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【第一章 ハズレモノ胎動編】
008「エルクレーン王国総合学園」
しおりを挟む——次の日
俺たちはブキャナン宰相の部下に連れられて、エルクレーン王国の教育機関『エルクレーン王国総合学園』にやってきた。
「どうも、初めまして。学園長のモーリス・ガーフィールドです」
一通りの挨拶をした後、学園長からこの学園での過ごし方や授業についての話を聞いた。
それによると、異世界人は成長速度が早いため、先にレベリングを優先するとのこと。魔法や剣術、武術といった『ステータス』がモノをいう『授業』は、他の生徒たちがすぐについていけなくなるので、救世主は一ヶ月専用の授業⋯⋯『特訓カリキュラム』として授業を組んでいるらしい。
ということで、魔法を教える教師、剣術を教える教師、体術を教える教師、魔道具を教える教師と一人ずつ紹介された。するとここで、
「おい、クサカベ!」
もはや『様』付けしなくなったブキャナンが、雑な感じで声をかけた。
「今の『特訓カリキュラム』の話だが、お前は一ヶ月だけとなる」
「え? 一ヶ月だけ?」
「そうだ。一ヶ月後には間違いなく、貴様以外の救世主様たちとお前とでは圧倒的な能力差が出ているからだ。つまり、それ以降、お前はこの特訓カリキュラムには必要なくなるだろう」
「うう⋯⋯」
悔しいが⋯⋯普通に考えれば、ブキャナンの言う通りの結末が待っているだろう。
「まあ正直、私はまったく期待していないが、もしも、この一ヶ月でお前の能力が開花し、他の救世主様たちと同じ強さを身につけることができれば、一ヶ月後もここに残って特訓カリキュラムを学ぶことを許可してやろう」
「え?」
「フン。まあ、一ヶ月、足掻いてみろ。では、これより早速魔法の授業から始めますよ、救世主様方! 先生、宜しく頼む!」
そう言って、ブキャナンはすぐに魔法の先生を呼び、授業を始めるよう指示した。
そうか⋯⋯一ヶ月か。一ヶ月で、もし俺の力が皆と同じくらいに成長すれば『救世主』として活躍できる道がある!
俺は、ブキャナンの言葉を聞いて、いっそう気合いを入れた。
********************
——学園生活一日目、終了後
俺たちは『王宮の間』でシャルロットに呼び出されていた。
「どうでしたか、学園は?」
「はい。とても優秀な先生方のおかげで初日でしたがレベルが全員『4』まで上がりました!」
小山田が自信たっぷりの笑顔でシャルロットに答える。
「まあ!」
「⋯⋯あ、すみません。『日下部以外』でした」
いつもどおりの嫌みは忘れないな。
「⋯⋯そうですか。クサカベ様、学園は大変でしたか?」
「え? あ、いや、その⋯⋯た、大変でしたけど⋯⋯充実しました!」
俺はまさかシャルロットに声をかけられるとは思わなかったので、またもどもってしまった。
だが、せっかくシャルロットが俺に声をかけてくれたので、俺は素直な気持ちを告げた。
そう、確かに俺は充実していた。実際、俺以外のみんなは一日目で自主訓練でもどんどんレベルが上がっていき、俺はすぐについていけなくなっていたが、それでも『頑張れば報われる』と信じて、必死に頑張っていたので特訓初日を終えて、とても清々しい気持ちだった。
「ふふ、そうなんですね。たしかにクサカベ様のお顔は昨日と打って変わって、とてもキラキラ輝いていますもの」
「はい、ありがとうございます!」
「でも、焦らなくていいのですよ。ちなみに私がブキャナンに無理を言って、あなたを一ヶ月間だけ他の救世主の皆様と同じように『特訓カリキュラム』に参加できるようお願いしました」
「え?! そ、そうだったんですか!」
「はい。だって、クサカベ様も異世界召喚魔法で『召喚に選ばれた一人』であることには変わりありませんもの。もしかしたら、才能が後から開花するかもしれません。いいえ、私はそうなると信じています!」
