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64 邪神の像
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「それにしても、魔物が全く襲ってこないってのは、どう言うことだ?」
「確かに変だな」
ドラムゴさんの呟きに応えるように他の3人が周りを見回した。だが、勿論のように魔物の姿は無い。
「えーと、多分80階くらいまでは出て来ないかと」
「何故だ?」
「これだけゆっくりだったら、魔物に逃げる時間が有るから?」
「魔物が逃げるなんて聞いたことが無いが……」
「魔法の本に書かれていたことだけど、魔力を発するものに対して著しく弱い魔物は魔力の元から逃げ、それ程弱くない魔物は逆に引き寄せられると言う法則じゃないかと」
「つまり、この階の魔物からすれば著しく魔力が強い相手が居るってことか?」
「あたしはそう理解しています」
「それじゃ、その魔力の元ってのは……」
「あたし。少し魔力を放出してます。魔物が来ない方が移動が楽だから」
「権力を持った奴が欲に目を眩ませるのも判る気がするよ……」
レクバさんのそんな言葉で締め括られてしまった。
まあ、人の場合は魔力より権力が強い人が寄ってくる感じなんだよね。そう考えたら、やっぱり人前で手の内を見せるのは良くないんだろうな。今後はもっと注意しなくちゃ。
休憩がてらの昼食。
「米ってのも美味いもんだな」
ただの塩むすびなのだけど、4人には好評だ。多分、迷宮補正とも言うべきものが加算されているからだと思う。普段が堅パンと干し肉だったのなら、柔らかい食事は余計に美味しく感じるに違いないもの。
「隠し部屋でもないのに、こんなにのんびり飯が食えるってのも不思議な感覚だ」
魔物が避けて通るからね。
「そうね。滅多に有るものじゃないから、十分に楽しみましょう」
「おう」
昼食後はまた魔法での移動。途中で休憩を挟みながらも、夜までに81階に辿り着いた。
あたしだけは少し忙しかった。普段は4人の後ろに付いていて、魔物が出たら前に出て蹴り飛ばしたり、魔法で吹き飛ばしたりってしていたので、結構頻繁に止まったり走ったりになったのだ。
「見るのと聞くのとじゃ大違いだったな」
「代理人さんを見ていながら利用しようと考える連中が理解できないわ」
「ああ、前言を撤回しなきゃならん」
むぅ、少し気恥ずかしい。
迷宮に入って2日目の今日は、魔物が湧く壁の無い部屋で一夜を過ごした。
明けて3日目。今日からは、地図を作成しながらだから、ずっと徒歩になる。
ミクーナさんが探索魔法で通路を調べて地図を描いて、フォリントスさんが床や壁を探索して罠や隠し部屋が無いかを調べる。
目的は迷宮の最奥に行くことなので、次の階への通路や階段が見つかった時点でその階の探索はお終いになる。
それでも、1日に2階層か3階層進むのがやっと。野営の場所探しに1日の半分近く取られるせいも有るから。
90階辺りから魔物に襲われることも多くなって、あたしも忙しい。まあ、その分だけ大きな魔石も手に入るので、レクバさん達4人は元が取れると喜んでいたりするけれど。
そして迷宮に入って10日目。
「ここが最奥なのか?」
「ええ。それらしき部屋……、部屋って言っていいのかしら? まあ、とにかくそれはここ。台座らしきものも在るわ」
100階層は広大な大広間を中心に据えた構造のようだった。目的地はここに違いないのだ。
あたし達は部屋を覗き込む。
「何て数のドラゴンだ……」
レクバさんが言う通りにトカゲが群れになっている。いつかのトカゲより更に大きなトカゲ100匹くらいかな? レクバさん達も及び腰だ。
トカゲが首をもたげてこっちを見た。
「気付かれた!」
囁くような叫び声をレクバさんが上げた。即座に逃げる体勢に入る。
だけど不思議なことに、トカゲは気付いている様子なのに襲って来ない。
「襲って来ないわ」
