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第十七話 燕貴妃の悩み
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玉太后の謁見を終えた明鈴はその足で燕貴妃のもとに向かった。
燕貴妃は自室で小梅と談笑していた。
小梅には不思議な才能がある。
それは止まることなく会話を続け、人をたのしませるというものであった。
裁縫もこなす才女と思われたが、料理だけは壊滅的に下手であった。
「あっ明鈴、帰ってきたのね」
ふふっと燕貴妃は微笑む。
「お帰りなさい、明鈴姉さん」
小梅も出迎える。
別室に行き、すぐに明鈴のために白湯をいれ、持ってくる。
それを明鈴は一息に飲み干す。
ふーと一息吐く。
明鈴は玉太后の願いを隠すことなく、すべて燕貴妃に話した。
それを燕貴妃は真剣な顔で聞く。
「もしあなたが他の側室に皇帝陛下の愛を奪われたくないというのなら、この話は断るわ」
明鈴は燕貴妃の大きな瞳を見る。
明鈴としても燕貴妃の気持ちが最優先だ。
燕貴妃はしばらく考える。
おしゃべりな小梅もそれは邪魔しない。
やがて彼女はゆっくりと口を開く。
「皇帝陛下に愛されて、私は本当に幸せです。この帝国でもっとも幸せな女だと思って言います。ですが……」
そこで燕貴妃は言葉をつまらせて、黙り込む。
明鈴はそっと燕貴妃の小さく、白い手を握る。
その手から火傷しそうなぐらいの熱さを感じる。
それは毎夜燕貴妃に注がれる皇帝の愛情と情熱だと明鈴は感じ取った。
その熱さは身をこがしそうだ。
「でも毎日はつらいよね」
明鈴は燕貴妃の心の内を見た。
燕貴妃は皇帝に愛されて無情の喜びを得ている。
だが、毎日ともなると体の疲労がぬけきれない。それもまたまぎれもない事実であった。
燕貴妃はだまってこくりと頷くだけだった。
「あっそういうことか」
小梅が言った。
「燕貴妃もお休みがほしいわよね」
丸い顎をなで、なぜか小梅はにやにやしている。
霊賢妃あたりが聞いたら怒りだしそうねと小梅はつけたした。
燕貴妃は二人から視線をそらして、壁の仙女の絵を見た。
「では側室探しを受けることにするわね」
明鈴は白湯のおかわりを飲み干し、そういった。
燕貴妃はちらりと明鈴を見て、顎先だけを軽くさげた。
明鈴と小梅は一度、屋敷に帰った。
夜になると職務を終えた烏次元が帰宅した。
明鈴たちは麻伊がつくった料理をかこみ、談笑する。
この日の酒菜は鶏肉の揚げ物、青菜炒め、野菜の鶏ガラ汁であった。
鶏肉の揚げ物は肉を味噌と生姜をあわせたものに漬け込み、片栗粉をまぶして油で揚げたものだ。
皇帝竜星命の好物で別名皇帝揚げと呼ばれ、麻伊の得意料理の一つだ。
「確かに陛下の跡継ぎ問題は国家の重要事だ。燕貴妃以外の後宮の女性を召されないのなら、他から探すしかないだろう」
烏次元は青菜炒めを一口食べる。
やはり麻伊の料理は絶品だと褒める。
それを聞いた麻伊は嬉しそうに微笑む。
小梅は食欲を優先し、鳥の揚げ物にかぶりついた。
明鈴も野菜の汁を一口飲む。じんわりとしたうま味が舌に広がる。
「でも飛燕のときとは違い、誰も思いつかないわ」
明鈴はため息をつく。
手巾から得られた情報で皇帝のだいたいの好みは把握しているつもりだ。だが、明鈴には燕貴妃以外に思いつく知り合いがいない。
「どうだ、明日気晴らしに買い物でもいってみては?」
烏次元は明鈴にそう提案した。
買い物という単語を聞いて、小梅は目を輝かせた。
