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51 雨のため延期
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塩を調達した翌日の日曜日。市場も休みだし、材料も揃ってるので、豆腐作りをしようじゃないか。
油を絞った滓が材料なせいで、何か一味足りない感じなのは否めない。だけどここ1年で口にした豆腐は全部これだ。もう馴れてしまった。いつかこの味が普通になってしまうのかも。
苦汁を投入する時以外は、そんな感慨に耽ったり、考え事をする余地が有るのだった。
作った豆腐は2種類。1つは普通の木綿豆腐で、味噌汁にでもしよう。もう1つはかなり濃くしたもの。この後で揚げて、厚揚げと油揚げにする。
手間が掛かって油も多く使う厚揚げや油揚げは、自分で食べるだけだったら作る気になれない。だけど今回は、手土産用なのだ。持って行く先は勿論純三さん。醤油、味噌、鰹節を自作しているくらいだから、他にも何か作っているんじゃないかと睨んでいる。
だって、その3品じゃ生活が成り立たないよね。醤油と味噌は下町から外に出てないってことだから、大した収入にはならない筈。鰹節なんてもう買うのはきっとあたしくらい。だから他に何か、もっとこの世界の人に売れる物を作っているんじゃないかな?
それが何か、少し口を軽くして貰うための手土産なのだ。
『こんにちはー! 純三さん、いらっしゃいますかー!?』
『開いてるよー!』
外から呼び掛けたら、直ぐに返事が来た。
中に入れば、直ぐに純三さんが目に入った。水回りを除いたら寝室兼用の部屋が1つ有るだけの家だからね。
『こんにちは。これは、お裾分けです』
あたしは持って来た鍋の蓋を開けた。
『ほお、豆腐に厚揚げに油揚げか』
『すいませんが、お皿を2つ貸して貰えますか?』
『ちょっと待っててくれ』
純三さんは足早にお皿を持って来た。そのお皿にあたしが豆腐などを移す度に純三さんの頬が緩む。気に入って貰えて何よりだ。
もう1つのお皿には自作の塩を盛る。
『塩と苦汁を自作したのか?』
『はい』
『俺も苦汁を自作しようと思ったことも有ったんだが、燃料代が洒落にならないのが判って止めたんだ』
『魔法は使わないんですか?』
『残念ながら、魔法を維持するするのが難しくてな』
『そうなんですか……』
火力調整思いのままなあたしの方が特殊っぽい?
『それで、今日の本来の目的は?』
『判りますか?』
『そりゃそうさ。幾ら同じ日本人だからって、こんなおっさんの所に若い娘が用も無く近寄る筈があるまい?』
『あはは……』
思わず目を泳がせてしまった。
純三さんは肩を竦めて苦笑いをした。
『実は2つ有りまして、1つは、味噌と醤油と鰹節の他に何か作られていないかと』
『何故、そう思った?』
『味噌と醤油を売るだけでは生活費が賄えないんじゃないかと』
『正解だ。他には日本酒と米酢と芋焼酎を作っている。主に生活費になっているのは日本酒と芋焼酎だな』
『お酒でしたか』
『冒険者には大酒飲みが結構多くてな。焼酎が特に売れる』
『えーと、それで、米酢と日本酒を譲って頂けるでしょうか?』
『構わんぞ』
あたしは、持って来た空の壺を2つ取り出した。容量は1リットルくらい。
純三さんはと言うと、傍に有った麻袋に腕を突っ込んで壺を取り出した。
『あ、あの! その麻袋はぺっちゃんこでしたよね!?』
『あ、これか? これはアイテムボックスをカモフラージュしているだけだ。つい習慣でな』
純三さんは、今度は何も無い所に腕を突っ込んでもう1つ壺を取り出した。
腕が消えた!
『お宅……、驚いているのが丸判りだな』
生暖かく見られた!