「部屋から出られないのかも知れない」
「何かを守ってるのかもな」
「だったら、やっぱりここが最奥ってことになるな」
レクバさん達はそれっきり黙り込んだ。何か葛藤が有るみたい。
あたしは一歩前に出る。
「代理人さん……」
「任せて」
あたしは意外にも、いつかのトカゲの時より怖く感じない。群れな分だけ気持ち悪さはこっちの方が上だけど。
数も数だし、気持ちも悪いので魔法で攻撃する。風刃魔法、水刃魔法、火球魔法を何度か逆巻かせる。
トカゲがブレスを吐くより前に全滅させられた。
「凄いわ! 代理人さん!」
「あっと言う間に全滅か……」
ミクーナさんは歓声を上げて、レクバさん達男性は困惑した様子を見せた。
トカゲが魔石を遺して消えてから部屋に入る。台座の方に向かって歩きながら、レクバさん達は黙々と魔石を拾う。一つ一つの魔石が大きいから、全部は拾い切れない様子だ。
「冒険者、辞めるか……」
「本当なら一生掛かっても稼げないだけの魔石も貰っちまったからな。どこかに移住してのんびり暮らすのもいいんじゃないか?」
「だったら、クーロンスね!」
「そうだな。それもいい」
レクバさん達は今後のことを話しているらしい。あたしは彼らの話に首を突っ込まず聞き流すだけだ。
暫く歩いた先、大広間の中心より少し奥まった場所に台座は在った。おおよそ2メートル四方で高さが1メートルくらい。部屋の大きさに比べたらささやかな大きさだ。
台座の真ん中には高さ50センチくらいの像が立っている。天井まで20メートルくらいの部屋にぽつんと立っているから、とても小さく見える。
これが邪神の像なんだと思う。だけど奇妙なことに、小さいだけで形は人の姿そのもの。とても邪神には見えなくて、邪神って言うのが眉唾臭い。
この大きさで完成ってことも無いよね……。完成してたら邪神が復活、とまでは行かなくても、何かが起きてる筈だから。
足から順に形が出来て、最後に頭が出来たら完成ってことなら判りやすかったのにね。1000年の時を掛けて形作られるって話だったから、ちょっとずつ大きくなる感じ?
どこまで大きくなるんだろう? 予想でしかないけど、台座の大きさを考えたら5メートルくらい?
それで、その大きさまでには何年くらいかな? 今の50センチくらいの大きさになるまでにも50年や100年じゃ利かない時間が掛かってる筈だよね……。迷宮が産業として確立しているくらいだもの。だとしたら、急に大きくなったりしないなら、何千年も先?
何だ、邪神復活までには随分と余裕が有ったんじゃないか。
「また魔物だ!」
周囲を警戒していたレクバさんが叫んだ。
考えている間にお次が来てしまった。邪神ぽくないから忍びないけど、像を早く破壊してしまおう。迷宮が魔物を生み出していることに間違いは無いもの。
あたしは台座に乗って、思いっきり像を殴る。
硬!
今までに無い堅い感触がして、1回じゃ壊れなかった。
何度も殴れば壊せそうだけど、このまま殴り続けたらミクーナさん達が危ない。先に押し寄せて来ている魔物の掃討する。
それからまた像を殴る。2度3度と殴ったら罅が入った。ところがまた魔物がやって来る。
また先に掃討? いや……。
「後1発だけ!」
殴って壊れなかったら、また魔物を掃討をすればいい。
だから像を殴る。
その瞬間、像の全体が罅割れて粉々に砕けた。
それと一緒に、押し寄せて来ていた魔物達も魔石を残して消えて行く。レクバさんに噛み付こうとしていた魔物も、寸前で消えた。
「本当に消えた」
「目の当たりにしていても信じられん」
「だけど、消えて助かったわ」
「これで終わりでいいんだよな?」
「90階辺りから後は、ほんとにいつ殺されるかと冷や冷やしっぱなしだったからな……」
4人に弛緩した空気が流れる。座り込まないのは流石だ。
「さあ、魔石を回収したら戻りましょうか」
あたしは言った。ミクーナさん達は休みたいかも知れないけど、こんな場所に長居は無用だからね。
