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第八話 未知の世界
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耳に激痛が走る。
大音量で聞いたこともない音がそこら中に流れている。
灰色の地面は冷たくて硬い。
無数ともいえる人々が歩いている。
明鈴の視界にまず入ったのが人の群れであった。
見たこともない服を着た人々が歩いている。
明鈴はある女性を見た。
その女性は明鈴と同い年ぐらいに思えた。
その容姿は彼女にかなり近い。民族的に同じか、その近くといったところか。
なのに髪の色は金色で着物は袖はなく、足も膝から上はあらわになっている。
竜帝国では花街の妓生たちですらこんな破廉恥な格好はしない。
だというのにそんな姿の女性たちはそこら中にいて、誰もとがめないのだ。
明鈴は心臓がいたくなる気分をおさえながら、さらに周囲をみわたした。
どんなに見上げても頂点が見えない建物だらけであった。
透明な壁が太陽の光を反射している。
それは眩しいほどだ。
明鈴は思わず目を細める。
馬もいないのに鉄の馬車がものすごい速さで駆け抜けていく。その馬車は煙を吐き出していた。
明鈴はそれを吸い込んでしまったため、咳がとまらなくなった。
ようやく咳が止まったかと思えば、ある建物の壁に巨大な女性が映し出され笑顔でなにかを言っていた。
その手にはギヤマンの杯にいれられた飲み物がある。
その飲み物は明鈴も知っていた。
麦からつくる酒である。
たしか皇帝竜星命の好物であったため、帝都で流行しているものだ。
うまそうにその巨大な女性はその麦酒を飲むと聞いたことのない言葉を言った。
これは勘であるがこの周囲の人々も同じような言葉を話していた。
明鈴は言いようのない恐怖にかられた。
ここはいったい何処なの?
疑問が頭を駆け巡るが、当然答えなんかでない。
もしかすると仙界とか魔界とかいうところに迷い込んでしまったのだろうか。
せっかく烏次元にあの石牢からだしてもらったのにこんな奇妙な世界に迷い込んでしまうなんて……。
もう、どうでもいい。
早くここから立ち去りたい。
明鈴はこころの底からそう思った。
そう思った次の瞬間、世界が激変した。
今度はほとんどが闇の世界であった。
その暗闇の中に誰かがいる。
どうやら男性のようだ。
もじゃもじゃの髪を生やした、無精髭の男性だ。
彼は椅子に座り、一心不乱に小さな板を見つめている。
その板を見ながら、気味悪く笑っている。
時々、おおっおおっと叫び声とも唸り声ともつかない奇声を発する。
明鈴は恐る恐る近づき、その板を男の背後から見た。
その板には小さな小さな女の子が綺麗な衣装を着て、歌い、踊っていた。
集団で乱れることなく、見たこともない踊りを笑顔を崩さずに踊っていた。
時々、その板に女性の顔が大きくうつしだされる。
その容姿は整っているが、竜帝国の基準では美人とは言い難いものであった。
でも明鈴はこの一生懸命に踊る少女たちに好感をもった。
美しいにもいろいろあるのだと明鈴は思った。
その板をもじゃもじゃ髪の男が指でさわると歌い踊る少女たちは消え、絵が浮かんだ。
どういう仕組になっているのだろうか?
その絵でできた人物がはるか西の呂摩国のような街を歩いていた。
可愛らしい絵の少女は光につつまれると羽のような着物を着た姿になり、醜い怪物と戦う。
その少女にはもう一人仲間がいて、茶色の髪をした勝ち気そうな顔をしている。
二人は協力し、笑顔でお互いを称え合う。
板を見ていた男は明鈴の存在に気づくとにやりといやらしい笑みを浮かべた。
またあの意味のわからない言葉を喋っている。
どうやら悪意はないようだ。
手招きし、棚にある人形を指差す。
推測だがこの男は棚の人形を自慢したいようだ。
その人形は息をのむほど精巧なものだった。肌など本物の人間よりも美しかった。
あの小さな板にうつしだされた二人組の少女の人形のようだ。
その人形の精巧で美しい姿に明鈴は思わず息を飲み込んだ。
よく見ると天井や壁にもその少女たちの絵がはられている。
明鈴はあまりの情報の多さに頭痛を覚えた。
それにめまいと吐き気がする。
物から記憶を読み取るのにこのような経験は始めてだ。
これがはたして皇帝陛下の記憶なのだろうか?
