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【第二章 ハズレモノ旺盛編】
044「決闘」
しおりを挟む「えーと、元救世主の自分が言うのも変ですし⋯⋯でも、まだ見たことがないので教えて欲しいのですが⋯⋯⋯⋯『魔族』ってどこにいるんですか?」
「「「「「⋯⋯っ!!!!!」」」」」
その質問をしたとき、教室内が一瞬静まり返った⋯⋯が、
「「「「「ギャハハハハハハハハっ!!!!」」」」」
生徒全員の笑い声が教室内を大きく包み込んだ。
「いや~マジかよ?! 本当にこの救世主様は『元救世主』なんだな!」
「俺たちだって魔族とは戦ったことがあるってのに、この元救世主様は一度も戦ったことがないんだな!」
「嘘でしょ!? 魔族と戦ったことがない救世主なんて、それただの『無職』じゃない! あ、だから『元救世主』なのか! キャハハハ」
なるほど。生徒みなさんの声をまとめると、
——————————————————
【生徒の声まとめ】
・学園の生徒は魔族と戦ったことがある
・救世主のくせに魔族と戦ったことがないなんてあり得ない
・とにかく元救世主の俺を笑いものにしたい(主観)
——————————————————
「まったく⋯⋯これだから『救世主』という奴らは信用できん」
「ですよね! ジュード様」
「「「おお! ジュード様!」」」
ワッ!
そんな中、『ジュード様』と呼ばれる生徒が声を上げると、数人の生徒がその男に媚を売るような声で彼の発言に歓喜する。
「先生」
「なんだ、ジュード?」
「発言をよろしいでしょうか?」
「⋯⋯いいだろう」
「私の名は『ジュード・プリンシパル』。⋯⋯名門『プリンシパル伯爵家』の者だ。いきなりで悪いが正直私は『救世主』が嫌いだ。そして、それはここにいる生徒全員の総意でもある」
「「「「「キャー! ジュード様ぁぁー!!」」」」」
「⋯⋯⋯⋯」
突如、登場し場をし切り出したのは『ジュード』という⋯⋯え~と⋯⋯その~、
「ごめん。あの~ちょっといいかな~⋯⋯」
「!⋯⋯なんだ?」
「お前って男? 女? どっち?」
「⋯⋯なっ!? き、貴様⋯⋯よくも私に向かってそのようなことを⋯⋯」
「あ、わかった。男だろ?」
「女だぁぁぁぁーーーーっ!!!!!!!!」
ジュードという『女』と判明した彼女は顔を真っ赤にして大声を上げた。
「悪ぃ悪ぃ。でも、どっちにしても、それだけ『美形』ならいいじゃん」
「っ!? び、美形⋯⋯!」
「ああ。まあ『可愛らしい』というより『美しい』といった感じの美形だな」
「な、ななななななななな⋯⋯っ!!!!!!」
俺の言葉にさらに顔を真っ赤に染め上げるジュード・プリンシパル。
「き、きききき、貴様! ま、また、そのような戯言をっ!!」
「え? 戯言じゃないよ? ジュードは美しいよ?」
「~~~~~っ!!!! こ、この、こにょぉぉ~~~!!!!!!!」
う~ん、なんだろう? ちょっとやりすぎた感が⋯⋯。すると、
「⋯⋯静かに。確かに元救世主なのに魔族と戦ったことがないのは心外かもしれないが、まあ、この男はまだこの世界に来てまだ一ヶ月⋯⋯。しかも、その途中で力なく脱落となったのだ。だから、少しは同情してやれ、みんな」
ここで、ケイティ先生が場を収めるような言葉を出す。⋯⋯て、先生! ちょっと言葉が『辛辣』過ぎませんっ?!
そんなケイティ先生の言葉でこの場が収まろうとした⋯⋯その時だった。
「エイジ・クサカベ!」
「は、はいっ!?」
「⋯⋯決闘よ」
「え?」
決闘?
「お、おい、ジュード・プリンシパル! 勝手に何を⋯⋯」
「先生! 彼は私に対して『男か? 女か?』と愚弄しました! その言葉は私にとっては耐え難いもの!⋯⋯ですから決闘を申し込みます!!」
突然、降って湧いたような『決闘』をジュード・プリンシパルという女に申し込まれた俺。
「キャァァー! ジュード様の決闘が見られるーーーっ!!!!」
「ジュード様ぁぁー! こんな、インチキ救世主ボコボコにしてくださいぃぃーー!!!!」
すると、周囲の生徒が一斉にジュードの『決闘発言』を支持していく。
「ケイティ先生! どうか、この元救世主との決闘を許可してください!」
「ジュード⋯⋯プリンシパル」
「お願いします!」
「⋯⋯わかった、許可しよう」
「ありがとうございますっ!!!!」
「「「「「ワァァァァァァァァっ!!!!!!」」」」」」
ケイティ先生がジュード・プリンシパルの俺への『決闘宣言』を許可すると、周囲もその言葉に歓声を上げる。
「ただし、私が審判を務める。何かあったらすぐに止めるからな」
「もちろんです! 私だって騎士です。その男に『身の程をわからせる』だけですから」
「ああ、わかってる。ということで元救世主⋯⋯⋯⋯エイジ・クサカベ!」
「はい」
「次の授業を使って、中庭でお前とジュードの決闘だ」
「また急ですね? ちなみに俺に『拒否権』はないのでしょうか?」
「そんなものはない。貴族の申し出に平民が受けるのは絶対だ」
キャー、だいぶ理不尽。
「わかりました。じゃあ決闘します」
「まあ、私もそこまで『鬼』ではない。ちゃんと大ケガしないようにフォローしてやる」
「⋯⋯ありがとうございます」
どうやら、一応ケイティ先生は俺のこともちゃんと考えてくれているよう⋯⋯だ?
「では、次の授業の時間を使ってジュード・プリンシパルとエイジ・クサカベの決闘を行う。中庭に集合だ!」
「「「「「うおおおおおおお!!!!!」」」」」
ケイティ先生の言葉に生徒全員が興奮の声を上げる。
なるほど。どうやらみんな、俺がジュード・プリンシパルにやられる様を見たいようだ。
⋯⋯⋯⋯『舞台』は整った。
「計画通り(ニチャァ)」
俺は誰にも聞こえないよう、一人ボソッと『デスノ呟き』をした。
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