魔☆かるちゃ~魔王はこたつで茶をすする~

浜柔

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100~106

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【100.おっぱい】
 襲撃者5人の動きは完全に止まった。それを見定めたオリエは、鍛練で火照った身体の熱を冷まそうと、おもむろに着ぐるみパジャマを脱ぎ始める。
 胸元が露わになり、おっぱいがまろび出るに至っては5人の表情が驚愕に染まった。

「人間!?」
「裸!?」
「どうして脱ぐ!?」
「おっぱい!」
「ちょっと、あんた!」

 最後の声は「おっぱい!」と叫んだ男に対するものであった。
 ともあれ、若干おかしな声が上がりはしたが、人だったことに驚いたのは一瞬で、次の瞬間にはすっぽんぽんになったことの方により驚愕したらしい。こんなダンジョンの奥深くで誰が無防備を晒すだろうか。
 オリエはその限りではないのだが。

「人にいきなり襲い掛かってはいけません!」

 オリエは空気を読まずに5人を叱り付けた。



【101.罪な女】
 漸くではあったが、襲撃者5人はオリエに反撃の意思が無いのを悟り、戦闘態勢を解いた。
 そして改めてまじまじとオリエを見やる。

「どこかで見たような……」
「あのおっぱい……、まさか、オリエ・ホークライツ?」
「どこ見て言ってるのよ、もう!」
「いや、だってほら……」
「どうして顔じゃないのよ!?」

 若干痴話喧嘩も始まったようだ。オリエは罪な女である。

「そんなことより、確かにオリエ・ホークライツだわ」
「死んだって聞いたぞ?」
「勝手に殺さないで!」

 死んだことにされていたらしいオリエは思わず叫んで、ちょっと涙目になった。



【102.噂】
「だって、ほら……」

 男達は語った。気まずくなってずっと天井を見詰める者、チラチラとだけ視線をやる者、オリエの裸身を凝視する者と、振る舞いはそれぞれだ。
 オリエはダンジョン傍の町では有名だった。そりゃそうだ。腕っ節なら町で、いやさ国でも最強だ。おまけにビキニアーマーだけで彷徨く女など、他には居ない。だから嫌でも目に止まる。
 そのオリエの最後の目撃情報ががダンジョンに入るところだったのだから、死んだと思われ、そう噂されても止む無しであろう。

「うみゅ……」

 オリエは理由を聞かされて口を波打たせた。反論のしようもない。



【103.大丈夫】
「もう! 話はいいですから、早く何か着てください!」

 長々と話すオリエと男達に痺れを切らしたヒーラーの女が叫んだ。
 こんなダンジョンの奥深くで、場違いに見える裸身は見ている方が恥ずかしいらしい。

「誰も見ていないから大丈夫よ?」

 オリエは平然と返した。

「わたし達が見てます!」
「おお! それは気付かなかった!」

 オリエはポンと手を叩いた。

「でもわたしは気にならないから大丈夫よ」

 えっへんと胸を張るオリエのおっぱいがぷるんと揺れた。



【104.あたしだけにして】
「全然大丈夫じゃありません!」
「いやいや、本人が大丈夫だって言ってるんだからこのままでもいいだろ」

 叫ぶヒーラーに、ハンターの男が反論した。

「あんたが見たいだけでしょ!」
「勿論だとも!」

 直ぐさま魔法使いの女が突っ込みを入れるが、ハンターの男は胸を張る。端から凝視していただけのことはある。

「そんなに見たいならあたしが見せてあげるから、見るのはあたしだけにして!」

 魔法使いは「しまった」と手で口を塞ぐが、もう遅い。集中する皆の視線に堪えかねて、首を引っ込めた。



【105.前のめり】
「そ、それじゃ、早速!」

 ハンターは前のめりだ。

「こんな所で見せられる訳ないでしょ!」
「そりゃそうだ」
「当然ですわ」
「がっつくんじゃねぇよ」

 魔法使いが胸を掻き抱きながら叫ぶのに、他のメンバーも頷きながら同意する。

「いや、でもよ?」

 反論しかけたハンターではあったが、仲間の少々白い視線に声を詰まらせた。
 しかし魔法使いは消沈するハンターを少し憐れに思ったらしい。

「もう! 二人っきりになったらだからね!」
「お、おう!」

 魔法使いが真っ赤になりつつ言い放つと、ハンターは喜びの声を上げた。



【106.お見通し】
 パン、パン。

 ヒーラーがめんどくさそうに手を叩く。

「ラブコメはその辺にしてください」
「そうだぜ? そんなことより、オリエ・ホークライツだ。ゆっくり堪……」
「そうです。彼女がどうしてここに居るの……。え? たん?」

 ヒーラーの言葉を剣士が引き継ぎ、それをまたヒーラーが被せたところでヒーラーが何かに気付いた。
 しかし剣士は「これはまずい」とはぐらかす。最初はずっと視線を逸らせていた彼もオリエの裸身に惹かれない訳ではないのだ。

「たん……、そう探索だ。ゆっくり探索していたんだろうなって」

 堪能と言い掛けたことはおくびにも出さない。
 ヒーラーは疑わしげな視線を送るが、追及はしないようだ。

「堪能するのは話をする間にしていてください」

 咳払いをするヒーラーにはお見通しであった。
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