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【第二章 ハズレモノ旺盛編】
028「報告と辞退」
しおりを挟む「お久しぶりです、シャルロット様⋯⋯」
俺は約一週間ぶりの『王宮の間』に入ると、最初にシャルロットに生還の報告をする。
周囲を見渡すと、皆が勢揃いしている。そして、当然のように柊木、小山田、吉村は俺を見て、真っ青な顔を浮かべていた。
(くっくっく⋯⋯いいぞ、その顔が見たかったんだ、俺は)
俺は「お楽しみはこれからだ」と言わんばかりに、三人にニチャァと素敵な笑みを送ろうとした⋯⋯⋯⋯その時だった。
「クサカベ様っ!!!!」
タタタタタタ⋯⋯ガシっ!
シャルロットが椅子から急に立ち上がると、周囲の制止を振り切り、透き通るようなライトブルーのショートカットを激しく揺らしながら俺のところへ駆け寄ると、胸に思いっきり飛び込んできて抱きしめられた。
大事なのでもう一度言おう⋯⋯⋯⋯『思いっきり・飛び込んできて・抱きしめられた』。
「ファっ?! シャ、シャルロット様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁjkえjぁjフジコ⋯⋯っ!?」
とりあえず、安定の童貞キョドリ発動しました。
「よかったっ! 生きてたっ! 本当に生きてたっ!⋯⋯本⋯⋯当に⋯⋯生きてて⋯⋯よか⋯⋯った⋯⋯」
「シャ、シャルロット様っ!?」
見ると、シャルロットは俺の胸に顔をうずめながらボロボロと涙をこぼしていた。それを見た俺は「この人は本当に俺が生きていたことを心の底から喜んでくれているんだ⋯⋯」と感動すると同時に、「この人のためなら命を懸けられる」とも思った。
さて⋯⋯⋯⋯シャルロットが俺の生還にここまで喜んでくれたのはとても嬉しかったのだが、しかし周囲には、柊木たちやクラスメート、ブキャナン宰相や学園の先生、他にもお偉いさん方や複数の兵士などとなかなかの大人数がいた。
そんな大人数の中でシャルロットは俺に飛び込み抱きしめてきたのだ。
ただ、皆、俺が本当に生きていたことや、シャルロットの行動に呆気に取られ固まっていたこともあり、最初は『時』が止まったかのような状態となっていた。
——しかし、時は再び動き出す
「シャ、シャルロット様⋯⋯っ!? そんな、不作法な! すぐにこちらへお戻りくださいっ!!!!!」
「えー、やだー」
「⋯⋯へ?」
シャルロットの態度が変わったのを見て、ブキャナンが気の抜けた声を一瞬漏らす。⋯⋯が、すぐにシャルロットのところへ行き彼女を捕まえると、俺から強引に引き剥がそうとする。
しかし、シャルロットは「やー! やー!」と、これまで見た事ないような『駄々っ子ポンコツキャラ』で、ブキャナンが無理矢理引き剥がそうとするのを必死に耐えていた。
しかし、ブキャナンにはそんなシャルロットの抵抗は通用することなく、ズルズル⋯⋯と強引に俺からひっぺがえして椅子に座らせた。
「シャルロット様! どうしたのですか! 昔の素が出てるじゃないですか! しっかりしてください!」
「え~、しょんなことないよぉぉ~⋯⋯⋯⋯⋯⋯はっ!? す、すみません! 失礼いたしました!!!!」
そう言うと、シャルロットは慌てていつもの姿に戻った。
何⋯⋯だとっ!?
さっきの『駄々っ子ポンコツキャラ』がシャルロットの素⋯⋯だとっ!?
