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一章
9話 小さな世界樹
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翌朝。検査結果を聞くために、メィシーはダンの研究所へ入って行った。レオンが扉の前で待機していると、リセナから手をちょんちょんとつつかれる。
「あの、また練習していいですか?」
「うん、もちろん!」
魔力増幅を使う練習ということで、彼女が手をにぎってくれるこの時間を彼はひそかに――いや、顔には出ているが――楽しみにしていた。彼女に渡した魔力を、少し増やして返してもらうことの繰り返し。
しかし、今日は突然、バチリと音がするかと思うほどの衝撃で一気にレオンへ魔力が戻される。
「痛った!? えっ、リセナ、出力上がってない?」
「え、あ、ごめんなさい……!」
「待ってね、身体強化も同時にするから」
一晩でこんなに変わるものなのかと驚きつつ、レオンは昨日リセナと同室だった約一名の顔を思い出す。
「……ねえ、リセナ、メィシーになにかされた?」
「えっ、いや、その……手伝って、もらったというか。いまレオとしてるのと、あんまり変わらないです」
リセナは目をそらしてはぐらかす。余裕のない姿をメィシーに見せてしまったことを、なんとなく、レオンには隠しておこうと思ったのだ。
「そう……?」
疑わしそうにしながら、彼はベルトに差していた剣の柄をにぎる。
「ちょっと、さすがに上限だから魔力使うね……!」
押し出されるように柄へ魔力を流すと、炎の刃が無駄に勢いよく噴出した。もう、ちょっとした火柱だ。
「うっわ!!?」
「わぁあ抑えてください! 町でそれはまずいです!」
「むりむり責任取って! こんなにしたの、きみだからね!」
メィシーが扉を開けると、熱くて真っ赤で騒々しい光景が広がっていた。
「わお……。あの、世界樹だけは燃やさないでくださいね? アレがないと、世界から魔法が消滅するので……」
その直後、グレイに剣を叩き落とされてようやく鎮火していた。はじめから手を離せばよかったのだが。
「さて、検査結果ですが」
さすがに人が集まってきたので、場所を変え歩きながらメィシーが切り出す。
「結論から申し上げますと、リセナ――。あなたの心臓、小さな世界樹みたいなことになっています。もしかして、世界樹の実でも食べました?」
「へっ? いやいや、そんな高価なもの食べたことないです!」
それにしても、全く意味の分からない結論だ。
「え? どういうことですか……?」
「えっと、なぜか、心臓に魔素を作る機能……らしきものが、あるようなんです。あなたの力は、渡された魔力にその魔素を追加して増幅させているようなんですが……」
「????」
「とにかく、必要なものをそろえたら、この町を出ましょうか。ダンが解剖させろと言って聞かないのでイスに縛り付けてきたのですが、長くはもたないでしょうし」
心ここにあらずなリセナは、そのまま前で立ち止まっていた人に思いきりぶつかった。
「あいたっ……わ、ごめんなさい……!」
見上げると、警備兵用の白い隊服に身を包んだ、金髪碧眼の青年がいた。二つある泣きぼくろが印象的な彼は、どこかぼんやりこちらを見ていたが、ハッと我に返ると小さく会釈する。
「いえ、失礼いたしました」
そして怪訝そうに辺りを見回したかと思うと、足早に去って行く。
レオンもメィシーも彼女を気遣っていたけれど、グレイだけは、ひとりその背中を見つめていた。
「あの、また練習していいですか?」
「うん、もちろん!」
魔力増幅を使う練習ということで、彼女が手をにぎってくれるこの時間を彼はひそかに――いや、顔には出ているが――楽しみにしていた。彼女に渡した魔力を、少し増やして返してもらうことの繰り返し。
しかし、今日は突然、バチリと音がするかと思うほどの衝撃で一気にレオンへ魔力が戻される。
「痛った!? えっ、リセナ、出力上がってない?」
「え、あ、ごめんなさい……!」
「待ってね、身体強化も同時にするから」
一晩でこんなに変わるものなのかと驚きつつ、レオンは昨日リセナと同室だった約一名の顔を思い出す。
「……ねえ、リセナ、メィシーになにかされた?」
「えっ、いや、その……手伝って、もらったというか。いまレオとしてるのと、あんまり変わらないです」
リセナは目をそらしてはぐらかす。余裕のない姿をメィシーに見せてしまったことを、なんとなく、レオンには隠しておこうと思ったのだ。
「そう……?」
疑わしそうにしながら、彼はベルトに差していた剣の柄をにぎる。
「ちょっと、さすがに上限だから魔力使うね……!」
押し出されるように柄へ魔力を流すと、炎の刃が無駄に勢いよく噴出した。もう、ちょっとした火柱だ。
「うっわ!!?」
「わぁあ抑えてください! 町でそれはまずいです!」
「むりむり責任取って! こんなにしたの、きみだからね!」
メィシーが扉を開けると、熱くて真っ赤で騒々しい光景が広がっていた。
「わお……。あの、世界樹だけは燃やさないでくださいね? アレがないと、世界から魔法が消滅するので……」
その直後、グレイに剣を叩き落とされてようやく鎮火していた。はじめから手を離せばよかったのだが。
「さて、検査結果ですが」
さすがに人が集まってきたので、場所を変え歩きながらメィシーが切り出す。
「結論から申し上げますと、リセナ――。あなたの心臓、小さな世界樹みたいなことになっています。もしかして、世界樹の実でも食べました?」
「へっ? いやいや、そんな高価なもの食べたことないです!」
それにしても、全く意味の分からない結論だ。
「え? どういうことですか……?」
「えっと、なぜか、心臓に魔素を作る機能……らしきものが、あるようなんです。あなたの力は、渡された魔力にその魔素を追加して増幅させているようなんですが……」
「????」
「とにかく、必要なものをそろえたら、この町を出ましょうか。ダンが解剖させろと言って聞かないのでイスに縛り付けてきたのですが、長くはもたないでしょうし」
心ここにあらずなリセナは、そのまま前で立ち止まっていた人に思いきりぶつかった。
「あいたっ……わ、ごめんなさい……!」
見上げると、警備兵用の白い隊服に身を包んだ、金髪碧眼の青年がいた。二つある泣きぼくろが印象的な彼は、どこかぼんやりこちらを見ていたが、ハッと我に返ると小さく会釈する。
「いえ、失礼いたしました」
そして怪訝そうに辺りを見回したかと思うと、足早に去って行く。
レオンもメィシーも彼女を気遣っていたけれど、グレイだけは、ひとりその背中を見つめていた。
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