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4、片鱗
しおりを挟む茶会での告白に次いで閨教育に拒否反応を示して起こしてしまったあの愚行。
何度も謝罪の手紙を出したが、返事は一度「冷却期間を置きたい」と返ってきたのみ。
私は酷く絶望するも、アヒムに従うしか他に無い。
その後三か月ほど茶会はなく、手紙も多く送り過ぎて「無用な内容の物を大量に送り付けられては困る」と諫められ、やることなすこと裏目に出てしまう。
しかしながら、私は距離を置かれた期間も必死で勉強をつづけた。
アヒムが学園へ入学すると聞いたからだ。
私の家は子爵。
学園へ入学するほどのお金を簡単に支払えるほど裕福ではない。
また、入学理由としてもアヒムの家へ嫁入りが決まっている私が学園へ無理やり通う必要はなく、両親に頼み込んだところで入学を許して貰える可能性は低い。
となれば、後は奨学金制度を活用するか学力を認めて貰い特待生として入学するかだ。
どちらも定員があり、一定以上の学力が無ければ望めない。
父と母に試験を受けることを内緒にするのはさすがに無理だったので、学園で学ぶことに憧れているが、奨学金を貰うことも特待生になることも叶わなければ諦めるから、試験だけは受けさせてほしいと相談した。
「テレーゼ…もしかしてアヒムが入学するから追いかけたいのかい?」
父の穏やかな問いに、一気に羞恥が昇って来る。
(私は…アヒム様にあれだけ言われたのに同じことを繰り返してしまっている)
男の気を引くために勉強するなんてみっともない、というアヒムの言葉が過る。
でも、どうしてもアヒムと同じ学び舎で勉強したい。
そうすればこの溝も埋まるかもしれないし、行き帰りは婚約者と同じ馬車でと言うのが通例らしい。
もっと一緒にいられる時間が増える、そう考えるだけで胸が弾む。
「ふふ。テレーゼは情熱的なのね」
「やれることを増やすのは良い事だ。例え目標が何であれね。やれるだけやってみなさい」
「…ありがとうございます!」
「ただし。前回のようにアヒムに、アトキン伯爵家に迷惑を掛けるような事をしたらすぐにやめさせるよ。わかったね」
「はい」
アトキン家からこそ苦情は来ていないが、私は前回の閨教育のことでアヒムに詰め寄ったことを伝えある。
アヒムからも特に報告はなく、三カ月ほど茶会を無しにしたのは入学準備が忙しいとの理由付けだ。
本人たちから何も言われなかったことが逆に堪えたが、気に病んでいても仕方ない。
今度は間違えないようにしなければ。
私は家庭教師に習う以外に国立図書館へと通い詰めた。
そこには膨大な資料・歴史・物語があった。
その量に圧倒されながらも勉強の合間につい興味のある本にも手を伸ばしてしまうが、自己管理には休息も必要だからと言い訳しながら読むそれらは大変興味深く、感銘を受けるものばかりだった。
(もっと早く来てみればよかったわ。…砂が多くある乾燥した地域ではスパイスの生産が盛んなのは知っていたけど、スパイスの中には虫が寄り付かないくらい刺激の強いものがあるのね)
最近作物の病害が問題になっているが、その原因は病害を運んでくる虫が葉や茎を食むことにあるらしい。
私の家の領地も例外ではなく、ぶどうを筆頭とした甘い果物が被害を被っている。
今のところ致命的なダメージにこそなっていないが、この病害を無くせたら作物の出来高はぐんと上がるだろう。
(……どうしよう。試してみたい)
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