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【第二章 ハズレモノ旺盛編】
051「ジョルジオ・マッケラン」
しおりを挟む「ま、結論から言うと俺は⋯⋯⋯⋯元公爵家だからさ」
「⋯⋯え?」
ニコニコ笑うそのジョルジオの口から、とんでもない発言が飛び出した。
「も、ももも、元公爵家ぇぇぇぇぇ~~~っ!!!!!」
え? え? 何? どういうこと?
俺がジョルジオの発言にプチ混乱していたが、当の本人は俺の素振りには気にも止めず、
「いや~、そうなんだよ~⋯⋯私は『元公爵家』だったんだよね~。セインたちとは私が十歳くらいまで遊んでいたから、ついああいう話し方をしてしまうんだけど⋯⋯本当は言葉遣いは直さなくちゃいけないんだよね、ハハハ⋯⋯」
そう言って、ジョルジオが笑いながら説明した。
「十歳⋯⋯というと、約六年前ってことか。何があったん⋯⋯⋯⋯っ!?」
エイジがジョルジオに理由を聞こうとした時だった。
スッ⋯⋯。
「っ?!」
「エイジ⋯⋯これ以上は聞かないでくれ」
取り巻き4のリーダーであるフェリオ・リーチがジョルジオの前に出た。
「⋯⋯いいよ、フェリオ」
「っ?! ジョルジオ様!!」
そう言うと、ジョルジオがフェリオの前に出てエイジに声をかける。
「エイジ⋯⋯君とはこれから『長いつきあい』になると私は感じている。だから、君にはちゃんと話そう。⋯⋯聞いてくれるかい?」
「も、もちろんです!」
エイジの返事にニコッと一度笑みを返すジョルジオ。そして、
「⋯⋯あれは、今から六年前のことだ」
そう言って、ゆっくりと丁寧に説明してくれた。
——————————————————
【ジョルジオの過去】
・当時の宰相は二人おり、その一人で主に『内政』を任せられていた『右宰相』がジョルジオの父親『ラッセル・マッケラン』だった。ちなみに『左宰相』はブキャナン・ジオガルド
・六年前、父親が『国家転覆を謀り、国王を殺そうとした』として騎士団に捕まる
・父親は無実を主張。しかし、無実を示す証拠はなく、逆に『国王を殺そうとした証拠』や『国を乗っ取ろうとした証拠』などが次々と上がってきた
・父親の無罪の主張は認められず、結果、裁判で『国家反逆罪』として「死刑」を宣告される
・しかし、そこで左宰相でありリーゼロッテの父親でもある『ブキャナン・ジオガルド』が必死に彼のこれまでの功績を訴え、「どうにか減刑を!」と懇願
・ブキャナンにしては珍しい行動だったこともあり当時の王はブキャナンの言葉を受け入れる
・結果、ラッセルの死刑は免れることになるが、かわりに『公爵家』から『伯爵家』へと『降格処分』となり、さらに、それだけでなく現在の財産の九割を没収となった
・しかし、ラッセルは「命が助かっただけで十分です。ありがとうございます、陛下」と言って処分を全面的に受け入れた
——————————————————
「ま、そんな感じで今の私は伯爵家となったのさ」
「⋯⋯⋯⋯」
ジョルジオが笑いながら、軽いノリで俺に自分の過去を惜しげもなく説明してくれた。
ていうか、こんなヘビーな経験をしたのが十歳の頃って⋯⋯。なのに、ジョルジオはこんなにも笑顔って⋯⋯。
エイジは目の前のジョルジオ・マッケランを見て改めて思った。
こいつ⋯⋯スゲーな。
「⋯⋯ありがとう。話してくれて」
「当たり前のことだ。なんせ、お前は私の子分だからな!」
「はい、そうですね! ジョルジオ様!」
俺はジョルジオのことを改めて好きになった。それにしても⋯⋯、
「しかし、ちょっと驚きだな~」
「ん? 何がだい、エイジ?」
「いや、あのブキャナン宰相がジョルジオ様のお父さんを助けるために、抵抗したっていうのがさ。『減刑を求めた』ってことは裁判だったんですよね?」
「ああ」
「そんな裁判の判決を覆すなんて、よっぽどだったろうに。その判決に声を上げるなんて、今のブキャナン宰相からはとてもとても⋯⋯」
俺は軽くブキャナンをディスる。
「ハッハッハ、そうか! ブキャナン様はエイジによっぽどキツくあたったんだな!」
「そりゃ~もう⋯⋯」
「でもね、エイジ⋯⋯ブキャナン宰相は悪い人じゃないよ。ま、今のエイジにそんなこと言っても無駄だろうけどね。でも、彼は『本当にこの国に命を捧げている強い人』だから。それに私たち一家の『命の大恩人』でもあるしね」
「⋯⋯はい」
「何をされたかわからないけど、でも彼の言動や行動はすべて『この国のため』であることは間違いないから。そこだけはどうか理解して欲しい」
「⋯⋯⋯⋯」
「ま、あの性格だから誤解を招くことしかしないけど。ま、悪い人間ではないから」
「⋯⋯はい」
ジョルジオの話しぶりからすると、よっぽどブキャナン宰相は信頼されているんだな。そう考えると、もう少し、ブキャナン宰相のことを見定めるのは時間をかけようと思った。
********************
「ところで、ジョルジオ様のお父さんってどんな人なんですか?」
「⋯⋯どうして?」
「?」
ジョルジオにお父さんのことを聞いた瞬間——ジョルジオの雰囲気が変わった。少し、緊張が走っているようだ。⋯⋯ちなみに、それはジョルジオ以外の『取り巻き4』も同じ反応を示した。
なんだ?
「あ、いや、減刑されるだけの功績を残した人なら今は何をしているのかな⋯⋯て」
「なるほど⋯⋯そうだね、父はすごい功績を残していたよ。かつて、この国に侵攻を試みた外国勢力に対して外交だけで撤退させた⋯⋯とかね」
「ええっ?! 外交だけで!!」
そ、それって、つまり⋯⋯⋯⋯『話し合い』だけで侵略しようとした外国勢力を追い返したってことだぞ? すごくね?
「他にも色々あるけど⋯⋯⋯⋯でも、それは、今となっては過去の話だけどね」
「?⋯⋯ジョルジオ様?」
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