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第二話 見鬼の力
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この美貌の宦官は私と誰を比べているのだろうか?
明鈴は気になるが、今はそれを確かめる時ではないと考えた。
この牢から出してもらえることを確約してもらうほうが、先決だ。
そして、私は私だと明鈴は思った。
「聞けばおまえは見鬼の能力があるということだな?」
じっと烏次元は明鈴の瞳をみつめる。
その黒目がちの瞳にみつめられ、相手が宦官だというのに明鈴は胸の奥が熱く、苦しくなるのを覚えた。
「ええ…… 見えます」
明鈴はこくりと頷く。
見鬼の能力とはこの世のものでないものを見る力のことをいう。明鈴の場合、物質に刻まれた記憶をよみとることができる。子供のときは、その能力のせいで今は亡き両親から気味わるがられたものだ。
下級女官をしていたころはその能力を使いよく他人のなくしものをみつけたりして、感謝されたものだ。
そういえば、同僚の張飛燕はどうしているのだろうか?
あの子はよく物を無くして先輩に怒られていたな。
明鈴がそんなことを考えていると烏次元は懐から何かを取り出した。
「ではこれの記憶を読んでもらおうか」
彼は懐から古いかんざしを取りだし、明鈴に手渡す。
かなり古くて、錆びかけている。
明鈴はそれを受け取り、両手ではさむ。そっと目を閉じて、精神を集中させる。
そうするとその物の記憶が明鈴の胸の中に流れ込んでくる。
いくつかの場面が脳内に再生される。
明鈴の脳内には烏次元によく似た女性が浮かぶ。
とても美しい女性だと明鈴は思った。
絶世のと形容したくなるほどだ。
「何が見えた?」
烏次元は短く訊く。その顔は真剣そのものであった。
「あなたによく似た女性が見えます」
明鈴は答える。
「その人はなんと言っている。私のことをどう思っている」
矢継ぎ早に烏次元は明鈴に問う。
「それをお答えしてもいいのですか」
明鈴はためらった。
脳裏に浮かぶ女性がなんといっているのか明鈴には手にとるようにわかる。
一字一句間違うことなく言うことができる。
ただその言葉を口にすれば烏次元は機嫌をそこねるのではないかと思えた。
もしかすると損ねるどころか、怒り出すかも知れないと明鈴は思い、ためらっていた。
「かまわない、言ってくれ」
烏次元は強く促すので、仕方なく明鈴は答えた。
「ではお答えします。その人は宇文家の面汚し、我が一族から宦官をだしたことはとてつともなく不名誉なことである。二度と宇文の姓を名乗るでないと言っています」
それはきっと目の前の美しい宦官には辛い言葉だと明鈴には思えた。
烏次元の機嫌を損なうのはもちろんだが、恐らくは母親であろうこの女性の言葉は彼を深く傷つけるだろう。明鈴がためらったのはそういう理由である。
「そうか、あの女の言いそうなことだ。わかった、おまえの能力は本物のようだ。では提案だ。李明鈴、おまえが私の妻になるのならこの牢から出してやろう」
烏次元はそう言った。
それは明鈴が思いもよらぬ提案であった。
明鈴は気になるが、今はそれを確かめる時ではないと考えた。
この牢から出してもらえることを確約してもらうほうが、先決だ。
そして、私は私だと明鈴は思った。
「聞けばおまえは見鬼の能力があるということだな?」
じっと烏次元は明鈴の瞳をみつめる。
その黒目がちの瞳にみつめられ、相手が宦官だというのに明鈴は胸の奥が熱く、苦しくなるのを覚えた。
「ええ…… 見えます」
明鈴はこくりと頷く。
見鬼の能力とはこの世のものでないものを見る力のことをいう。明鈴の場合、物質に刻まれた記憶をよみとることができる。子供のときは、その能力のせいで今は亡き両親から気味わるがられたものだ。
下級女官をしていたころはその能力を使いよく他人のなくしものをみつけたりして、感謝されたものだ。
そういえば、同僚の張飛燕はどうしているのだろうか?
あの子はよく物を無くして先輩に怒られていたな。
明鈴がそんなことを考えていると烏次元は懐から何かを取り出した。
「ではこれの記憶を読んでもらおうか」
彼は懐から古いかんざしを取りだし、明鈴に手渡す。
かなり古くて、錆びかけている。
明鈴はそれを受け取り、両手ではさむ。そっと目を閉じて、精神を集中させる。
そうするとその物の記憶が明鈴の胸の中に流れ込んでくる。
いくつかの場面が脳内に再生される。
明鈴の脳内には烏次元によく似た女性が浮かぶ。
とても美しい女性だと明鈴は思った。
絶世のと形容したくなるほどだ。
「何が見えた?」
烏次元は短く訊く。その顔は真剣そのものであった。
「あなたによく似た女性が見えます」
明鈴は答える。
「その人はなんと言っている。私のことをどう思っている」
矢継ぎ早に烏次元は明鈴に問う。
「それをお答えしてもいいのですか」
明鈴はためらった。
脳裏に浮かぶ女性がなんといっているのか明鈴には手にとるようにわかる。
一字一句間違うことなく言うことができる。
ただその言葉を口にすれば烏次元は機嫌をそこねるのではないかと思えた。
もしかすると損ねるどころか、怒り出すかも知れないと明鈴は思い、ためらっていた。
「かまわない、言ってくれ」
烏次元は強く促すので、仕方なく明鈴は答えた。
「ではお答えします。その人は宇文家の面汚し、我が一族から宦官をだしたことはとてつともなく不名誉なことである。二度と宇文の姓を名乗るでないと言っています」
それはきっと目の前の美しい宦官には辛い言葉だと明鈴には思えた。
烏次元の機嫌を損なうのはもちろんだが、恐らくは母親であろうこの女性の言葉は彼を深く傷つけるだろう。明鈴がためらったのはそういう理由である。
「そうか、あの女の言いそうなことだ。わかった、おまえの能力は本物のようだ。では提案だ。李明鈴、おまえが私の妻になるのならこの牢から出してやろう」
烏次元はそう言った。
それは明鈴が思いもよらぬ提案であった。
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