うより蛇口から水が流れるに等しいものだが、流れ続けることが重要だ。これには飲み水を出す魔法を持続させれば良い。おかみさんに習った方ではできないが、本に書かれた方であれば可能だった。
シャワーの実験を終えて火の玉を見ると、燃えたままだった。横目で見ていた範囲では大きさが変化した感じも無かった。最後の実験として魔力を絞っていけば、火の玉を消すこともできた。これなら、コンロ、正確には薪の代わりとして火の玉を使える。
「ふぅ」
一息ついて周りを見回すと、既に逢魔が時だ。少し嫌な事を思い出してしまって泣きたくなるが、じっと我慢して帰りを急ぐ。明日は掃除の残りをして、おかみさんの店でまた働くことにしよう。
今にして思うと、魔法を簡単に覚えられたのは女神のお陰である。ムカつく存在だったが、チートをくれたことには感謝しておこう。それに、あのでっかいトカゲより強い筈なのに女神は全く怖くなかった。多分、あたしが怖がらないようにしていたのだと思う。
そしてチートで思い出したが、最近筋力が上がっている気がする。拘束の魔法が何とか養成ギプスみたいなトレーニング効果をもたらしているっぽい。トカゲを一撃で倒せたのもそのためだ。一体どこまで筋力が上がるのか、少々不安でもある。
女神の話と言えば、邪神の復活がどうのと言っていたが、この世界ではまだ一度も聞いたことが無い。誰かが何処かで何かをしているのかも知れないが、ずっと聞かないままなのを願おう。
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