「自重知らずの異世界転生者-膨大な魔力を引っさげて異世界デビューしたら、規格外過ぎて自重を求められています-」

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第二章 騎士学園編

024「王都クラリオン・シティーと騎士学園」

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「ここが王都クラリオン・シティー⋯⋯」

 俺は王都クラリオン・シティーに降り立った。

 そして、馬車を降りた俺が最初に驚いたのは人の数と街並みだった。

 俺がいたシュタイナー領は小領地ということもあり、人の数や賑やかさはいわゆる『駅前の商店街』くらいだったが、ここはまるで⋯⋯『アジアの市場』のような人の数と賑わいだった。

 それだけでも驚くべき光景ではあったが、それ以上に興奮したのは、

「ね、猫耳⋯⋯本物だ。あ! あれは⋯⋯ウサ耳⋯⋯かな? す、すごい⋯⋯これぞ、まさに異世界っ!!!!」

 人混みには猫耳やウサ耳といった亜人種の人たちがいた。この世界には獣人の国もあるのだから亜人種がいることはわかっていたが、こうして実際に目にするとやはり感動ものである。

「確か、エルフの国もあったからエルフもいると思うけど⋯⋯ここにはいないみたいだな。まあ、本にもエルフは数が少なく、滅多に自分の国から出ないとあったからな⋯⋯」

 まあ、その辺は今後、他の国へ行く状況になればいつかは出会うこともあるだろう。

 とりあえず『異世界に本当にやってきたんだ』という実感を味わえただけでもよしとしよう!


*********************


 そうして、俺は『平民エリア』を満喫した後、いよいよ騎士学園がある『下級貴族エリア』へと足を踏み入れた。

「学生証の提示をお願いします」
「はい。こちらです」
「うむ。通ってよし!」

 俺は入学資料に書いてあったとおり、騎士学園の学生証を提示して『下級貴族エリア』に入る。一応、身分的には下級貴族なので学生証の提示は不要かと思ったが、この街の人間ではないので今は学生証の提示が必要だった。

 一応、この街の貴族であれば胸などに『身分』を示すバッヂを付けるのでそれの確認だけで通行することができる。

 外から来た俺は今はそのバッヂがないので学生証の提示が必要になるが、今日には寮に届いていると思うので、それを服に身につければ次回からは学生証の提示は不要になる。

「さて⋯⋯ここからが下級貴族エリアか。なるほど、なるほど。やっぱり平民エリアとはずいぶん雰囲気が変わるな⋯⋯」

——下級貴族エリア

 ここもまた人が多いことは多いが、平民エリアに比べて圧倒的な違いがある。

 その一つが、街並みが綺麗であることだ。

「すごい⋯⋯。建物も皆、品があるし、道や外観も整備されていて、まさに高級住宅街という感じだな」

 イメージでいうと『モナコやヴェネチアのような西洋の高級リゾート地』といったところか。建物が青やオレンジといった色鮮やかな色調なので、すごくオシャレな感じだ。

 あと、そこで歩いている人たちの身なりもやはり高級そうな服を身につけているし、振る舞いも上品さを醸し出していた。

 一応、俺も一張羅を来ているからそこまで浮いてはいないと思うが⋯⋯ちょっとこの雰囲気は、前世が庶民だったこともあり緊張してしまう。

 そんなこんなで、下級貴族エリアを進んでいくと、いよいよ目的地のクラリオン王国騎士学園が見えてきた。


*********************


「広っ! あと⋯⋯すっげー豪華っ!!!!」

 クラリオン王国騎士学園の正門に着いた。

 正門を抜けると、通路の脇に綺麗に整備された街路樹があり、その通路をまっすぐ進むと奥に校舎が見える。なんか通路の真ん中付近に噴水とか銅像みたいのもある。

「え⋯⋯と、寮の建物は⋯⋯と」

 俺は入学資料を広げて確認した。

 まず、この正門から右手に見えるのが、俺たち学生が三年間生活する寮の建物で、左手に見えるのが運動場らしい。

「へー、さらに校舎の奥には研究棟や文官棟もあるのか⋯⋯」

 騎士学園は騎士団に入団するための養成機関ではあるが、何も養成するのは騎士だけではない。魔道具を研究・製作する『魔道具研究官』や、国を運用する専門機関⋯⋯いわゆる各省庁で働く『文官』なども養成している。