『その……、お恥ずかしい……』
『それはいいんだが……、そっか、お宅はアイテムボックスを持ってないんだったか』
『はい』
『だったら驚きもするだろうな』
純三さんは納得したように頷いて、あたしが出した壺に米酢と日本酒を移してくれた。
『それで、お代は幾らになるでしょう?』
『どちらもリットルに換算すると、1リットルで500ゴールドだが、今回だけはサービスだ』
『あ、ありがとうございます!』
にへら。
顔が緩んだら、肩を竦められた。あたしは表情が顔に出すぎらしい。
『調味料が欲しければ、ウスターソースとトマトケチャップも作れるぞ』
『ほんとですか!?』
『嘘を言ってどうする』
『嘘だと言ってるんじゃなくて、欲しいです!』
『じゃあ、作っておいてやるよ。次の日曜日にでも取りに来てくれ』
『はい!』
おっと、ちょっと興奮してしまった。少し息を整えよう。
『だけど、どうして醤油だとか、日本酒だとか、ケチャップだとかの作り方をご存じだったんですか?』
『醤油や日本酒は、発酵に興味を持って作り方を調べたことがあったからだな』
『興味ですか?』
『ああ、誰でも一度くらい作り方が気になるものだろ?』
『いえ、そう言うことは全く……』
小首を傾げた。
『そうなのか?』
『えーと、まあ、興味を持たなかったのはあたしだけかも知れませんし……』
『そうなのか……』
純三さんは口をへの字に曲げた。
『それで、ケチャップとかは?』
『ケチャップとソースは魔眼のお陰だ』
『それは、またどうして?』
『この世界に来た時に持っていたコンビニ弁当に、ソースとケチャップが付いていたもんでな。魔眼を使えば原材料と分量が判るから、後は少し試行錯誤だ』
『魔眼って凄いですね』
『毒を避けられたりもして便利ではあるな』
『少し、羨ましいです』
『隣の芝は青いだけかも知れんぞ』
『そうでしょうか?』
『ああ。そんなことより、もう1つは何だ?』
『あ、そうでした。これです』
あたしはもう1つの麻袋を開けて見せた。
『塩?』
『はい。塩蟲が残したものです』
『塩蟲って……、まさか倒したのか?』
『はい』
『驚いたな。それで、その塩をどうしたいんだ?』
『これが食用になるものなのかと』
『ふーん。どれ……』
純三さんは睨むように麻袋の中の塩を見た。みるみる眉間に皺が寄る。
『駄目だな、これは』
『やっぱり駄目でしたか』
『ああ。鉛、カドミウム、ヒ素と言った毒性の強い元素が結晶になって混じっている。他にも色々毒になるものが混じっているな。量が少ないから少し口にしたくらいなら中毒にならないが、食べ続けるのは危険だ』
『それを聞いて踏ん切りが付きました』
『は?』
『塩蟲を倒してしまった後、残っている塩をそのままにするのが勿体ないのかな、とか頭を過ぎったもので』
『いやいやいや、勿体なくないから』
純三さんは、思いっきり首と手を横に振った。
『ですよねー』
もし大丈夫だったら、塩蟲を倒して塩を採った方が早いかな、とか、まあ、その、ね……。
純三さんの家を出た後は、一旦自宅に戻って荷物を置いてから荒野に行く。間違って使わないように、塩蟲が残した塩を捨ててしまおうってこと。
適当な場所にばら撒いて、他の塩蟲が出て来るのを確認してから帰宅する。
夕食の厚揚げの煮物はとても美味しかった。
◆
9月27日の月曜日。いよいよ開店だ! ……と思ったら生憎の雨模様。それでも一応、市場に行ってみたけど、当然のように人通りが少ない。これでは開店してもお客さんが来そうにない。開店は延期しよう。
これで気付いたけど、雨の対策は必要だよね……。クーロンスに住んでいた時は、食材を買うのと配達をするのに出掛けるだけだったから、少しくらい濡れても大丈夫だった。店に戻れば直ぐに乾かせたから。だけどここじゃ、自宅で作った商品を運ぶ間に濡れてしまう。人目を考えたら乾かせないので、濡れたまま店番をすることになる。さすがにそんなのは避けたい。雨合羽が欲しい。
ところが、通り掛かった人は誰も雨具を使っていない。これじゃ、傘さえ売られているか怪しいし、売られていても高そう。自作を考えた方がいいのかも。って、あたしには作れそうにないんだよなぁ。やっぱり誰かに相談するのがいいよね。
