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じゅんちゃんへ
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今、10月8日午前4時です。
チャトラ猫の君が息をひきとって、ちょうど24時間経ちました。
じゅんちゃんへ
猫にはよくある病気だったけれど、腎不全になり、点滴のために3年間病院に通ったね。
ケージに入る前には大暴れして、お父さんは引っ掻かれたり汗だくでしたよ。
でも、すっかり元気になり、もりもり食べて、私たちは喜んでいたのです。
今年の9月ころからじっとしていることが多くなって、しんどそうだなあと、ずっと心配でした。
お薬をフードに混ぜると食べないし、困ってしまったのよ。
あの食欲が出るという耳に塗る高い薬も5回くらいしか効き目がなかったよね。
(あのじゅんが!)
って哀しかったよ。だって、あんなにやんちゃばかりしてたんだもの。
君は、10年前の春、お隣りの庭で生まれたんだ。
5人(匹)兄弟で、ご近所でなんとか引き取ろうと相談してね、おにいちゃんたちに踏みつけられるようにしていた君をうちへ連れて帰ったの。
ちょうど6月(JUNE)で、『じゅん』と名付けた。
震えて小さかった君は、いつの間にか、前から居る二人のおねえちゃんたちより大きくなり、追いかけまわし、嫌がられてたよね。
食いしん坊で、うっかり食べ物も置けなくなったんだよ。
備前焼きの壺を壊し、壁紙やカーテンもボロボロにした。その上、あちこちにおしっこかけて……でも、叱られなかったでしょ。
たったひとつ、おねえちゃんたちにいたずらしたときは別。
「ダメ! じゅん!」
「これ! じゅん!」
「また! じゅん!」
私の大きなカミナリが落ちたよね。
それなのに、病院へ行けば、ぶるぶる震えてちいさくなって。その内弁慶ぶりには笑ってしまったわ。
そうそう、ある朝、起きてきてダイニングへ入った私は目を見張ったの。食卓の下は、まるでカラフルなお花畑。たくさんのキャットフードの小袋を全部かじってまき散らしていたでしょ。
戸棚を閉め忘れた私が悪いんだけど。君も、さすがにこれはまずいと思ったのか隅でうずくまっていたね。
あのとき写真を撮っておかなかったのが悔やまれるわ。
家族の食事のとき
「ごはんよー」
って呼ぶと、誰よりも早く食卓に来た君。
「だめよ。じゅんちゃんのはこっちでしょ」
そう言っても私のおかずをねらっていた。君との攻防は果てしなく続いたね。
私が寝てると、ドーンとお腹の上に乗ってきた。しかもお尻を私の顔に向けて、気持ちよさそうに寝ていたよね。私はだんだんしびれてきたけど、あの君の重さが好きだった。
君は、やはり『アホ』だったよね。でも、ほら、よく言うでしょ『アホな子ほどかわいい』って。
ゾリゾリという音が聞こえそうなほど強い舌でなめてくれたこと、うふふ、思い出すわ。
じゅんちゃん、いつもいつも君の周りには笑い声が溢れていた。ありがとう。
何も食べることができなくなって、病院の先生はおっしゃったの。
「唯一の方法は毎日の点滴。でも治るわけではありません。ご家族でよく話し合って下さい」
と。
私たちは決めたんだ。もう病院へは行かないと。
スポイトの水も受け付けなくなって、ガリガリになり、じっと猫のベッドで横になっている君。
そっとなでることしかできなかった。
たくさんありがとう。
先に『虹の国』で暮らしているふみねえちゃんに出会えるかな。よろしく言ってよね。
お揃いの額にじゅんの写真も飾りましたよ。なかなかかっこいいのや赤ちゃんの時のかわいいのや、いくら眺めても飽きません。
一番年上のなつきねえちゃんが一人きりになって、ずっと私の傍にくっついています。
家の中がシーンとしてさびしいよお。
ではね、じゅんちゃん、
さようなら。
さようなら。
チャトラ猫の君が息をひきとって、ちょうど24時間経ちました。
じゅんちゃんへ
猫にはよくある病気だったけれど、腎不全になり、点滴のために3年間病院に通ったね。
ケージに入る前には大暴れして、お父さんは引っ掻かれたり汗だくでしたよ。
でも、すっかり元気になり、もりもり食べて、私たちは喜んでいたのです。
今年の9月ころからじっとしていることが多くなって、しんどそうだなあと、ずっと心配でした。
お薬をフードに混ぜると食べないし、困ってしまったのよ。
あの食欲が出るという耳に塗る高い薬も5回くらいしか効き目がなかったよね。
(あのじゅんが!)