「騎士学園⋯⋯という名称ではあるが、実際は『大学』に近い感じだな」

 とりあえず、ここまで驚きの連続だったこともあり少し疲れていたので、一旦、自分の寮の部屋へと向かった。


*********************


「さすがに学生はいないみたいだな⋯⋯」

 俺は自分が入る寮へとやってきた。

 寮には人の気配がまったくない。それもそのはず⋯⋯学校が始まるのは一週間後なのだから。

 騎士学園の学生寮は身分ごとに建物が分けられている。王族専用の『王族寮』、上級貴族専用の『上級貴族寮』、下級貴族専用の『下級貴族寮』、平民専用の『平民寮』といった具合だ。

 お察しの通り、身分によって寮が違うということは当然、寮の広さや豪華さも身分相応という作りになっている。

 いやー、清々しいほどの階級社会っぷりである。

 というわけで、俺は下級貴族寮に入り、寮監さんに挨拶をした後、自分の部屋へと向かった。

「おおー! 一人部屋かー!」

 異世界ものでは『相部屋』が比較的よくあるイメージだったので、一人部屋というのは嬉しかった。

 え? なぜかって?

 だって前世でニート歴四十年という実績持ちだもの。他人と一緒に寝泊まりするなんて高度な対人スキル持ち合わせておりません。

 部屋に着いた俺は一旦、休んだ後、そこに届いてあった荷物を整理。そこまで荷物はなかったので、割とすぐに荷物整理も終わった。

「夕食までにはまだ時間があるな⋯⋯。よし、ちょっと散歩でもしてくるか」

 俺は、学園内をいろいろ回ろうということで寮を出た。


*********************


「ここが上級貴族寮⋯⋯で、この先にあるあのでっかい建物が⋯⋯王族寮か」

 俺は寮から出た後、そのまま隣にある上級貴族寮、王族寮といった学園の敷地の右側から散策を始めた。

「それにしても、上級貴族寮も王族寮の人は少ないはずなのに、建物の大きさは下級貴族寮や平民寮よりもデカいな」

 そう。騎士学園の生徒の割合は下級貴族が六割と一番多く、続いて、上級貴族が二割で、王族と平民が一割だ。もっとも王族は一割というより⋯⋯数人という言い方が適切だ。なんせ、王族なんてそんなに数は多くないし、むしろ同じ年代で王族不在というのが普通だ。

「そんな、一人二人入るか、しかも、いつ入るかもわからないのに、あれだけ立派な王族専用の寮があるなんてかなり王族の権力が大きい国なんだな」

 そんな、クラリオン王国のお国事情を考えながら、

「そういえば、今年は王族も入学するって入学資料に書いてあったな。まあ、男性か女性かにもよるが、もし女性ならぜひ、お近づきになりたい(ふひっ)」

 当然、俺の『異世界に転生したらやりたいことリスト』の一つに、身分の高い女性とのハーレムはマストである。

「さて、今後どこまで都合よく展開するかわからないが、まあ、なろう民である俺なら学園編の展開はある程度予測できる。よって、今、考えるべきは⋯⋯⋯⋯俺の入学後の初動か」

 まあ、その辺はいろいろと何パターンかはすでに想定済みだ。あとは、その場その場の判断で問題ないだろう。

「さて、とりあえず残りの時間で学園を一回りして今日は休むか。なんせ本番は⋯⋯⋯⋯明日だからな」

 俺が他の生徒より一週間も早く学園に来たのにはある理由・・・・があった。
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