17 / 157
第一章
017「琴音さん家の巨峰」
しおりを挟む俺は今、『学校が終わるとダンジョンに潜る』という生活ルーティンをこなしていた。ちなみに土日祝の学校が休みの時もほとんど朝から晩までダンジョンに潜っている。
そんな、熱心に毎日ダンジョンに通っているからだろう。ある時、窓口のいつものお姉さんこと『石川琴音』さんに、
「ソラ君、E級探索者になるつもりはない?」
と声をかけられた。
「ソラ君、デビューしてからほとんど毎日ダンジョンに入ってるじゃない? もし結構強くなっているならF級からE級になることを考えるのも良いと思うんだけどどう? ちなみにE級になれば『E級以上』が条件となるダンジョンにも入れるようになるし、そうなればF級よりもお金になる魔物とかお宝もあるからいっぱい稼げるわよ」
とのこと。
「へ~いいですね。でも、E級にはどうすればなれるんですか?」
「『昇格対象となる魔物』を倒せば合格よ。だから実力さえ伴っていればすぐにでも昇格できるわよ」
「なるほど」
「昇格対象の魔物を倒して、倒した証明となる『判断部位』を持ってきてくれれば、それで合格となります。ま、基本的には片耳とか肩腕とか⋯⋯とにかく特徴となる魔物の部位を持ってきてもらえればオッケーよ」
「わかりました。近いうちにチャレンジできそうならやってみます」
「良い心掛けね! チャレンジは何度でも受け付けるから頑張って!」
「はい、ありがとうございます」
「あ! あと、パーティー単位でも試験を受けることができるから、もしそっちのほうが受かりやすそうならパーティーとして試験を受けるのもアリよ。ま、パーティー単位での試験だと合格対象の魔物はパーティーメンバー分の魔物を討伐する必要があるから注意してね」
「それは大丈夫です。僕、単独探索者なので」
「⋯⋯あ」
そう言うと、琴音さんが表情を曇らせる。おそらく俺を悲しませたとでも思っているのだろう。
「い、一応、言っておきますが、俺は好きで『単独探索者』をやっているので⋯⋯と、特に気にしないでください」
嫌な空気になったので、俺はそう言ってその場をすぐに立ち去ろうとした——その時だった。
「ごめんなさい、ソラ君っ!!!!」
むぎゅううううううううううううううううっ!!!!
「モッ! モゴォォォォ?!」
いきなり、琴音さんが自分の胸に僕の顔を押し付けるように抱き締めてきた。
「ごめんなさい! 私、ついうっかりしてソラ君を悲しませるようなことを言ってしまって⋯⋯」
「モ、モゴモゴォォ~~~っ!!!!」
琴音さんの『たわわなお胸』が俺の顔全体を優しく包み込む。
なるほど⋯⋯⋯⋯これが『楽園』か。
「私がこんなこと言うのもアレだけど⋯⋯でも、ソラ君に友達がいないなんて本当に信じられない! だって、こんなにも良い子なのにっ!! てか何なの、その学校の奴ら?! 私が生徒として入学してソラ君のお友達になっちゃおうかしらっ!!」
「モ、モゴォォ⋯⋯! プハッ! め、めちゃくちゃですよ、琴音さんっ!?」
と、琴音パイパイから顔を浮上させてツッコミを入れつつも、『琴音さん家の巨峰』をしっかりと堪能するべく、再度潜水を試みる思春期真っ盛りの俺。⋯⋯⋯⋯が、その時、
グイイイイイイイイイイイイイ~~~~~~~ッ!
「ちょ、ちょちょ、ちょっとぉぉー! 琴音さんから離れなさーーーーいっ!!」
琴音さんの家の巨峰の深淵へと潜水を試みた俺を何者かが強引に浮上させた。
「俺のアドベンチャーを邪魔する奴は誰だぁぁ!」と琴音さんから強引に引き剥がした犯人を見た。
「ん? 胡桃沢?」
俺の手を掴んで引き剥がした犯人は胡桃沢星蘭だった。その胡桃沢は顔を真っ赤にして、
「こ、ここここ、この⋯⋯⋯⋯⋯⋯ハレンチゲス探索者がぁぁぁ~~~~っ!!!!」
と叫ぶと、一切有無を言わせないような怒涛の説教を始めた。あと、その横にはもう一人、
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ~~~~! て、てめえ、なんつーうらやまけしからんことをぉぉぉぉぉぉ~~~~~っ!!!!」
「⋯⋯⋯⋯か、唐沢?」
唐沢が血の涙を流して、そんなことを叫んでいた。
まったく、二人は何をそんなに怒っているんだい?
