ぬいぐるみとの約束

misa

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内側に宿る輝き

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しろきつねが寄り添ってくれたとき、胸の奥で、そっと灯った光があった。

あの温もりを思い出した瞬間、指先の内側で、なにかが静かに揺れる気がする。

(あれは、わたしの中にあるもの……?)

わたしは胸に手を当てた。
心臓の鼓動が、少し早い。

ノアが横から覗き込み、にこっと笑う。

「その光、思い出せばいいんだ。シエルの中にちゃんとあるんだからさ」

「……うん」

グレイがわたしの正面に立ち、淡い光の差す空を一度見上げた。

「光は火とは違う。熱くもあるが、優しさをも持つ。迷えば消える。だが、信じれば、宿る」

わたしはゆっくり両手を胸の前で重ねる。

(消えない光……わたしの中に……)

しろきつねがくれた温もりを、誰かを救いたいと思ったあの気持ちを思い浮かべると、指先にふわりと、淡い光の玉が生まれた。

柔らかく、あたたかく、手のひらを照らしながら、ぽうっと浮かんでいる。

「……できた」

思わず見惚れてしまう。
けれどその光は、すぐにふらつき、弱々しく揺れた。

「まだだ」
グレイの声が近くで響く。

「光は想いで灯る。だが、迷えば、すぐに揺らぐ」

たしかに、怖いわけじゃない。
しろきつねが教えてくれたあの温もりを、信じているから。

でも…

(できなかったらどうしよう… 役に立てなかったら……)

小さな焦りが胸の底でざらりと揺れた瞬間、

ひゅ……。

掌の光が、影へと色を失いかける。

「おっと危ない」

ノアが隣で肩を軽く小突いた。

「シエル、見てよ。消えてないでしょ?」

「……え?」

言われて視線を落とす。

まだそこに、光はあった。
小さくても、確かに灯っていた。
 
ノアは口元をゆるっと上げ、軽く肩をすくめた。

「ほら、ちゃんと光ってるじゃん。シエルの中にある想いが、ちゃんと形になってるんだよ」

「だから大丈夫。無くならないよ、その光は」

ノアの尻尾が、ぽふんと弾む。
その何気ない仕草が、不安をそっと撫でてくれる気がした。

グレイが静かに頷き、わたしの両手を指先で示した。

「光は“想い”で満ちる。その強さは、迷いではなく願いが決める」

(願い……)

しろきつねが寄り添ってくれたあの瞬間。
暗い場所で、必死に誰かを求めたとき、誰かの手が欲しくて、あたたかさが欲しくて、あの光は生まれた。

心の中に残るあの温もりを確かめる。

(もう一度…あの光を)

両手をそっと重ねると、ふわり、淡い光が、また花開くように灯った。

先ほどよりも、少しだけ強く。

「……!」

ノアが目を丸くして、ぱっと笑う。

「見てみろよシエル!さっきより全然キレイだ!」

グレイはわずかに目を細め、言葉を落とす。

「悪くない。十分だ」

けれどその直後、グレイの目つきが鋭く変わった。

「だが、光は優しさだけではない」

風がわずかに揺れ、空気の温度が変わった気がした。

グレイは光を指先で弾くような仕草をしながら続けた。

「光には“照らす力”と“断つ力”がある。攻撃にも、守りにもなり得る理だ」

一歩、わたしに近づく。

「次は、動く敵に向かって撃て」

光が、攻撃に……?
胸が少し高鳴る。

ノアが横から励ます。

「大丈夫。僕がちゃんと見てる!」

わたしは大きく息を吸い、前にせり出した訓練用の木製人形を見据えた。

(導く光。守る光。前へ進む光)

両手を前に伸ばし、願いを込める。

「届け!」

ぱしゅっ!

光が線となり、まっすぐ前へ走る。
木人形の胸元に当たり、細かな輝きが散った。

「……!」

確かに刺さる光を放てた。

グレイが微かに口角を上げた。

「よし。次は強度を上げる」

試練は、まだまだ続く。

でも

(大丈夫。わたしは進める)

光は、もう揺れていないのだから。
 
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