もっとこの世界を知りたいと思ったが、頭痛とめまいは激しさを増し、ついに意識を保てなくなり、明鈴は気絶した。
意識をたもとうと努力したが無駄だった。
明鈴の視界は真っ暗になってしまった。
大音量で聞いたこともない音がそこら中に流れている。
灰色の地面は冷たくて硬い。
無数ともいえる人々が歩いている。
明鈴の視界にまず入ったのが人の群れであった。
見たこともない服を着た人々が歩いている。
明鈴はある女性を見た。
その女性は明鈴と同い年ぐらいに思えた。
その容姿は彼女にかなり近い。民族的に同じか、その近くといったところか。
なのに髪の色は金色で着物は袖はなく、足も膝から上はあらわになっている。
竜帝国では花街の妓生たちですらこんな破廉恥な格好はしない。
だというのにそんな姿の女性たちはそこら中にいて、誰もとがめないのだ。
明鈴は心臓がいたくなる気分をおさえながら、さらに周囲をみわたした。
どんなに見上げても頂点が見えない建物だらけであった。
透明な壁が太陽の光を反射している。
それは眩しいほどだ。
明鈴は思わず目を細める。
馬もいないのに鉄の馬車がものすごい速さで駆け抜けていく。その馬車は煙を吐き出していた。
明鈴はそれを吸い込んでしまったため、咳がとまらなくなった。
ようやく咳が止まったかと思えば、ある建物の壁に巨大な女性が映し出され笑顔でなにかを言っていた。
その手にはギヤマンの杯にいれられた飲み物がある。
その飲み物は明鈴も知っていた。
麦からつくる酒である。
たしか皇帝竜星命の好物であったため、帝都で流行しているものだ。
うまそうにその巨大な女性はその麦酒を飲むと聞いたことのない言葉を言った。
これは勘であるがこの周囲の人々も同じような言葉を話していた。
明鈴は言いようのない恐怖にかられた。
ここはいったい何処なの?
疑問が頭を駆け巡るが、当然答えなんかでない。
もしかすると仙界とか魔界とかいうところに迷い込んでしまったのだろうか。
せっかく烏次元にあの石牢からだしてもらったのにこんな奇妙な世界に迷い込んでしまうなんて……。
もう、どうでもいい。
早くここから立ち去りたい。
明鈴はこころの底からそう思った。
そう思った次の瞬間、世界が激変した。
今度はほとんどが闇の世界であった。
その暗闇の中に誰かがいる。
どうやら男性のようだ。
もじゃもじゃの髪を生やした、無精髭の男性だ。
彼は椅子に座り、一心不乱に小さな板を見つめている。
その板を見ながら、気味悪く笑っている。
時々、おおっおおっと叫び声とも唸り声ともつかない奇声を発する。
明鈴は恐る恐る近づき、その板を男の背後から見た。
その板には小さな小さな女の子が綺麗な衣装を着て、歌い、踊っていた。
集団で乱れることなく、見たこともない踊りを笑顔を崩さずに踊っていた。
時々、その板に女性の顔が大きくうつしだされる。
その容姿は整っているが、竜帝国の基準では美人とは言い難いものであった。
でも明鈴はこの一生懸命に踊る少女たちに好感をもった。
美しいにもいろいろあるのだと明鈴は思った。
その板をもじゃもじゃ髪の男が指でさわると歌い踊る少女たちは消え、絵が浮かんだ。
どういう仕組になっているのだろうか?
その絵でできた人物がはるか西の呂摩国のような街を歩いていた。
可愛らしい絵の少女は光につつまれると羽のような着物を着た姿になり、醜い怪物と戦う。
その少女にはもう一人仲間がいて、茶色の髪をした勝ち気そうな顔をしている。
二人は協力し、笑顔でお互いを称え合う。
板を見ていた男は明鈴の存在に気づくとにやりといやらしい笑みを浮かべた。
またあの意味のわからない言葉を喋っている。
どうやら悪意はないようだ。
手招きし、棚にある人形を指差す。
推測だがこの男は棚の人形を自慢したいようだ。
その人形は息をのむほど精巧なものだった。肌など本物の人間よりも美しかった。
あの小さな板にうつしだされた二人組の少女の人形のようだ。
その人形の精巧で美しい姿に明鈴は思わず息を飲み込んだ。
よく見ると天井や壁にもその少女たちの絵がはられている。
明鈴はあまりの情報の多さに頭痛を覚えた。
それにめまいと吐き気がする。
物から記憶を読み取るのにこのような経験は始めてだ。
これがはたして皇帝陛下の記憶なのだろうか?
もっとこの世界を知りたいと思ったが、頭痛とめまいは激しさを増し、ついに意識を保てなくなり、明鈴は気絶した。
意識をたもとうと努力したが無駄だった。
明鈴の視界は真っ暗になってしまった。
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