僕はただ、琴音さん家の巨峰に身を委ねただけじゃないか。
そんなことで何を興奮しているんだか⋯⋯⋯⋯まったく大人げない奴らだ。
ちなみに唐沢と胡桃沢は、俺と一緒にギルドに足を運んだのをきっかけに最近よくギルドに顔を出すようになっていた。今日もどうやら来ていたようだな。
ところで「そもそもなんでここに胡桃沢星蘭がいて俺たちと戯れてんだ?」と疑問に思った人もいるだろう。
ということで、まずはその話からしていこうと思う。
0
あなたにおすすめの小説
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
社畜生活に疲れた俺が転生先で拾ったのは喋る古代ゴーレムだった。のんびり修理屋を開店したら、なぜか伝説の職人だと勘違いされている件
☆ほしい
ファンタジー
過労の末に命を落とした俺、相田巧(アイダタクミ)が目を覚ますと、そこは剣と魔法の異世界だった。神様から授かったスキルは「分解」と「再構築」という、戦闘には向かない地味なもの。
もうあくせく働くのはごめんだと、静かな生活を求めて森を彷徨っていると、一体の小さなゴーレムを発見する。古代文明の遺物らしいそのゴーレムは、俺のスキルで修理すると「マスター」と喋りだした。
俺はタマと名付けたゴーレムと一緒に、街で小さな修理屋を開業する。壊れた農具から始まり、動かなくなった魔道具まで、スキルを駆使して直していく日々。ただのんびり暮らしたいだけなのに、俺の仕事が完璧すぎるせいで、いつの間にか「どんなものでも蘇らせる伝説の職人」だと噂が広まってしまい……。
ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった
仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。
そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
異世界帰りの英雄は理不尽な現代でそこそこ無双する〜やりすぎはいかんよ、やりすぎは〜
mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
<これからは「週一投稿(できれば毎週土曜日9:00)」または「不定期投稿」となります>
「異世界から元の世界に戻るとレベルはリセットされる」⋯⋯そう女神に告げられるも「それでも元の世界で自分の人生を取り戻したい」と言って一から出直すつもりで元の世界に戻った結城タケル。
死ぬ前の時間軸——5年前の高校2年生の、あの事故現場に戻ったタケル。そこはダンジョンのある現代。タケルはダンジョン探索者《シーカー》になるべくダンジョン養成講座を受け、初心者養成ダンジョンに入る。
レベル1ではスライム1匹にさえ苦戦するという貧弱さであるにも関わらず、最悪なことに2匹のゴブリンに遭遇するタケル。
絶望の中、タケルは「どうにかしなければ⋯⋯」と必死の中、ステータスをおもむろに開く。それはただの悪あがきのようなものだったが、
「え?、何だ⋯⋯これ?」
これは、異世界に転移し魔王を倒した勇者が、ダンジョンのある現代に戻っていろいろとやらかしていく物語である。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
神様、ありがとう! 2度目の人生は破滅経験者として
たぬきち25番
ファンタジー
流されるままに生きたノルン伯爵家の領主レオナルドは貢いだ女性に捨てられ、領政に失敗、全てを失い26年の生涯を自らの手で終えたはずだった。
だが――気が付くと時間が巻き戻っていた。
一度目では騙されて振られた。
さらに自分の力不足で全てを失った。
だが過去を知っている今、もうみじめな思いはしたくない。
※他サイト様にも公開しております。
※※皆様、ありがとう! HOTランキング1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※
※※皆様、ありがとう! 完結ランキング(ファンタジー・SF部門)1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる