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第五十八話 ぬらりひょんの彼女③
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私の名前は篠原智美というの。今年の春に大学を卒業したばかりの二十二歳。仕事は父親が経営する弁当屋の店員をしている。
背の低い私は昔から存在感がないとよく言われた。子供のときにかくれんぼをしたら、最後までみつからなかった。
高校のとき、出席しているのに欠席扱いされそうになったことがある。
大学の友だちと一緒に遊びに行ったときに、見失われて、そのまま帰られたことがある。
私は影がうすい。いるかいないのか、わからない存在だ。このまま父親の店でお弁当だけを作り続けるのが人生のすべてだと思っていた。
あるとき、お店のお客さんが私のことをじっと見つめているのを感じた。
存在感なんてない私を見つめるなんて、奇特な人だと思った。
その人はよく鶏そぼろ弁当を頼む。
どうやら、それが好物のようだ。
その人の名前は影山灰都といった。
土日によく来ていたのだが、最近は平日でも来るようになった。
勇気をだして訊いてみると勤めていた会社が倒産したという。
それはかわいそうにと思うと同時に、よく来てくれるようになってうれしいと思う自分がいた。
人の不幸を喜ぶなんて悪いことなのに。
灰都君が私のことを見つめるのは、きっと私が好きなのに違いない。女の勘がそう告げていた。
私は勇気をだして、彼の後をつけた。
灰都君は近くのマンションに住んでいた。私はそれは運命だと思った。
深夜に彼のマンションに忍びこんで、充電しているスマホをチェックする。
存在感のない私にはこんなことは余裕綽々であった。
よかった、他に女性はいないようだ。
スマホをチェックした私は彼のXとインスタグラムのアドレスも入手した。
私はホクホク顔で帰宅する。それから彼のSNSをチェックするのが日課となった。
そして数日後、私は知るのだ。
彼が私をモデルにしてイラストを描いているということを。
なんだ、やっぱり私たちは相思相愛なんだ。
灰都君のイラストはそれはもう惚れ惚れするほどかわいくて、綺麗だ。
モデルになっている私が照れるほどだ。
どうやらぬらりひょんという妖怪が女の子になったという設定のようだ。
私はその設定に全力で乗っかることにした。
そのイラストのキャラクターが着ているワンピースと似ているものを着て、ローファーを履いて、マンション前で彼が出ていくのを待つ。
彼が外に出ていくのを見送り、私はマンションに入る。
悪魔のタロットカードをドアにかざすだけで開場される。
この悪魔のタロットカードは昔細井瞳という人にもらったものだ。
細井瞳さんは不思議な人だった。
存在感のない私をすぐに見つけてくれた。
私のことを別世界から来た人の末裔かもしれないとも言っていた。
兎にも角にもその細井瞳さんにもらった悪魔のタロットカードを使い、部屋に入るのは簡単だった。
私はローファーを脱ぎ、玄関に置く。
ぬらりひょんは勝手に忍び込んで靴だけを置いていくという。それにならったのだ。
こうすることによって私がぬらりひょんだということを信用させることができると思う。
お腹が空いたので、キッチンにあったカップラーメンを食べていると彼が帰ってきた。
彼はばればれなのに忍び足で廊下を歩き、ドアの隙間からこちらを見ている。
私は彼を見て、にこりと微笑む。
この笑いかたは鏡の前で何回も練習したものだ。
私の笑顔を見て、彼は警戒をといてくれたようだ。
私は立ち上がり、彼に抱きつく。
灰都君にイラストが皆に認識されて、ぬらりひょんとしてこの現実世界に出ることができたと説明した。一晩考えた設定に彼は嬉しそうに頷いてくれた。
私たちはこたつに向かいあってすわる。
「わらわは旦那様の嫁になるために現世に顕現したのじゃ」
私はそう宣言した。
私は篠原智美という存在を捨てる。どうせ誰にも気づかれないのだ。ぬらりひょんとなって生きていこうと思う。
