異世界帰りの英雄は理不尽な現代でそこそこ無双する〜やりすぎはいかんよ、やりすぎは〜

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第一章

047「C級クラン『戦乙女《ヴァルキュリー》』(5)」

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「亜由美!」
「亜由美ちゃん!」

 吹き飛ばされた私を見て、二人が駆け寄ってきた。

「だ、大丈夫、亜由美っ?!」
「う、うん⋯⋯何とか」

 渚が不安を露わにした声をかけてきたので、私はできるだけ不安を与えないよう明るく返事をする。しかし、

「あ、亜由美ちゃんの⋯⋯私たちの中で一番レベルの高い亜由美ちゃんのあの『ハヤブサ斬り』をまともに受けてノーダメージだなんて⋯⋯。無理だよ、私たちには⋯⋯」
「こ、琴乃⋯⋯」

 琴乃が真っ青な顔で私の本心を代弁したような言葉を発する。

「わ、私が! わ、私の、スキル攻撃で⋯⋯」

 バランス型の渚がそう言ってバロンに向かって遠距離攻撃を仕掛けようとする。ちなみに彼女のスキルは『火炎』という火を使った攻撃スキルで、私と同様『技』を持っている。おそらく、彼女は自身の一番の『技』である『火炎砲弾』を放つつもりなのだろう。しかし、

「ダ、ダメよ、渚⋯⋯あいつには通用しない」
「っ?! で、でも、このままじゃ⋯⋯」
「それよりも! 今は一人でも生き残ることを考えないと⋯⋯。あいつは私たちのことを舐めている。この場の絶対強者だから。でも、だからこそ⋯⋯つけいる隙はある」
「あ、亜由美?」
「亜由美⋯⋯ちゃん?」
「私が⋯⋯囮になる」
「な、何言ってるのよ!」
「ダメだよ、亜由美ちゃん!」
「聞いて! 見て⋯⋯あいつはその場に立ったままでしょ? あいつはいつでも私たちを殺せると思っているから⋯⋯今のこの状況を遊んでいる。だからこそ、私が連続攻撃であいつを引きつけている間に二人にはこの場から離脱してほしい」
「何言ってるの! そんなの許せるわけないじゃ⋯⋯」
「聞いて!」
「「⋯⋯っ!?」」
「二人はこの場から離脱したら急いで40階層に戻ってギルドからB級以上の探索者シーカーの救援を要請して! その間私はあいつをこの場で足止めして生き延びてみせる!」
「そ、そんな⋯⋯あいつを亜由美一人が足止めなんて⋯⋯そんなのできっこないじゃない!」
「できる、私一人なら! でも、私よりレベルの低い2人を気にしたままだとそれは無理!」
「あ、亜由美⋯⋯」
「亜由美ちゃん⋯⋯」

 私は「二人はレベルが低いから」という酷いことを言ってつけ離す。だって、こうでもしないと⋯⋯二人はお願いを聞いてくれないから。

「⋯⋯わかった」
「な、渚ちゃん!」

 渚が私の真意を汲み取ったのか真剣な表情で私の提案を飲み込んだ。

「そのかわり⋯⋯私たちが戻るまで絶対に死なないで! どれだけ汚い手を使ってでもいいから⋯⋯生き延びて!」
「渚⋯⋯。うん、わかった!」
「琴乃、やるよ」
「で、でも⋯⋯」
「亜由美の言う通りにするわよ。どのみち3人がかりで勝てるような相手じゃないのはあなただって理解しているでしょ」
「⋯⋯渚ちゃん」

 渚が琴乃に向かって強い口調で訴える。

「この場での最善を尽くすわよ、琴乃!」
「わ、わかった⋯⋯わかったよ、渚ちゃん!」

 うん。これでいい。

 渚には損な役回りをさせてしまった。

「それじゃあ、私があいつにもう一度『ハヤブサ斬り』を仕掛けるから、そのタイミングで動いて!」
「「わかった!」」

 作戦が決まり、これから私が仕掛けようとバロンに目を向けた。すると、

「え⋯⋯?」

 バロンがとてつもない大きさの火の球体を浮かび上がらせていた。その大きさは直径で約10メートルくらいで⋯⋯私たち3人を余裕ですっぽりと埋めるほどだ。

「こ、これって、火系統のスキルの『技』なの? で、でも、こんなの⋯⋯見たことない」

 渚が横で呟く。確かにこんな火系統のスキル技は聞いたことない。

<<ええ、ええ⋯⋯この球体を見て驚いているんですよね? 無理もないです。だって、これ魔法・・ですから>>
「え? ま、魔法?」

 魔法? スキルじゃなくて⋯⋯魔法って言ったの?

<<ええ、ええ⋯⋯それにしてもこの世界・・・・魔素マナが濃いですねぇ。火属性中級魔法の『火球フレイムボール』でさえ上級魔法に近い威力の魔法が作れるのですから。いや~すばらしい>>

 さ、さっきから、何を言ってるの⋯⋯こいつは?

<<私、さっきここに着いたばかり・・・・・・・・・・・・なのですが、上司から聞いた通りあちらと違ってここでは私程度でも通用するようですねぇ。むしろ、私だけでも十分務まりそうですが⋯⋯>>
「務まる? な、何を⋯⋯」
<<ええ、ええ⋯⋯つまりは、この世界の支配です>>
「え?」
「せ、世界の⋯⋯支配?」
<<そうそう、私まだこの世界に来たばかりで魔法を試していないんですよぉ。なので、ここでちょっと試してみようかと。というわけで⋯⋯お付き合いください!>>

 そう言うと、バロンが『ふれいむぼーる』という魔法で作ったという火の球体を放つ。すると、その球体がスピードを上げまっすぐ飛んできた。

 私たちはあいつが攻撃を仕掛けてくることはないと思ってたため、その火球に反応できず、その場にうずくまったままだった。

 死ぬ。

 私が⋯⋯いえ二人も同じ気持ちだっただろう。

 私たちは目の前に迫る巨大な火球を見ながら死を覚悟した。

——その時だった

暴風豪雪ストーム・ブリザード!」

 パキィィィィィン!

 突然、男性の声がしたと思ったら目の前に迫っていた巨大な火の球体が一瞬で凍りつき、

 ゴトリ⋯⋯。

 氷の塊となって、そのまま地面に落ちた。そして、

「ええっ!? 今のって、たしか『火球フレイムボール』だよな? 何で、現代ここで魔法が⋯⋯?」

 死を覚悟した私たちの目の前に、突然『白い仮面をつけた黒装束の男』が現れた。

「しゃ⋯⋯」
「しゃ?」
「「「喋る魔物ぉぉぉぉぉっ!!!!!」」」
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