勿論、雨具が無くても魔法を使えば雨を避けることはできる。だけど、頭の上に水の塊が浮いていたり、あからさまに雨が避けて落ちたりしていたら目立つ。雨の中を歩いているのに全く濡れなかったりしてもね。だから雨避けに魔法を使うのは、この際無しなのだ。
『こんにちはー! 純三さん、いらっしゃいますかー!?』
『開いてるよー!』
外から呼び掛けたら、今日もまた直ぐに返事が来た。
『こんな雨の中、何か有ったのか?』
『いえ、雨合羽が欲しいんですが、自作するにしても防水をどうすればいいのか判らなくて……。ご存じありませんか?』
『なるほど。それじゃ、これを売ってあげよう』
純三さんはアイテムボックスから反物のように巻いた布を取り出した。かなり巻が長い。
それにしても、割と何でも有りな人だ。
『これは、森に生えている渋蔓から採った渋で染めた布だ』
『渋ですか?』
『柿渋は知っているだろう?』
『はい』
『要は、それと同じだ』
『なるほど』
『これならそこそこ水を弾くから、雨合羽にすることもできるだろう』
『それで、お幾らですか?』
『5万ゴールドだ』
布の広さを考えれば、元々の布代くらいだろうことは判る。だけど、そんなには要らない。
『1着分だけでいいんですが……』
『そう言わずに、買ってくれ』
『何故ですか?』
『そりゃ、在庫がだぶついているからだ』
『そんなに有るんですか?』
『有る。同じものが、もう20巻は有る』
『なんで、そんなに染めたんですか?』
『勢いで?』
『あたしに聞かないでください』
『まあ、少々懐も寂しいもんで、助けると思って、頼む』
『判りました……』
結局、あたしは布を1巻買った。あたしの純三さんへの評価が少し低下したのは言うまでもない。思ったよりポンコツだったと言う意味でだけど。
自作の雨合羽はフード付きの貫頭衣みたいな感じ。縫い目がかなりガタガタで、残念な作りになってしまっている。裁縫のスキル不足の影響は甚大だった。
自己評価が低下したのは言うまでもない。
油を絞った滓が材料なせいで、何か一味足りない感じなのは否めない。だけどここ1年で口にした豆腐は全部これだ。もう馴れてしまった。いつかこの味が普通になってしまうのかも。
苦汁を投入する時以外は、そんな感慨に耽ったり、考え事をする余地が有るのだった。
作った豆腐は2種類。1つは普通の木綿豆腐で、味噌汁にでもしよう。もう1つはかなり濃くしたもの。この後で揚げて、厚揚げと油揚げにする。
手間が掛かって油も多く使う厚揚げや油揚げは、自分で食べるだけだったら作る気になれない。だけど今回は、手土産用なのだ。持って行く先は勿論純三さん。醤油、味噌、鰹節を自作しているくらいだから、他にも何か作っているんじゃないかと睨んでいる。
だって、その3品じゃ生活が成り立たないよね。醤油と味噌は下町から外に出てないってことだから、大した収入にはならない筈。鰹節なんてもう買うのはきっとあたしくらい。だから他に何か、もっとこの世界の人に売れる物を作っているんじゃないかな?
それが何か、少し口を軽くして貰うための手土産なのだ。
『こんにちはー! 純三さん、いらっしゃいますかー!?』
『開いてるよー!』
外から呼び掛けたら、直ぐに返事が来た。
中に入れば、直ぐに純三さんが目に入った。水回りを除いたら寝室兼用の部屋が1つ有るだけの家だからね。
『こんにちは。これは、お裾分けです』
あたしは持って来た鍋の蓋を開けた。
『ほお、豆腐に厚揚げに油揚げか』
『すいませんが、お皿を2つ貸して貰えますか?』
『ちょっと待っててくれ』
純三さんは足早にお皿を持って来た。そのお皿にあたしが豆腐などを移す度に純三さんの頬が緩む。気に入って貰えて何よりだ。
もう1つのお皿には自作の塩を盛る。
『塩と苦汁を自作したのか?』
『はい』
『俺も苦汁を自作しようと思ったことも有ったんだが、燃料代が洒落にならないのが判って止めたんだ』
『魔法は使わないんですか?』
『残念ながら、魔法を維持するするのが難しくてな』
『そうなんですか……』
火力調整思いのままなあたしの方が特殊っぽい?