それは明鈴も同じだった。
ということで明鈴と小梅は明日、帝都竜眼府の商業地区で買い物をすることになった。
燕貴妃は自室で小梅と談笑していた。
小梅には不思議な才能がある。
それは止まることなく会話を続け、人をたのしませるというものであった。
裁縫もこなす才女と思われたが、料理だけは壊滅的に下手であった。
「あっ明鈴、帰ってきたのね」
ふふっと燕貴妃は微笑む。
「お帰りなさい、明鈴姉さん」
小梅も出迎える。
別室に行き、すぐに明鈴のために白湯をいれ、持ってくる。
それを明鈴は一息に飲み干す。
ふーと一息吐く。
明鈴は玉太后の願いを隠すことなく、すべて燕貴妃に話した。
それを燕貴妃は真剣な顔で聞く。
「もしあなたが他の側室に皇帝陛下の愛を奪われたくないというのなら、この話は断るわ」
明鈴は燕貴妃の大きな瞳を見る。
明鈴としても燕貴妃の気持ちが最優先だ。
燕貴妃はしばらく考える。
おしゃべりな小梅もそれは邪魔しない。
やがて彼女はゆっくりと口を開く。
「皇帝陛下に愛されて、私は本当に幸せです。この帝国でもっとも幸せな女だと思って言います。ですが……」
そこで燕貴妃は言葉をつまらせて、黙り込む。
明鈴はそっと燕貴妃の小さく、白い手を握る。
その手から火傷しそうなぐらいの熱さを感じる。
それは毎夜燕貴妃に注がれる皇帝の愛情と情熱だと明鈴は感じ取った。
その熱さは身をこがしそうだ。
「でも毎日はつらいよね」
明鈴は燕貴妃の心の内を見た。
燕貴妃は皇帝に愛されて無情の喜びを得ている。
だが、毎日ともなると体の疲労がぬけきれない。それもまたまぎれもない事実であった。
燕貴妃はだまってこくりと頷くだけだった。
「あっそういうことか」
小梅が言った。
「燕貴妃もお休みがほしいわよね」
丸い顎をなで、なぜか小梅はにやにやしている。
霊賢妃あたりが聞いたら怒りだしそうねと小梅はつけたした。
燕貴妃は二人から視線をそらして、壁の仙女の絵を見た。
「では側室探しを受けることにするわね」
明鈴は白湯のおかわりを飲み干し、そういった。
燕貴妃はちらりと明鈴を見て、顎先だけを軽くさげた。
明鈴と小梅は一度、屋敷に帰った。
夜になると職務を終えた烏次元が帰宅した。
明鈴たちは麻伊がつくった料理をかこみ、談笑する。
この日の酒菜は鶏肉の揚げ物、青菜炒め、野菜の鶏ガラ汁であった。
鶏肉の揚げ物は肉を味噌と生姜をあわせたものに漬け込み、片栗粉をまぶして油で揚げたものだ。
皇帝竜星命の好物で別名皇帝揚げと呼ばれ、麻伊の得意料理の一つだ。
「確かに陛下の跡継ぎ問題は国家の重要事だ。燕貴妃以外の後宮の女性を召されないのなら、他から探すしかないだろう」
烏次元は青菜炒めを一口食べる。
やはり麻伊の料理は絶品だと褒める。
それを聞いた麻伊は嬉しそうに微笑む。
小梅は食欲を優先し、鳥の揚げ物にかぶりついた。
明鈴も野菜の汁を一口飲む。じんわりとしたうま味が舌に広がる。
「でも飛燕のときとは違い、誰も思いつかないわ」
明鈴はため息をつく。
手巾から得られた情報で皇帝のだいたいの好みは把握しているつもりだ。だが、明鈴には燕貴妃以外に思いつく知り合いがいない。
「どうだ、明日気晴らしに買い物でもいってみては?」
烏次元は明鈴にそう提案した。
買い物という単語を聞いて、小梅は目を輝かせた。
それは明鈴も同じだった。
ということで明鈴と小梅は明日、帝都竜眼府の商業地区で買い物をすることになった。
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