帰り道は早い。地図も有るし、魔物も出て来ない。途中で1泊しただけで、出口に辿り着いた。
「確かに変だな」
ドラムゴさんの呟きに応えるように他の3人が周りを見回した。だが、勿論のように魔物の姿は無い。
「えーと、多分80階くらいまでは出て来ないかと」
「何故だ?」
「これだけゆっくりだったら、魔物に逃げる時間が有るから?」
「魔物が逃げるなんて聞いたことが無いが……」
「魔法の本に書かれていたことだけど、魔力を発するものに対して著しく弱い魔物は魔力の元から逃げ、それ程弱くない魔物は逆に引き寄せられると言う法則じゃないかと」
「つまり、この階の魔物からすれば著しく魔力が強い相手が居るってことか?」
「あたしはそう理解しています」
「それじゃ、その魔力の元ってのは……」
「あたし。少し魔力を放出してます。魔物が来ない方が移動が楽だから」
「権力を持った奴が欲に目を眩ませるのも判る気がするよ……」
レクバさんのそんな言葉で締め括られてしまった。
まあ、人の場合は魔力より権力が強い人が寄ってくる感じなんだよね。そう考えたら、やっぱり人前で手の内を見せるのは良くないんだろうな。今後はもっと注意しなくちゃ。
休憩がてらの昼食。
「米ってのも美味いもんだな」
ただの塩むすびなのだけど、4人には好評だ。多分、迷宮補正とも言うべきものが加算されているからだと思う。普段が堅パンと干し肉だったのなら、柔らかい食事は余計に美味しく感じるに違いないもの。
「隠し部屋でもないのに、こんなにのんびり飯が食えるってのも不思議な感覚だ」
魔物が避けて通るからね。
「そうね。滅多に有るものじゃないから、十分に楽しみましょう」
「おう」
昼食後はまた魔法での移動。途中で休憩を挟みながらも、夜までに81階に辿り着いた。
あたしだけは少し忙しかった。普段は4人の後ろに付いていて、魔物が出たら前に出て蹴り飛ばしたり、魔法で吹き飛ばしたりってしていたので、結構頻繁に止まったり走ったりになったのだ。
「見るのと聞くのとじゃ大違いだったな」
「代理人さんを見ていながら利用しようと考える連中が理解できないわ」
「ああ、前言を撤回しなきゃならん」
むぅ、少し気恥ずかしい。
迷宮に入って2日目の今日は、魔物が湧く壁の無い部屋で一夜を過ごした。
明けて3日目。今日からは、地図を作成しながらだから、ずっと徒歩になる。
ミクーナさんが探索魔法で通路を調べて地図を描いて、フォリントスさんが床や壁を探索して罠や隠し部屋が無いかを調べる。
目的は迷宮の最奥に行くことなので、次の階への通路や階段が見つかった時点でその階の探索はお終いになる。
それでも、1日に2階層か3階層進むのがやっと。野営の場所探しに1日の半分近く取られるせいも有るから。
90階辺りから魔物に襲われることも多くなって、あたしも忙しい。まあ、その分だけ大きな魔石も手に入るので、レクバさん達4人は元が取れると喜んでいたりするけれど。
そして迷宮に入って10日目。
「ここが最奥なのか?」
「ええ。それらしき部屋……、部屋って言っていいのかしら? まあ、とにかくそれはここ。台座らしきものも在るわ」
100階層は広大な大広間を中心に据えた構造のようだった。目的地はここに違いないのだ。
あたし達は部屋を覗き込む。
「何て数のドラゴンだ……」
レクバさんが言う通りにトカゲが群れになっている。いつかのトカゲより更に大きなトカゲ100匹くらいかな? レクバさん達も及び腰だ。
トカゲが首をもたげてこっちを見た。
「気付かれた!」
囁くような叫び声をレクバさんが上げた。即座に逃げる体勢に入る。
だけど不思議なことに、トカゲは気付いている様子なのに襲って来ない。
「襲って来ないわ」
「部屋から出られないのかも知れない」
「何かを守ってるのかもな」
「だったら、やっぱりここが最奥ってことになるな」
レクバさん達はそれっきり黙り込んだ。何か葛藤が有るみたい。
あたしは一歩前に出る。