『それで、今日の本来の目的は?』
『判りますか?』
『そりゃそうさ。幾ら同じ日本人だからって、こんなおっさんの所に若い娘が用も無く近寄る筈があるまい?』
『あはは……』
思わず目を泳がせてしまった。
純三さんは肩を竦めて苦笑いをした。
『実は2つ有りまして、1つは、味噌と醤油と鰹節の他に何か作られていないかと』
『何故、そう思った?』
『味噌と醤油を売るだけでは生活費が賄えないんじゃないかと』
『正解だ。他には日本酒と米酢と芋焼酎を作っている。主に生活費になっているのは日本酒と芋焼酎だな』
『お酒でしたか』
『冒険者には大酒飲みが結構多くてな。焼酎が特に売れる』
『えーと、それで、米酢と日本酒を譲って頂けるでしょうか?』
『構わんぞ』
あたしは、持って来た空の壺を2つ取り出した。容量は1リットルくらい。
純三さんはと言うと、傍に有った麻袋に腕を突っ込んで壺を取り出した。
『あ、あの! その麻袋はぺっちゃんこでしたよね!?』
『あ、これか? これはアイテムボックスをカモフラージュしているだけだ。つい習慣でな』
純三さんは、今度は何も無い所に腕を突っ込んでもう1つ壺を取り出した。
腕が消えた!
『お宅……、驚いているのが丸判りだな』
生暖かく見られた!
『その……、お恥ずかしい……』
『それはいいんだが……、そっか、お宅はアイテムボックスを持ってないんだったか』
『はい』
『だったら驚きもするだろうな』
純三さんは納得したように頷いて、あたしが出した壺に米酢と日本酒を移してくれた。
『それで、お代は幾らになるでしょう?』
『どちらもリットルに換算すると、1リットルで500ゴールドだが、今回だけはサービスだ』
『あ、ありがとうございます!』
にへら。
顔が緩んだら、肩を竦められた。あたしは表情が顔に出すぎらしい。
『調味料が欲しければ、ウスターソースとトマトケチャップも作れるぞ』
『ほんとですか!?』
『嘘を言ってどうする』
『嘘だと言ってるんじゃなくて、欲しいです!』
『じゃあ、作っておいてやるよ。次の日曜日にでも取りに来てくれ』
『はい!』
おっと、ちょっと興奮してしまった。少し息を整えよう。
『だけど、どうして醤油だとか、日本酒だとか、ケチャップだとかの作り方をご存じだったんですか?』
『醤油や日本酒は、発酵に興味を持って作り方を調べたことがあったからだな』
『興味ですか?』
『ああ、誰でも一度くらい作り方が気になるものだろ?』
『いえ、そう言うことは全く……』
小首を傾げた。
『そうなのか?』
『えーと、まあ、興味を持たなかったのはあたしだけかも知れませんし……』
『そうなのか……』
純三さんは口をへの字に曲げた。
『それで、ケチャップとかは?』
『ケチャップとソースは魔眼のお陰だ』
『それは、またどうして?』
『この世界に来た時に持っていたコンビニ弁当に、ソースとケチャップが付いていたもんでな。魔眼を使えば原材料と分量が判るから、後は少し試行錯誤だ』
『魔眼って凄いですね』
『毒を避けられたりもして便利ではあるな』
『少し、羨ましいです』
『隣の芝は青いだけかも知れんぞ』
『そうでしょうか?』
『ああ。そんなことより、もう1つは何だ?』
『あ、そうでした。これです』
あたしはもう1つの麻袋を開けて見せた。
『塩?』
『はい。塩蟲が残したものです』
『塩蟲って……、まさか倒したのか?』
『はい』
『驚いたな。それで、その塩をどうしたいんだ?』
『これが食用になるものなのかと』
『ふーん。どれ……』
純三さんは睨むように麻袋の中の塩を見た。みるみる眉間に皺が寄る。
『駄目だな、これは』
『やっぱり駄目でしたか』
『ああ。鉛、カドミウム、ヒ素と言った毒性の強い元素が結晶になって混じっている。他にも色々毒になるものが混じっているな。量が少ないから少し口にしたくらいなら中毒にならないが、食べ続けるのは危険だ』
