追放されたオレを拾ったやつが超カンジ悪い!

甘糖めぐる

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おまけ あの時のジュード視点(※本編微ネタバレ有)

1〜3話のこと

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 暗闇の中、ふと、なにかが目についた。

 近付いてみると、人間だった。いくらか傷を負ってダンジョンで倒れている――死んでいるかもしれないが、こうやって油断させて襲ってくる可能性もある。
 すぐに飛び退けるよう足先でつついてみると、大きな目が開いてこちらをぼんやりと見た。

「救助……?」

 なんで救助が来ると思うんだ。ダンジョンの探索なんて王家から使い捨てにされているようなものだし、一人で入って来たのでなければ仲間に見捨てられたんだろうに。

 本当に死んでいるなら認識票を持って行こうと思ったが、まあ――

「生きてるならいい」
「ちょっと待って! 助けて! 足をくじいたんだ!」

 そのままにしようと思ったら、そいつは、解呪が使えるだなんて言い出した。解呪方法を探している俺の目の前に現れるには、おあつらえ向きすぎて怪しい。呪いを使う魔物対策で連れて来られた可能性もあるが……。
 まあ、の差し金だとしても、いざとなれば始末できそうな隙の多さだったから拾って行くことにした。

 リヒト・リンデル。こいつの手にはじめて触れた時、神経異常の呪いが無効化され、久方ぶりの痛みを感じて――
 そして、全身を血が駆け巡る生きているのがわかった。

 こいつの髪と目――その金色が、魔法灯の光をはね返して、やけに明るく見えていた。

 ◇◇◇

 それにしても、うるさい。エマを狙っているのも許せない。今からでも、元の場所に捨てて来ようか本気で迷った。

 だが、リヒトに触れている間だけ、ずっと失われていた感覚が戻って来る。しかも、頬に触れてみると、やけに肌のきめが細かくて手に吸い付くようだし、柔らかくてなんともいえない弾力がある。

 ――アレだな、エマが昔、ネコの肉球をずっと触っていた気持ちがわかる。

 反抗的なのも、動物だと思えばギリギリ許容できる……

「オレ、お前と同じベッドで寝るの……? 寝てる時に感覚いる? そこのソファじゃダメ?」

 本当にわがままなやつだな。

 でも……俺が十年前から呪いに侵されていると知った途端、リヒトが、いきなり手を握ってきた。口元がわずかに震えて、切羽詰まった顔で、こちらを見上げてくる。

 ――なんで。なんでお前が、そんな泣きそうになってるんだ。

 意味がわからなくて、どう返せばいいかもわからなくて、視線をそらす。

「もう、寝るぞ」
「……はいはい」

 もう、考えるのも面倒だな。こいつは今から抱き枕だ。

 ……温かい。やわらかい。そのうえ、動く。
 壁やテーブルの感触も、十年ぶりとなると新鮮で気を引かれたが……

 こいつに触れているのが、一番、面白いな。
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