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第10話『呪い勇者は、仲間と今を楽しんでいる』

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 「エリィ、今日も素敵ですね」
 「カケルこそ、いつもよりかっこいいよ?」

 俺は、いつにも増してエリクシアの白銀に輝く長い髪をブラシでとかしていた。それを見ていたマリエルとアリアドネは、俺の異変を見逃さない。

 ーーそう、俺とエリクシアは完全に浮かれていたのだ。

 「あの二人、頭がおかしくなってますよ」
 「そうですわね。カケル様を独占するなんて羨ましい!」
 「私が言いたいのはそうではありません!」
 「どういうことです?」
 「数々の困難を乗り越えて浮かれているんでしょう」
 「まぁ。だからあんな腑抜けた顔に……」

 俺とエリクシアは、笑みが隠し切れずに脳みそがお花畑になっていた。

 だって仕方ないだろ?

 エリクシアと共に生きようと誓った俺らは、イフリートの討伐やら事件に巻き込まれて、大変だったんだから。息抜きも必要です。

 だけど、大切な仲間も出来た。

 胸が小さい事を気にするゴスロリ天才魔術師に、誰よりも優しい心を持つ爆乳シスターがパーティに入ってくれたんだ。浮かれなくてどうするってんだよ。

 短い期間でうちの屋敷は、女性だらけになってしまった。でも、これで良かったのかもしれない。エリクシアが、気軽に仲良く話しが出来る環境を作りだすことが出来たんだから。

 こればっかりは、感謝しても仕切れない。

 「もう、カケルさん! だらし無いのも大概にして下さい!」

 「おや? 貧乳様ではありませんか。おはようございます」

 「私は貧乳じゃないです。いやらしい眼で見ないで下さい! 私を貧乳と呼ぶのなら、エリクシアだって貧乳じゃないですか!」

 「ん? 訳がわからないですねエリィさん?」

 「そうねカケル。子供と張り合うなんて大人げ無いわ」

 「カケルさんの馬鹿!!」

 強烈な一撃が俺の額に直撃する。まるで隕石が落下したような衝撃に頭がクラクラしてきた。殴られたことにより自我が戻ってきたが、ただ殴られるのも尺なんで嫌味を言って追撃した。

 「す、すまん! お前の胸は柔らかかったぞ?」
 「ヒィ~!! この変態!」
 「まぁ、私もマリエル様のお胸を触りたいですわ」
 「みんなして止めて下さい!」

 俺らの日常なんてこんなものである。勿論、大切な仲間だしパーティなんだ。俺は、このみんな可愛い家族のような空間をこれからもずっと護っていかなければいけない。

 「カケル様はダンジョンの時、あんなにもかっこいいのに私達の前では常に楽しそうですね」

 「そうですよ? カケルさんは、あれでも私達を何よりも大切にしているんですから」

 「マリエルさんが出会った時のカケル様は、どうだったのですか?」

 「決まっているじゃないですか。相当なまでに格好いい人でしたよ」

 陰でヒソヒソと、内緒話をしているマリエルとアリアドネをしりめに、エリクシアと俺は笑って仲間と平和な時間を楽しんでいた。

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