って哀しかったよ。だって、あんなにやんちゃばかりしてたんだもの。
君は、10年前の春、お隣りの庭で生まれたんだ。
5人(匹)兄弟で、ご近所でなんとか引き取ろうと相談してね、おにいちゃんたちに踏みつけられるようにしていた君をうちへ連れて帰ったの。
ちょうど6月(JUNE)で、『じゅん』と名付けた。
震えて小さかった君は、いつの間にか、前から居る二人のおねえちゃんたちより大きくなり、追いかけまわし、嫌がられてたよね。
食いしん坊で、うっかり食べ物も置けなくなったんだよ。
備前焼きの壺を壊し、壁紙やカーテンもボロボロにした。その上、あちこちにおしっこかけて……でも、叱られなかったでしょ。
たったひとつ、おねえちゃんたちにいたずらしたときは別。
「ダメ! じゅん!」
「これ! じゅん!」
「また! じゅん!」
私の大きなカミナリが落ちたよね。
それなのに、病院へ行けば、ぶるぶる震えてちいさくなって。その内弁慶ぶりには笑ってしまったわ。
そうそう、ある朝、起きてきてダイニングへ入った私は目を見張ったの。食卓の下は、まるでカラフルなお花畑。たくさんのキャットフードの小袋を全部かじってまき散らしていたでしょ。
戸棚を閉め忘れた私が悪いんだけど。君も、さすがにこれはまずいと思ったのか隅でうずくまっていたね。
あのとき写真を撮っておかなかったのが悔やまれるわ。
家族の食事のとき
「ごはんよー」
って呼ぶと、誰よりも早く食卓に来た君。
「だめよ。じゅんちゃんのはこっちでしょ」
そう言っても私のおかずをねらっていた。君との攻防は果てしなく続いたね。
私が寝てると、ドーンとお腹の上に乗ってきた。しかもお尻を私の顔に向けて、気持ちよさそうに寝ていたよね。私はだんだんしびれてきたけど、あの君の重さが好きだった。
君は、やはり『アホ』だったよね。でも、ほら、よく言うでしょ『アホな子ほどかわいい』って。
ゾリゾリという音が聞こえそうなほど強い舌でなめてくれたこと、うふふ、思い出すわ。
じゅんちゃん、いつもいつも君の周りには笑い声が溢れていた。ありがとう。
何も食べることができなくなって、病院の先生はおっしゃったの。
「唯一の方法は毎日の点滴。でも治るわけではありません。ご家族でよく話し合って下さい」
と。
私たちは決めたんだ。もう病院へは行かないと。
スポイトの水も受け付けなくなって、ガリガリになり、じっと猫のベッドで横になっている君。
そっとなでることしかできなかった。
たくさんありがとう。
先に『虹の国』で暮らしているふみねえちゃんに出会えるかな。よろしく言ってよね。
お揃いの額にじゅんの写真も飾りましたよ。なかなかかっこいいのや赤ちゃんの時のかわいいのや、いくら眺めても飽きません。
一番年上のなつきねえちゃんが一人きりになって、ずっと私の傍にくっついています。
家の中がシーンとしてさびしいよお。
ではね、じゅんちゃん、
さようなら。
さようなら。
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