貧困と絵描き

『雨』

その日は朝から暑い雲に覆われ
今にも大粒の雨が降りそうな日であった

絵描きは起きるといつもと変わらず画材を
抱え街へとくりだした

街に着くといつもの様に画材を広げ絵を書き始めた
絵を書き始め2時間程がたった頃ポツリ、ポツリと
雨が降り始めた

彼は勿論雨具など持っていない

そんな彼を見て街行く人はいつも以上に不憫な
目で彼を見る

彼は絵の具だけが濡れないように木の箱に入れ
自分と絵を描いている紙は濡れてしまっている

街行く人はあんな濡れてしまってる絵を誰が買うんだ？
とひそひそ話どころか絵描きに聞こえるように
話している

絵描きはいつもの様にそんな戯言は耳に届かない

絵描きが今日描いている絵の題名は『雨』

絵描きからすれば雨に打たれ、濡れていてこそ『雨』と
ゆう絵なのだ
絵描きは満足気に筆を走らせる

暗くなり今日も絵は売れなかった
しかし家に帰る絵描きの足取りは軽い

雨の日の話