「よろしくお願いします」
満面の笑みで灰都君はそう言った。
「よろしくなのじゃ、旦那様!!」
私はその日、ぬらりひょんとなった。
背の低い私は昔から存在感がないとよく言われた。子供のときにかくれんぼをしたら、最後までみつからなかった。
高校のとき、出席しているのに欠席扱いされそうになったことがある。
大学の友だちと一緒に遊びに行ったときに、見失われて、そのまま帰られたことがある。
私は影がうすい。いるかいないのか、わからない存在だ。このまま父親の店でお弁当だけを作り続けるのが人生のすべてだと思っていた。
あるとき、お店のお客さんが私のことをじっと見つめているのを感じた。
存在感なんてない私を見つめるなんて、奇特な人だと思った。
その人はよく鶏そぼろ弁当を頼む。
どうやら、それが好物のようだ。
その人の名前は影山灰都といった。
土日によく来ていたのだが、最近は平日でも来るようになった。
勇気をだして訊いてみると勤めていた会社が倒産したという。
それはかわいそうにと思うと同時に、よく来てくれるようになってうれしいと思う自分がいた。
人の不幸を喜ぶなんて悪いことなのに。
灰都君が私のことを見つめるのは、きっと私が好きなのに違いない。女の勘がそう告げていた。
私は勇気をだして、彼の後をつけた。
灰都君は近くのマンションに住んでいた。私はそれは運命だと思った。
深夜に彼のマンションに忍びこんで、充電しているスマホをチェックする。
存在感のない私にはこんなことは余裕綽々であった。
よかった、他に女性はいないようだ。
スマホをチェックした私は彼のXとインスタグラムのアドレスも入手した。
私はホクホク顔で帰宅する。それから彼のSNSをチェックするのが日課となった。
そして数日後、私は知るのだ。
彼が私をモデルにしてイラストを描いているということを。
なんだ、やっぱり私たちは相思相愛なんだ。
灰都君のイラストはそれはもう惚れ惚れするほどかわいくて、綺麗だ。
モデルになっている私が照れるほどだ。
どうやらぬらりひょんという妖怪が女の子になったという設定のようだ。
私はその設定に全力で乗っかることにした。
そのイラストのキャラクターが着ているワンピースと似ているものを着て、ローファーを履いて、マンション前で彼が出ていくのを待つ。
彼が外に出ていくのを見送り、私はマンションに入る。
悪魔のタロットカードをドアにかざすだけで開場される。
この悪魔のタロットカードは昔細井瞳という人にもらったものだ。
細井瞳さんは不思議な人だった。
存在感のない私をすぐに見つけてくれた。
私のことを別世界から来た人の末裔かもしれないとも言っていた。
兎にも角にもその細井瞳さんにもらった悪魔のタロットカードを使い、部屋に入るのは簡単だった。
私はローファーを脱ぎ、玄関に置く。
ぬらりひょんは勝手に忍び込んで靴だけを置いていくという。それにならったのだ。
こうすることによって私がぬらりひょんだということを信用させることができると思う。
お腹が空いたので、キッチンにあったカップラーメンを食べていると彼が帰ってきた。
彼はばればれなのに忍び足で廊下を歩き、ドアの隙間からこちらを見ている。
私は彼を見て、にこりと微笑む。
この笑いかたは鏡の前で何回も練習したものだ。
私の笑顔を見て、彼は警戒をといてくれたようだ。
私は立ち上がり、彼に抱きつく。
灰都君にイラストが皆に認識されて、ぬらりひょんとしてこの現実世界に出ることができたと説明した。一晩考えた設定に彼は嬉しそうに頷いてくれた。
私たちはこたつに向かいあってすわる。
「わらわは旦那様の嫁になるために現世に顕現したのじゃ」
私はそう宣言した。
私は篠原智美という存在を捨てる。どうせ誰にも気づかれないのだ。ぬらりひょんとなって生きていこうと思う。
「よろしくお願いします」
満面の笑みで灰都君はそう言った。
「よろしくなのじゃ、旦那様!!」
私はその日、ぬらりひょんとなった。
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