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白鷺雨月

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第三十七話 人でなしとの恋⑤

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 僕が祖父の遺産を受け継いで、三年が過ぎた。
 弁護士の細井瞳さんが僕の家を訪ねてきた。
 なにやら相談したい事があるとのことだ。
 いつもお世話になっている細井瞳さんにの頼みなら、僕はできることならきいてあけようと思う。
 この家にきてから僕と社会の接点は細井瞳と家政婦の山田さんだけだ。
 山田さんは家の用事をしてもらうだけの人で、それほど深いつきあいではない。
 いてくれないと困る人だが、山田さんとはそれだけだ。
 細井瞳さんのように公私にわたるつきあいというものではない。

 細井瞳さんが僕の家にやってきた。
 なにやら大きめのクーラーボックスを持ってきた。
 僕は麻紀絵に頼み、細井瞳さんをリビングに案内する。
 麻紀絵は細井瞳さんのために甘い珈琲を淹れた。
 僕には紅茶を淹れてくれる。
「ありがとう、麻紀絵さん」
 細井瞳さんは麻紀絵さんに礼を言う。
 麻紀絵はにこりと微笑む。
 麻紀絵の笑顔は天上の女神の様に美しい。
 そう言えば、細井瞳さんは普通に麻紀絵と会話ができる。山田さんは一言も麻紀絵たちと会話をすることはない。
「それはまあ、私はあなたがたよりですからね。ちなみに山田靖子さんはきわめてそちらに鈍感なのです。鈍感すぎるからこのお屋敷で働けるのです」
 細井瞳さんは細い目をさらに細める。
 彼女は珈琲を一口すする。
「さっそくですが、先生に頼みたいことがあります」
 そう言うと細井瞳さんはクーラーボックスを開ける。
 先生と呼ばれる弁護士の人に先生と呼ばれるのは背中がむず痒くなる。
 僕は細井瞳さんが開けたクーラーボックスをのぞき込む。
 驚いたことにそこには人間の生首が入れられていた。
 とても美しい女の生首であった。
 僕は思わず女の美しさに目を奪われる。
 まあ、麻紀絵には少し及ばないけどね。
「こ、これは……」
 僕が見ていると女の生首は目を開けた。
 アーモンド型の大きな瞳だ。
 細井瞳さんとは真逆だな。
「さすがは先生、落ち着いていらっしゃる」
 細井瞳は褒めてくれた。
 褒められるのは悪い気がしない。
「はー窮屈だったわ。あなたが人形師のかたなのね。よろしくね」
 女の生首は甘ったるい、男好きのする声で言う。
 どうやら女の生首は生きているようだ。
「あなたもどうやら私たちの方にきているのね」
 生首は僕の目を見る。
 女の生首の言葉はわかったようなわからないものであった。
「真奈美さんは私の友人なのですが、今はこのような状態になってしまいました。先生には真奈美さんに義体を作っていただきたいのです」
 細井瞳さんは珈琲をすする。
 奇妙な依頼だが、結局は人形をつくるということか。ならば僕の本職なのでふたつ返事で引き受けた。
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