『それを聞いて踏ん切りが付きました』
『は?』
『塩蟲を倒してしまった後、残っている塩をそのままにするのが勿体ないのかな、とか頭を過ぎったもので』
『いやいやいや、勿体なくないから』
純三さんは、思いっきり首と手を横に振った。
『ですよねー』
もし大丈夫だったら、塩蟲を倒して塩を採った方が早いかな、とか、まあ、その、ね……。
純三さんの家を出た後は、一旦自宅に戻って荷物を置いてから荒野に行く。間違って使わないように、塩蟲が残した塩を捨ててしまおうってこと。
適当な場所にばら撒いて、他の塩蟲が出て来るのを確認してから帰宅する。
夕食の厚揚げの煮物はとても美味しかった。
◆
9月27日の月曜日。いよいよ開店だ! ……と思ったら生憎の雨模様。それでも一応、市場に行ってみたけど、当然のように人通りが少ない。これでは開店してもお客さんが来そうにない。開店は延期しよう。
これで気付いたけど、雨の対策は必要だよね……。クーロンスに住んでいた時は、食材を買うのと配達をするのに出掛けるだけだったから、少しくらい濡れても大丈夫だった。店に戻れば直ぐに乾かせたから。だけどここじゃ、自宅で作った商品を運ぶ間に濡れてしまう。人目を考えたら乾かせないので、濡れたまま店番をすることになる。さすがにそんなのは避けたい。雨合羽が欲しい。
ところが、通り掛かった人は誰も雨具を使っていない。これじゃ、傘さえ売られているか怪しいし、売られていても高そう。自作を考えた方がいいのかも。って、あたしには作れそうにないんだよなぁ。やっぱり誰かに相談するのがいいよね。
勿論、雨具が無くても魔法を使えば雨を避けることはできる。だけど、頭の上に水の塊が浮いていたり、あからさまに雨が避けて落ちたりしていたら目立つ。雨の中を歩いているのに全く濡れなかったりしてもね。だから雨避けに魔法を使うのは、この際無しなのだ。
『こんにちはー! 純三さん、いらっしゃいますかー!?』
『開いてるよー!』
外から呼び掛けたら、今日もまた直ぐに返事が来た。
『こんな雨の中、何か有ったのか?』
『いえ、雨合羽が欲しいんですが、自作するにしても防水をどうすればいいのか判らなくて……。ご存じありませんか?』
『なるほど。それじゃ、これを売ってあげよう』
純三さんはアイテムボックスから反物のように巻いた布を取り出した。かなり巻が長い。
それにしても、割と何でも有りな人だ。
『これは、森に生えている渋蔓から採った渋で染めた布だ』
『渋ですか?』
『柿渋は知っているだろう?』
『はい』
『要は、それと同じだ』
『なるほど』
『これならそこそこ水を弾くから、雨合羽にすることもできるだろう』
『それで、お幾らですか?』
『5万ゴールドだ』
布の広さを考えれば、元々の布代くらいだろうことは判る。だけど、そんなには要らない。
『1着分だけでいいんですが……』
『そう言わずに、買ってくれ』
『何故ですか?』
『そりゃ、在庫がだぶついているからだ』
『そんなに有るんですか?』
『有る。同じものが、もう20巻は有る』
『なんで、そんなに染めたんですか?』
『勢いで?』
『あたしに聞かないでください』
『まあ、少々懐も寂しいもんで、助けると思って、頼む』
『判りました……』
結局、あたしは布を1巻買った。あたしの純三さんへの評価が少し低下したのは言うまでもない。思ったよりポンコツだったと言う意味でだけど。
自作の雨合羽はフード付きの貫頭衣みたいな感じ。縫い目がかなりガタガタで、残念な作りになってしまっている。裁縫のスキル不足の影響は甚大だった。
自己評価が低下したのは言うまでもない。
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