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しおりを挟む「ただい……あ、そうだった」
部屋に戻ってきた壱衣は、ベッドの上に座る俺を見て慌てて寄ってきたかと思うと、乳首にぶら下がりっぱなしになっていたクリップを外してくれた。
ベランダへ出ていたような音がしていたからてっきり煙草でも吸ってきたのかと思ったけれど、戻ってきた彼から煙の臭いはしなかった。
そもそもこれまで煙草を吸っているところを見た事も無いけれど、だとしたらベランダへ何をしに行っていたんだろう。気分転換に外の空気を吸っていただけなのか。
寝室らしきこの部屋のカーテンは閉め切られていて、外が今どれくらい暗くなっているか分からない。この家に来てどれくらい時間が経ったっけ。
そろそろ宵の口だとすれば、外も少しは涼しくなってきた頃合いだろうか。
「ごめんね、完全に忘れてた。痛くない?」
腫れた感触のある先端をカサついた指に撫でられ、無意識に窓の方へ向いていた視線を壱衣へ戻す。挟む強さを緩くしてくれたおかげでほとんど痛みはなく、だから首を横に振って答えた。
「大丈夫。少しジンジンするけど、痛くはない」
「そっか。……あのね、今さらだけど、本当に嫌だったらそう言っていいんだからね。痛かったり苦しかったりしたらすぐ言って」
「分かってます」
薄っすら微笑みを浮かべた彼はもう、すっかりいつもの壱衣だ。気遣うように俺の肩を撫でると、ベッドに落とされたままだった縄を持ち上げた。
しゅる、しゅる、と歪みを解くように手繰るのを見て、もう一度縛り直すのかと見当をつけてベッドから降りようとすると片手で制される。
「横になって膝を立てて。今度は足を縛りたいから」
「はい」
ベッドに仰向けに倒れて両足を曲げると壱衣の手が俺の膝小僧を撫でて、その下のスネ毛を摘んで「意外と毛深いよね」としげしげと眺めてきた。
「普通……じゃないですかね」
「そうかな。こっちも結構濃い気がするけど」
言いながらくっ付けていた太腿の間に手を潜り込ませてこられて、思わず腰が跳ねる。もぞもぞと潜ってきた壱衣の冷たい指先は下腹に生える茂みを撫でて軽く引っ張ってくる。
「わ、分かんないです。あんま他人の股間とか凝視しないし」
「まあそうだよね。整えてる女の子と比べたらそりゃ濃く感じるか」
「……そうですよ」
何食わぬ顔で流しつつ、内心では思わぬ変化球に結構グサッときた。
生やしっぱなし伸ばしっぱなしなのを変だと思った事も無かったのだけど、次までには少し切り揃えておくべきか、なんて人生初めてシモの毛について悩んでしまう。
脚を割り開くように手で押してきた壱衣はそこに縄を回してきて、脚を折り畳んだまま固定するように真ん中辺りに二回し縄を掛け、片足ずつそれを終えると俺の手首を掴んで引いてきた。
「膝の頭を持ってて」
言う通りに両の掌で膝を覆うように掴むと脚を縛った縄が手首の少し下へ回されて、かなり緩めに輪にして括り付けられる。が、輪の中でスカスカと腕が動くほど輪が大きい。
膝の頭から手を離しギリギリ手首で引っ掛かるくらいか、と確認しながら首を傾げると、バチ、と指で陰茎を強めに弾かれた。
「イッた!」
「離していい、って言ったかな」
にこ、と微笑まれて、完全にいつもの彼に戻ったのを感じて口を閉じて膝頭に掌を戻す。
うーん、残念。
さっきまでの壱衣だったら強請ればまたキスしてくれそうだったけれど、今の彼ではもう無理そうだ。
「良いって言うまでずっとここを持って脚を開いてるんだよ」
見下ろしてくる壱衣の目に熱は無く、だから局部を晒すような格好でもそれほど恥ずかしさは感じない。
縛り終えたならまた鑑賞タイムだろうか、とぼんやり天井の方で視線を彷徨わせていると、壱衣は段ボール箱を抱えて床に置いて、それから床にぶち撒けた物を仕舞っているのかガサガサと音をさせた。
「壱衣?」
「うん。少し待ってね」
「はあ」
