魔☆かるちゃ~魔王はこたつで茶をすする~

浜柔

文字の大きさ
55 / 1,641

380~383 呪い

しおりを挟む
【380.あたしよ】
 新しい肉体を自らまさぐり倒している間に夕食の時間となり、魔法使いは居間に向かう。部屋を出た時、ちょうどヒーラーも部屋を出たところだった。

「セヒイラ」

 呼ばれて振り向いたヒーラーは目を剥き、後退った。仲間しか居ない筈の場所に見知らぬ女が全裸で立っていればびっくりもする。

「だ、誰!?」
「あたしよ。マホ」
「え!? マホ!?」

 ヒーラーは両手で両頬を押し潰すようにする。確かに声は魔法使いのものだ。

「でもその身体!? でもどうして裸!? え!? えっ!? ええっ!?」
「箱庭の交換品でこの身体を手に入れたのよ。どう? イヤらしいでしょ?」

 魔法使いはヒーラーに近付いて、ヒーラーの手を取って自らの胸に押し付ける。

「イ、イヤらしい……」

 ヒーラーはあまりに動転して、焦点の定まらない目で無意識に魔法使いのおっぱいを揉みしだいた。



【381.呪いが】
 されどヒーラーはハッと我に返り、魔法使いから距離を取る。

「ふふふふふ、服を着てください!」
「着れないのよ」
「どどどどど、どうして!?」
「服が着れない呪いが掛かってるの」
「ええええええっ!? そんな呪いがあるものですか!?」
「あるのだから仕方ないじゃない。それに呪いが無くても、あたしの手許に有る服にこの身体は入らないわ」
「ぐ……、た、確かに……」

 ヒーラーが見ても魔法使いの肉体は明らかに今までよりボリュームがある。着てもぴっちぴちを通り過ぎるだろう。

「ちょちょちょ、ちょっと待っていてください!」

 ヒーラーはあたふた自分の部屋に戻って下着と服を持ち出して、魔法使いに突き付けた。

「わたしのなら入ると思います!」

 ヒーラーの服のサイズは魔法使いより大きいのだ。



【382.霧のように】
 ヒーラーのあまりなまでの真剣な眼差しに、魔法使いはその顔を立てて言われた通りに下着に脚を通す。悩ましげに身体をくねらせながら両脚に通して引き上げる。
 しかし穿いた途端、下着が霧のように解けて消えた。

「ええっ!? そんな筈は! じゃあ、これを着てください!」

 差し出したのはスウェット。最近のヒーラーの愛用の部屋着だ。オリエが着ぐるみパジャマを愛用しているのと同じく、着心地優先で、仲間からダサいと言われたりする。
 魔法使いは何も言わずに袖を通した。
 しかしまたも霧のように解けて消える。
 慌てて部屋に取って返したヒーラーはシーツを引っ掴んでまた戻る。

「せめてこれを身体に巻いてください!」

 魔法使いはまた何も言わずにシーツを身体に巻き付ける。
 しかしこれもまた霧のように解けて消えた。

「何てこと!」

 ヒーラーは悲壮な顔をして両手で両頬を押し潰すようにした。
 その一方で魔法使いは自らの首を抱くようにして恍惚とした表情を浮かべる。

「ああ……、何て呪いなのかしら……」



【383.解呪】
「か、解呪しましょう!」

 呪いとは付与型の攻撃魔法だ。中でも持続的な攻撃をする魔法を指す。
 ヒーラーはその呪いを解く解呪魔法を魔法使いに向けて唱える。
 そしてまた下着を用意した。

「さあ、穿いてみてください!」

 更に扇情的に身体をくねらせながら下着に脚を通す魔法使い。
 果たして今度もまた下着は霧のように解けて消えた。

「そんな!」

 ヒーラーは項垂れた。力不足を感じた。
 しかし真実は違う。呪いなんて掛かってないのだ。魔王が呪いの演出で魔法使いが着たものを毎度分解しているだけだから。無い呪いが解ける筈もないのである。
 そんな事情をヒーラーは勿論知らない。
 そんなヒーラーに魔法使いは顔を寄せ、ねっとりした口調で言う。

「ね? 解ったでしょう?」

 ヒーラーは口をへの字に曲げた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー
ファンタジー
 ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。  これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。 設定 この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。 その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

処理中です...