「代理人さん……」
「任せて」
あたしは意外にも、いつかのトカゲの時より怖く感じない。群れな分だけ気持ち悪さはこっちの方が上だけど。
数も数だし、気持ちも悪いので魔法で攻撃する。風刃魔法、水刃魔法、火球魔法を何度か逆巻かせる。
トカゲがブレスを吐くより前に全滅させられた。
「凄いわ! 代理人さん!」
「あっと言う間に全滅か……」
ミクーナさんは歓声を上げて、レクバさん達男性は困惑した様子を見せた。
トカゲが魔石を遺して消えてから部屋に入る。台座の方に向かって歩きながら、レクバさん達は黙々と魔石を拾う。一つ一つの魔石が大きいから、全部は拾い切れない様子だ。
「冒険者、辞めるか……」
「本当なら一生掛かっても稼げないだけの魔石も貰っちまったからな。どこかに移住してのんびり暮らすのもいいんじゃないか?」
「だったら、クーロンスね!」
「そうだな。それもいい」
レクバさん達は今後のことを話しているらしい。あたしは彼らの話に首を突っ込まず聞き流すだけだ。
暫く歩いた先、大広間の中心より少し奥まった場所に台座は在った。おおよそ2メートル四方で高さが1メートルくらい。部屋の大きさに比べたらささやかな大きさだ。
台座の真ん中には高さ50センチくらいの像が立っている。天井まで20メートルくらいの部屋にぽつんと立っているから、とても小さく見える。
これが邪神の像なんだと思う。だけど奇妙なことに、小さいだけで形は人の姿そのもの。とても邪神には見えなくて、邪神って言うのが眉唾臭い。
この大きさで完成ってことも無いよね……。完成してたら邪神が復活、とまでは行かなくても、何かが起きてる筈だから。
足から順に形が出来て、最後に頭が出来たら完成ってことなら判りやすかったのにね。1000年の時を掛けて形作られるって話だったから、ちょっとずつ大きくなる感じ?
どこまで大きくなるんだろう? 予想でしかないけど、台座の大きさを考えたら5メートルくらい?
それで、その大きさまでには何年くらいかな? 今の50センチくらいの大きさになるまでにも50年や100年じゃ利かない時間が掛かってる筈だよね……。迷宮が産業として確立しているくらいだもの。だとしたら、急に大きくなったりしないなら、何千年も先?
何だ、邪神復活までには随分と余裕が有ったんじゃないか。
「また魔物だ!」
周囲を警戒していたレクバさんが叫んだ。
考えている間にお次が来てしまった。邪神ぽくないから忍びないけど、像を早く破壊してしまおう。迷宮が魔物を生み出していることに間違いは無いもの。
あたしは台座に乗って、思いっきり像を殴る。
硬!
今までに無い堅い感触がして、1回じゃ壊れなかった。
何度も殴れば壊せそうだけど、このまま殴り続けたらミクーナさん達が危ない。先に押し寄せて来ている魔物の掃討する。
それからまた像を殴る。2度3度と殴ったら罅が入った。ところがまた魔物がやって来る。
また先に掃討? いや……。
「後1発だけ!」
殴って壊れなかったら、また魔物を掃討をすればいい。
だから像を殴る。
その瞬間、像の全体が罅割れて粉々に砕けた。
それと一緒に、押し寄せて来ていた魔物達も魔石を残して消えて行く。レクバさんに噛み付こうとしていた魔物も、寸前で消えた。
「本当に消えた」
「目の当たりにしていても信じられん」
「だけど、消えて助かったわ」
「これで終わりでいいんだよな?」
「90階辺りから後は、ほんとにいつ殺されるかと冷や冷やしっぱなしだったからな……」
4人に弛緩した空気が流れる。座り込まないのは流石だ。
「さあ、魔石を回収したら戻りましょうか」
あたしは言った。ミクーナさん達は休みたいかも知れないけど、こんな場所に長居は無用だからね。
帰り道は早い。地図も有るし、魔物も出て来ない。途中で1泊しただけで、出口に辿り着いた。
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