魔☆かるちゃ～魔王はこたつで茶をすする～

１５２８．袖

　ダンジョンの入口を中心にして広がる町は最近の発展が著しい。
　無論これはダンジョン第３階層の変化に応じたものだ。
　だが発展があまりに急激なため、目先の費用が増えて財政がかなり厳しい。
　税収は年明けを待つので発展に応じた増収分は次年度にしか反映されないのだ。
　だから今は捕虜護送の費用など出す余裕が無い。
　それでも出さねばならぬので赤字公債もやむなしだ。
　ただ費用面はまだ調達の見込みがある分だけマシだった。
　剣士の機嫌を損ねてしまったために護送要員に猟師を雇うのが難しい。
　動かせるとしたら警官のみ。
　だが警官も人員が余っていない上、兵士の護送には力不足に違いない。

「どうせだめならホームレスでも雇うか」

　景気の良さそうだからとこの町まで来たもののダンジョンでの狩りにも馴染めないままホームレス暮らしをする者も居る。
　そんな彼らに仕事を割り振ろうと言う訳だ。
　迷案の可能性を秘めていても無い袖は振れないのだった。