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第四章

138「スカウト④」

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「あ、あの、すみません⋯⋯。君、ソラ君だよね?」
「え?」

 ふいに、声をかけられたほうに振り向いてみると、

「あ! 褐色ビキニアーマーパイセンっ!!⋯⋯⋯⋯じゃなかった。探索者集団シーカー・クラン『一進一退』リーダーの⋯⋯エリンさんじゃないですかっ!?」

 俺に声をかけたのは、探索者シーカーになって初めて『帯同』してくれたクランのリーダーだった。ていうか、『褐色ビキニアーマーパイセン』の印象が強すぎて一瞬、エリンさんの名前が出てこなかった。

「おい、ソラ君。君、私のこと普段は『褐色ビキニアーマーパイセン』なんて呼んでいるのかい?」
「あ、いえ⋯⋯そ、そんなことは⋯⋯」
「嘘をつけ!」
「うっ!? ご、ごめんな⋯⋯さい⋯⋯」

 久しぶりのエリンさんだったが、褐色ビキニアーマーは今でもご健在でなによりである。

「ところで、どうしたんですか?」
「ん? あ、いや、その⋯⋯だな⋯⋯」
「?」

 エリンさんが何か言いたそうにモジモジしていると、

「おい、ソラ君。この女は何だ?」
「明凛!」
「おい、新屋敷ソラ! これはもしかしてお前の⋯⋯女か!!」
「おい、メイベル! いきなり何言ってんだ!」

 明凛とメイベルが間に入ってきて何か面倒くさい感じになった。

 そんな、わちゃわちゃした状態となってエリンさんに悪いことしたなと謝ろうとしたら、

「あ、あの! 私は探索者集団シーカー・クラン『一進一退』のリーダーをやっているエリンと申します! 王明凛様とメイベル・ホワイト様に会えて光栄ですっ!!!!」

 と、エリンさんが顔を真っ赤にしてそんなことを言ってきた。

「ほぉ? 君は私たちを知っているのかい?」
「も、もちろんでございます、明凛様っ!! 私たちはまだB級ランカーの探索者集団シーカー・クランですが、明凛様やメイベル様に少しでも近づけるよう頑張っている次第ですっ!!」
「なるほど。ソラ君、彼女良い子じゃないか」
「は、はあ⋯⋯」

 明凛はエリンさんにそう言われて満更でもないご様子。

 それにしても、エリンさんたちクランってB級ランカーになったんだな。以前、帯同したときはDランカーだったってのにすごい成長だ。

「ふ、ふ~ん? なかなかわかってるじゃない、あなた⋯⋯」
「メ、メイベル様! あ、ありがとうございますっ!!」

 メイベルもドヤ顔でご満悦のご様子。

 しかし、それはそれとして、どうしていきなりこんなところで声をかけてきて⋯⋯⋯⋯あ!

「も、もしかして、エリンさん⋯⋯⋯⋯カメラマン募集で来たの?!」
「あ、ああ、そうだ! 何を隠そう、私は趣味がカメラだからな! 写真も動画も両方に明るいぞ!」

 おお! ま、まさかの、エリンさんが、褐色ビキニアーマーパイセンがカメラを嗜んでいたとは⋯⋯っ!? これは僥倖⋯⋯ではないか!

「そうなんですね! いやぁ、それは助かります。なぁ、これ、エリンさんで決まりでいいんじゃ⋯⋯」

 俺はそう言いながら、明凛とメイベルのほうを振り返った。すると、

「「まだだ!」」

 と、二人ともが腕を組み仁王立ちしながらエリンさんの加入に待ったをかけた。

「な、何でだよ⋯⋯っ!?」

 俺は二人が待ったをかける理由を聞いてみた。すると、

「そんなのビキニアーマーだからに決まっているじゃないか」
「ビキニアーマーだからに決まっておろうが」
「え⋯⋯?」


 ん? んんんん~~~??


********************


「え、えーと、ビキニアーマーだと何がダメなんだ?」

 俺は、明凛とメイベルがビキニアーマーを否定する理由を聞いてみた。

「セクシー路線は求める私の目指す方向性と違うから」
「ビキニアーマー着れない私への当てつけにしか思えないから」

 明凛の回答は何となくわからんでもないが、メイベルは完全に『個人的事情』だった。

「す、すみません!? そ、それじゃ、私ビキニアーマーやめますっ!!」
「何⋯⋯だとっ!?」

 む? それは聞き捨てならないな。

「ダメです。エリンさんはビキニアーマー込みでエリンさんです。そんなエリンさんがビキニアーマーを脱ぐということは、これすなわち人格否定にほかなりません」

 俺は真剣な眼差しでエリンさんに想いを訴えた。

「⋯⋯きも」

 普通にキモがられた。

「まーさっきのは冗談だとして、気になるのはやっぱり彼女の『実力』よね?」
「! 明凛⋯⋯」
「そう。私たちが探索する場所はSランクダンジョンよ? 募集要項にも書いたけどエリンさんは実力的に大丈夫なのかしら?」

 たしかに。俺たちが探索する場所はSランクダンジョン。そんなところで、もし一人の状態で敵にあった場合、自身で切り抜けられるだけの実力があるかどうか、これが一番大事な部分だ。明凛とメイベルはそのことを言っているのだろう。

「「まービキニアーマーとか、ちょっとエッチ過ぎる格好はやっぱりどうかと思うし⋯⋯」」

 あれ? これが本音かな?

 とはいえ、やはりSランクダンジョンで敵にあった時、倒せないにしても一人で敵から逃れるだけの実力はどうしても必要なのは事実だ。

「それじゃあ、早速、実力を確認しに行きましょう!」
「え? 確認しに行く? どこに?」
「どこにって⋯⋯そんなの決まってるじゃない」
「え? どこ?」
「「Sランクダンジョンよ!」」
「「え? ええええええええええっ!?」」
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