結構な数があったから目障りだったのだろう。大小様々なバリエーションのあったバイブや張り型を思い出して苦笑して、その直後にピリ、と包装を破る音が耳に入って嫌な予感に硬直する。
「……あの、壱衣」
「なに?」
「それ、片付けてるんですよね?」
「そうだね。使う物は決まったから、後は片付けるだけだよ」
「……」
「棗、ゴムアレルギーはある? あるならスキン着けるけど」
ベッドの下でゴソゴソしている壱衣の方へ視線を向けると、どうする? と言いながら真っ黒のバイブ片手に訊かれて顔を引き攣らせるしかない。
「つ……使う、ん、です、か」
「使うんですよ」
ぽい、とベッドの上に円柱形のボトルを投げられて、そこにでかでかと『アナル用ローション』と書かれているのを見て思わず視線を逸らした。
「……」
藍沢みたいな無体はされないと分かっていても、ソコにまた何か捻じ込まれるのだと考えるだけで逃げ出したくなる。やめてくれだとか考え直してくれだとか、情けない懇願を口にしそうになる唇を噛んで目を閉じる。
だって、さっき自分で言ったんだ。壱衣になら何をされてもいいって。
「棗、アレルギーは?」
「無いです」
膝を掴む指にぐっと力を込め、覚悟を決めるようにゆっくり深呼吸する。
大丈夫、たぶん壱衣は痛くしない。これを耐えればきっと彼の怒りも収まって、また前みたいな関係に戻れる。
基本的にお仕置きに興味無いって言ってたし、俺がボケた事をしなければもう二度とされずに済む。
じっと黙って待っていると、ぎし、とベッドが軋んで俺の足元が沈み込む心地がした。衣擦れの音と共に俺の素肌の上をTシャツの布地が滑ってきて、カサついた指に頬を撫でられて身体が跳ねた。
「そんなに怖がらないで」
瞼を開けると目の前に壱衣の顔があって、覆い被さるように上に乗られてきていて驚いた。
尻たぶをデニムの感触が擦って、ズボンを履いたままの壱衣の股間が狭間に当たって心臓がバクバク鼓動を速くする。履いてなければ、ソコに壱衣の逸物が押し付けられている筈だ。
硬いデニム生地の下では彼の肉がどうなっているのかまでは感じ取ることが出来ない。
「べ、つに……怖く、ないです」
「そう?」
微笑みを浮かべた壱衣は親指で俺の頬を撫でると一瞬顔を寄せてこようとして、けれど一度瞬きすると離れていった。
「痛かったら遠慮しないで言ってね」
ローションのボトルの蓋を開けて掌に出し、透明な粘液を指に纏わせると壱衣は躊躇なく俺の窄まりを指先で撫でてきた。
「……っ」
途端、ぞわ、と背中に嫌な汗をかく。またぎゅっと強く瞼を閉じた俺を心配してか、壱衣が「優しくするから」と小さく声を掛けてくる。
壱衣の指は皺の寄ったソコにローションを馴染ませるみたいに数度撫で、それからゆっくり埋まってきた。が、数センチも入らないうちに抜かれていって、それからまた縁を潤ませて入ってくる。
恐る恐るみたいなその動きに緊張が解けて、知らず詰めていた息を長く吐いた。
藍沢にされた行為と被る事なんか一個もない。
壱衣はどこまでも優しく、俺への気遣いは疑うまでもない。
俺の身体から力が抜けるとソコも緩むのか、壱衣の指も少しずつ深く入ってくるようになる。
目を開けると俺の開いた脚の間に座る壱衣と目が合って、不安げにしていた彼に笑みを作ってみせた。
「……んっ」
自分の狭間に視線を向けるとそこに埋まっていた壱衣の人差し指がゆっくり抜かれてくるのが見えて、思わず腰がうねる。
「ごめん、痛かった?」
「違う。大丈夫」
爪でも当たったかな、と慌てる壱衣に心配無いと首を横に振ると彼は俺の様子を注意深く観察するみたいにじっと見つめて、それからまた指を埋めてくる。
入ってきて、抜かれていって。
たった一本だ。たった一本がゆっくり動いているだけなのに、段々と俺の視界はふわふわしてきて、指が蠢くことで中を擦られる感覚が明確に気持ち良さだって感じ取れてくる。
「ん……っ、ふ……」
どこかが強烈に気持ちいいとか、そういうのじゃない。ただ、出入りされるだけで勝手に息が上がって腰が揺れる。
揺蕩うような生温い気持ち良さは陰茎に触れた時の気持ち良さとは全然違うのに、後ろを弄られているだけで前も反応して勃ち上がってきていた。
「二本目、入れるよ」
血を集めて膨らむ肉を見れば俺が痛がっていないのは明白で、だからか壱衣も少し強引に二本の指を挿入してきた。
「あ……っ」
ぐぐ、と開かれる感覚に高い声が出て、ハッとして慌てて唇を噛む。さすがに男の喘ぎ声は萎えるかもしれない、と壱衣を窺い見るけれど、彼は作業みたいに黙々と俺の窄まりに指を出し入れしていてホッとした。
二本の指が抜き挿しされるようになると気持ち良さが温いものから少し温度を上げて、ぶるぶると太腿が揺れる。
膝を掴んで開いたままにしている手に掛かった縄が腕が跳ねる度にギシギシと軋んで音を立てた。
「ん、んん」
中を指で擦られるのが気持ち良くて、指が抜けていくと追い掛けるみたいに腰が揺れる。もっと、と強請るみたいに腰を振っても壱衣は特に揶揄ってくることはなく、だから遠慮なく気持ち良さに没頭した。
「は、ぁ……、あっ、あぁぁ……っ」
指が三本になって、それがずっぽりと根本まで埋まってきてから中で指が内壁を擦るように動き出す。
腹の中を揉み込まれるような感覚に殺しきれなかった声が漏れて、口を閉じなきゃと思う暇もなく今度は三本で激しく抜き挿しされ始めて身悶えた。
「やっ、い、ち、壱衣っ、やめ、ゆっくり……っ」
さっきまで小さくぷちゅぷちゅと泡が潰れるような音しかしていなかったのに、急に早く動かされて窄まりからはごちゅごちゅと大きな水音が立つ。それでも痛みは全く無く、視界が白黒に明滅するくらい鮮やかな快感に背筋がしなった。
出し入れされるのが指から玩具になったら、これ以上の気持ち良さが与えられるのか。期待に思わず唾を飲んで、気持ち良さに閉じ掛けた太腿を壱衣の手が割り開かせてくる。
「開けてて。……ねぇほら、見て棗。ココ、僕の指飲み込んで美味しそうにもぐもぐしてる」
俺の手の上から膝を掴んで押されると自然と尻が上がって、丸めるみたいに俺の腰を浮かせた壱衣は自分の指が埋まった所を見せつけるようにしてから更に奥まで指を捻じ込んでくる。深くまで開かれると腹の中が熱くなって、もっと欲しがって勝手に腰が揺れる。
「あ……っ、ん、ん、壱、衣」
頭がクラクラ目眩みたいにぼやけて、気持ちいい事しか考えられない。荒っぽく抜き挿しされてももう気持ちいいばっかりで、腰が揺れる度に縄がギシギシと音を立てる。
頭の片隅に残る冷静な部分が、腕に縄が引っ張られて繋ぎ目で軋むこの音を聞く為にわざと緩くしてたのかと気付いた。
「はぁ、は……あ、あぁ、……ぁ」
壱衣の骨ばった長い指が俺の中を掻き回して、ずぼずぼと粘こい音をさせながら出し入れされる様を見ていると自分が女になったような気がしてくる。
これから繋がる為に、穴の準備をされている。
実際入れられるのはただの玩具だと分かっていても、そんな妄想をするだけで期待に腰が浮いた。
いっその事、玩具を壱衣のソレだと思い込むのはどうだろう。目を閉じていればそんな幸せな妄想に浸れるかも、と瞼を閉じようとしていた俺に、壱衣が後孔から視線を上げてこちらと目を合わせてきた。
「棗。……ここの、棗の初めてを僕にくれないかな」
「え……」
「そうしたら、もう許してあげる」
指を止めた壱衣に提案されて、薄ぼんやりとした頭でそれを反芻してからゆっくり首を横に振る。
「優しくするから。絶対痛くしないから、……棗」
ね、と壱衣は媚びるみたいに微笑みを浮かべ、片手を俺の中に潜り込ませたままもう片手で太腿の内側をゆっくり撫ぜた。
俺だって、出来るならそうしたい。そうしたかった。
「……初めてじゃ、ないので」
欲しがられても、あげられないのだ。
俺が呟くと、壱衣は全くの想定外だったのか目を丸くして動きを止めて、それからうろうろと視線を彷徨わせた。
ゆっくりと俺の中から指を抜くと、こちらに背を向けてベッドの端へ腰掛け、考えるみたいに額に手を当てる。
「そ、……っか。そっか。…………それじゃあ、お仕置きに、ならないね」