「シャ、シャルロット様⋯⋯」
う、嬉しい。まさか、シャルロットが俺の才能が開花することを信じてくれているなんて⋯⋯。
「それは、どうでしょうか?」
「?? ヒイラギ⋯⋯様?」
「彼は私たちと一緒に特訓を受けたが、レベルがまったく上がらなかったんですよ? しかも、午後の特訓からほとんどついていけず、結局私たちの半分以下の特訓しかこなせなかったんですよ? なので、日下部には『特訓カリキュラム』に参加するのはやめてもらい、明日から他の一般の生徒と同じく授業を受けさせた方がよろしいのでは?」
ここで、柊木がシャルロットに俺への嫌みをたっぷり込めた提言をし始めた。すると、
「そうそう。正直、瑛二には無理だと思いま~す。特訓初日で、すでについていけないんだから。時間の無駄ですし、お金の無駄でもないですか~?」
小山田がいつものように援護射撃をする。これまでなら俺をハブらせようとする発言はこの二人で終わるはずだったが⋯⋯⋯⋯今回は違った。
「俺もそう思う」
「っ!? 翔太⋯⋯君!」
「僕も三人と同じ意見です」
「よ、吉村君⋯⋯」
「そうですね。残念ですが⋯⋯私も日下部君は無理だと思います」
「古河さん⋯⋯」
「私もみんなと同じ意見です。このまま続けても日下部君が強くなることは難しいんじゃないかなと思います」
「ユ、ユーミン。せ、先生⋯⋯まで⋯⋯」
ま、まさか、柊木と小山田だけでなく、全員がそんなことを言うなんて⋯⋯。
ああ、決まったな。
もう、これで俺は『特訓カリキュラム』から外される。
ま、そりゃそうか。特訓初日でもうみんなについていけてなかったんだから。
悔しいけど、やっぱり俺みたいな⋯⋯、
「そうでしょうか? 私はそうは思いません」
「「「「「え⋯⋯?」」」」」
シャルロットのまさかの言葉に、みんなが呆気に取られた。俺も含めて。
「私には、どうしても日下部様が『何も力がない』なんて⋯⋯思えません」
「な、何をっ!? だって、シャルロットも見ただろ! 日下部の悲惨なステータスを⋯⋯っ!?」
「そうだ! それに実際、特訓をやってみてもすぐにレベルが上がる俺たちと違って、全然レベルが上がらなかったんですよ!?」
柊木と小山田が必死にシャルロットに俺の『無能ぶり』をアピールする。しかし、
「才能というのは遅咲きなものもあります。ですので、今の段階で成長が遅いからといってクサカベ様を『特訓カリキュラム』から外すことはしません! これは女王命令です!」
「バ、バカな⋯⋯。シャルロット、君はどうしてそこまで日下部を庇うんだ?! エコ贔屓にも程があるじゃないか!」
柊木が突然、シャルロットに訳のわからない文句を言う。
「エコ贔屓? そうでしょうか? むしろ、クサカベ様にとっては他の救世主様たちと『特訓カリキュラム』に参加するというのは大変な努力が必要になるのですよ? ですが、クサカベ様はそれでも頑張るという強い意志を持っています。そうですよね⋯⋯クサカベ様?」
「は、はいっ!!!!」
俺は、シャルロットの問いに全力で即答した。
「フフフ⋯⋯良いお返事です。では、これにて今日は解散とします。皆さん、今日はゆっくり休んで、また明日特訓を頑張ってくださいませ」
「解散っ!」
兵士が俺たちに「解散」と告げ、この集まりの終わりを宣言する。
「あ、クサカベ様!」
「え? は、はい!」
「これから一ヶ月⋯⋯ファイトですっ!」
「っ!? は、はいっ!!!!」
俺はシャルロットの満面の笑顔&『ファイトですっ!』をいただいた。
ほ、ほほほ、惚れてまうやろー、われー!
俺は明日の特訓も頑張ろうと一人気合いを入れた。⋯⋯チョロいな、俺。
——そんな浮かれた俺は、柊木が『親の仇』のように顔を歪ませ睨みつけていたことに気づくことはなかった。
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