俺は先ほどの『駄々っ子シャル』の姿を思い出しつつ、シャルロットの顔をジーと見つめた。
「ク、クサカベ様っ!?⋯⋯見過ぎっ!!」
あ、こりゃ失礼。
********************
——一旦、落ち着いた『王宮の間』
「ところで、クサカベ様⋯⋯ダンジョンからどうやって生還できたのですか? 聞いた話では、3階層で魔物に崖に突き落とされたと聞きましたが⋯⋯」
そう言って、シャルロットが柊木たちから聞いた話を俺に伝えた。
なるほど⋯⋯。俺が崖から落ちたのは『自業自得』となっていたのか。
それにしても『俺が崖に落ちるまでの話』は作り話とはいえ、あまりにも酷い内容だった。
「ふ~ん、なるほど。そういうことになっているんですね」
「え?⋯⋯そういうこと?」
そう言って、俺はチラッと柊木たちに視線を一瞬だけ送る。柊木、小山田、吉村が青ざめた顔をしている。
まあ、ここで『バラす』のも面白そうではあるが、これでは、あいつらへの仕返しにはならない。なぜなら、今の俺と柊木たちじゃ、信用度に違いがあるからだ。もちろん、柊木たちのほうが信用度は高い。
そんな信用度の低い俺が何を言ったところで、あいつらが『ありもしない話』で反論すれば、ここにいる奴らは柊木たちの言葉を信用するだろう。そうなると『ざまぁ』どころの話じゃなくなってくる。
なので一応、俺はその柊木たちの『作り話』に乗っかることにした。
ただまあ、『自分のワガママが原因で死んだ』などというのを肯定するのはムカつくので、少し、柊木たちに『揺さぶり』をかけておく。
「ああ、その話は概ね本当だ。⋯⋯ただ『俺のワガママが原因で今回の事故を招いた』ていう話は驚いたけどな⋯⋯」
「え? どういう⋯⋯ことですか?」
俺は、シャルロットの質問に一部肯定しながらも、柊木たちのほうに笑みを送る。すると、
「なんだ、貴様? 今のその人を小馬鹿にしたような笑みは⋯⋯?」
そこにブキャナン宰相が割って入ってきた。
「貴様の勝手な行動で⋯⋯どれだけの者たちが心配したと思っているんだぁっ!!」
ブキャナンがさも正論のような言葉で俺を恫喝する。しかし、
「ふ~ん⋯⋯⋯⋯⋯⋯で? 誰が心配したんだ?」
「な、何⋯⋯っ?!」
「正直、今ここに来てすぐにわかったよ。俺のことを本気で心配してくれていたのはシャルロット様くらいなんだってな⋯⋯」
「ク、クサカベ様⋯⋯っ!?」
顔を赤らめるシャルロットを見て俺はドキッとする。⋯⋯が、今はそんな状況ではないので一度「コホン」と咳払いし、再びブキャナンに向き合う。
「そ、そんなことはない! 皆、心配し⋯⋯」
「ほう? じゃあ、あんたも心配してたってのか? あれだけ俺を『無能だ』『クズステータスだ』とコキ下ろしていたあんたが? そんなことないよな?」
「⋯⋯」
「それに俺はお荷物なんだろ? だったら俺はいないほうがいいよな? あれ? もしかして、あんたも⋯⋯⋯⋯一枚噛んでる?」
「一枚噛む⋯⋯だと? 何のことだ?」
俺は、ここでも柊木たちに『揺さぶり』を入れておこうとチラッとあいつらを見た。すると、さっきよりもさらに顔が真っ青になっている。⋯⋯フフフ、いい顔してるじゃないか(効いてる、効いてる)。
「さ~てね。まあでも、確かにシャルロット様を心配させたのは悪かったと認める。だから、俺はその責任を取って⋯⋯⋯⋯救世主を辞退するよ」
「何っ!?」
「ええっ!? ど、どうして⋯⋯っ!!!!」
ブキャナンにとって、俺の言葉は意外だったようで一瞬驚く。⋯⋯が、その後しっかりと笑みをこぼしていた。どうやら喜んでいるようだ。それに引き換え、シャルロットは俺の『救世主を辞退する』という言葉に心の底からショックを受けているようだった。
「⋯⋯なるほど。口では生意気なことを言っていたが、ちゃんと周りに迷惑をかけたという自覚はあるようだな。そうか、そうか、ならば仕方あるまい。お前のその心意気、認めようっ!」
ブキャナンはいかにも『俺が周囲に迷惑をかけた』という部分を強調しつつ、自分の理想通りの展開になったことを喜んでいるようで、俺の『救世主辞退』をすぐに認めた。
シャルロットは「そ、そんな、横暴です!」とブキャナンに食ってかかったが、ブキャナンは「彼が自分で責任を感じて決断したことです、シャルロット様。彼の意思を尊重すべきです!」などと言って、反論するシャルロットの言葉を強引に止めた。
「いいんです、シャルロット様。これは俺自身が決めたことなのでそれで構いません!」
「そ、そんな⋯⋯」
俺をどうにか救おうとするシャルロットの気持ちがとても嬉しかったが、心を鬼にしてシャルロットに「自分が決めたことだから」と告げた。
シャルロットはショックを受けつつも、俺が自分の言葉でちゃんと話していることを感じ取ったようで、少し迷うも最終的には「わかりました」と了承してくれた。
ブキャナンは俺が『救世主を辞退すること』を望んでいたからだろう⋯⋯その願いが叶ったのでいつもよりもご機嫌な感じだった。対して、シャルロットは俺の辞退にショックを受けているが、しかし「この後も何とか力になりたい」というような雰囲気を示していた。⋯⋯本当、いい子だよな、シャルロット。
しかし⋯⋯俺はこのタイミングを待っていた。
「⋯⋯ブキャナン宰相。救世主を辞退することで、一つお願いがあります」
「願い? なんだ、言うてみよ?」
「前にも話しましたが、今後この世界で生活していくために学園で学びたいので、学生として通うことを許可してもらえないでしょうか?」
「ぬ? 学園の生徒に⋯⋯だと?」
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