お仕置き。そうか、仕置きのつもりで、俺への罰のつもりで、俺を抱こうとしたのか。
一瞬でも『欲しがられた』と思ったのに、全くの見当違いで苦笑が浮かぶ。鼻の奥がツンと痛んで、反動みたいに目の奥から溢れてくるのを無理やり飲み込んだ。
壱衣は傍らに置いたままだったバイブを手に取って、だから予定通りそれを使われるのかと思ったのだけど。
「……っ」
ガン、と黒いそれを投げつけるみたいに箱へ放り込んだのを見て驚いた。
乱暴な動作は壱衣に似合うものではなく、どうしたのかと彼の背中を見つめるけれどこちらを振り返った壱衣はいつも通りの微笑みを浮かべていた。
「お風呂入ろうか」
「え?」
「トシだねー、もう疲れちゃった。続き、また今度でいい?」
ローション塗れの指を手早くシーツで拭った壱衣は早速俺の縄を緩め始め、いつものように俺の手首と腕を摩って痺れが無いか訊いてくる。
自由になった手足を曲げ伸ばして異常が無いのを確認して頷くと、壱衣は先にベッドから降りてドアを開けると手招いてきた。
ついて行った先は浴室で、中に押し込まれたかと思えば外から「ローション落とすの大変だろうから、ゆっくりでいいからね?」なんてのんびりとした声が掛けられる。
今日はこれで終わりなのか。中途半端に投げ出された気分で、温かくなってきたシャワーを身体に浴びながら自然と手が股間に伸びた。数擦りするだけで呆気なく精を吐いて、けれど開放感より漠然とした虚しさが胸に広がった。
「……」
掌に出した白濁はシャワーで流されていって、握った拳で壁を殴ろうとしてから人の家だと思い出して腕を下ろした。
壱衣は「また今度」と言った。だから少なくとも今日で終わりでは無いし、これまでだって縛られるばっかりで、たぶん壱衣はいわゆるエロい事というか、そういう事自体に興味が薄いんだろう。
そうとでも思わなければモヤついたものが胸にこびりつきそうで、なかなか流れていかないローションを落としながら重いため息を吐いた。
それから、壱衣は週に一度俺を家に呼ぶようになった。
毎週金曜日、時間は大抵午後九時から十一時の二時間。服を着たまま縛られて、完成するとすぐに解かれて、そしてまた縛られる。それを繰り返して、最後にマッサージをしたら終了。
前と同じかと言われれば、全然違う。
俺も壱衣も最初から最後までじっと黙り込んで、雑談なんて雰囲気じゃない。
壱衣の家の玄関を出るとホッとするくらいで、だけど木曜夜の呼び出しのメッセージには指が勝手に『はい』の二文字を返している。
そんなことを繰り返しているうちに季節は移ろって、いつの間にか秋口に入っていた。そろそろ長袖じゃないと肌寒いけれど、袖に縄が絡むと壱衣が鬱陶しそうにするから着るものに悩む。肌にぴったり張り付くタイプの機能性肌着ってやつなら化繊だから縄も滑りそうだし、上にパーカーを羽織っていけば問題無いだろうか。
「……でさ、やっぱ来てないらしいよ」
スマホでネットを見ながら大学の学食で昼飯をとっていたら、不意に周囲の噂話が耳に入ってきた。
「ああ、藍沢ちゃん? どうしたんだろうね」
「捨てた男に刺されて埋められたんじゃないかって噂」
「なにそれヒッデェ」
「いや、俺も最近知ったんだけど、藍沢ちゃん結構悪女だったらしいよ?」
「嘘っぽー。女が嫉妬してそういう噂流してんだろ」
「分かんね。けど、夏休み明けくらいから全然姿見ねーし連絡もとれないんだって」
聞き耳を立てるまでもなく、俺の座る長机の横をトレイを持った男が二人、話しながら通り過ぎて行く。
藍沢が大学に来てない。
むしろ喜ばしい事の筈なのに、俺の胸に嫌なものが過ぎる。その予感を肯定するみたいに、スマホがピロン、とメッセージの着信音を鳴らした。
画面の上の方に、送信相手の名前と、短い内容が表示される。
『矢吹 玲 : 今夜空いてる?』
その名前があの夜のヤクザじみた男のものだと思い出し、スマホを握り締めた。
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