51 / 145
第二章 騎士学園編
051「一同騒然。さらに⋯⋯?」
しおりを挟む——ガス・ジャガー対カイト・シュタイナーの一戦が始まった。
「火炎弾! 猛襲風刃!」
ガスは試合開始直後、すぐにバッと後ろに下がるや否や、火属性と風属性の中級魔法を同時展開。ディーノの忠告通り、先手必勝で一気に勝負をかけた。
右手から火属性、左手からは風属性を発動。さらに、ガスはその二つの魔法を混ざり合わせ、小型の竜巻の中で猛威を振るう『かまいたち』に、さらに火炎弾の『無数の火の弾』を合体させた。
それは凄まじい熱と風の刃を伴わせて、カイトに襲いかかる。
「合体魔法!『死の輪舞』っ!!!!」
火属性と風属性中級魔法を合体させたガス・ジャガーのいきなりの合体魔法に、
「いいっ!? ガス・ジャガー様の合体魔法『死の輪舞』⋯⋯いきなりかよっ!」
「な、なんていう熱風だ! ここまで離れていてもヒリヒリと熱量が伝わる!」
「ま、まさに先手必勝⋯⋯一撃でカタをつける気だ!」
「下級貴族のカイト・シュタイナーに先手必勝で合体魔法を使うなんて⋯⋯それだけの相手と認めたってことか」
そんな周囲が騒然とする中、
「素晴らしいです、ガス様っ!」
普段、冷静なディーノはガスの先手必勝の合体魔法に手応えを感じ、興奮のあまり声を上げる。
「マズイ! 逃げろ、カイトーっ!」
「おい、カイト! 何やってるんだ! 逃げろバカ野郎っ!」
「いかん、カイト・シュタイナー、逃げろ!⋯⋯⋯⋯ダメ、早く逃げてぇぇぇーーーー!!!!」
そして、二人が戦っている舞台の周囲にいたザック、イグナス、レイア姫ことレイア・クラリオンも悲鳴のような叫びをあげる。
「いかん! カイト、逃げろ! それに直撃すれば無事じゃ済まないぞ!」
もう一つの舞台にいたレコもまた「逃げろ」と必死に声をかけた。
——しかし
「⋯⋯氷結爆砕」
カッチーーーーーーーン!
「「「「「⋯⋯はっ??????????」」」」」
カイトは前回のカート・マロンと同じように、ガスの合体魔法も一瞬で凍結。イグナスとやった時のように『竜巻の氷のオブジェ』を完成させ、そして、
ドッパーーーーーーーン!!!!!
爆散させる。すると、周囲の生徒や先生、その場のすべての者たちがその光景に思考停止&身体硬直を余儀なくされる。
「すごい! 今の二つの魔法を合わせた合体魔法というもの⋯⋯初めて見ました! すごいです、ガス・ジャガー様!」
「⋯⋯バ、バカ⋯⋯な⋯⋯」
自身の今出せる最大の魔力を込めて放った一撃必殺の合体魔法『死の輪舞』が、ただの氷属性中級魔法氷結爆砕に一瞬で凍結し爆散されたガスは、目の前の現実をすぐには受け止められずにいた。
「そ、そんなバカなぁぁぁ!? 中級魔法の火属性と風属性の合体魔法だぞっ!? どうして、ただの氷結爆砕が、あんな一瞬で凍結させることができるんだぁぁぁっ!!!!」
ディーノに関しては、ガス以上に目の前の光景にもはや錯乱している。そして、その脅威の結果はガス・ジャガー陣営以外にも広がる。
「え?」
「ウ、ウソだろ? なんだよ、今の⋯⋯」
ザックとイグナス呆然。
「え? う、うそ? なんで⋯⋯? ただの中級の氷属性魔法でどうして⋯⋯合体魔法が止められるのよ?」
レイア姫もまた呆然。
「す、すごい⋯⋯。ていうか、あのバカ! すごいけど⋯⋯この後、どうすんのよ! もう! これだけのことしでかしたら隠し切れないわよっ!?」
レコも一瞬、カイトの力に感嘆の息を漏らすもすぐに現実に戻り、この後どうごまかせばいいかと頭を抱える。
「じゃあ、次は僕の番ですね。頑張るぞー!」
そんな、道化を演じ続けるカイトがガスだけに見えるように『ニチャァ』と獰猛な笑みを浮かべながら、右手を上に掲げる。そして、またガスだけに聞こえるように小声で呟く。
「⋯⋯俺の魔法をもしも耐え切れたらイグナスのことは許してやる。でも、もし、耐え切れないと思うなら今すぐ土下座しろ。じゃないと⋯⋯死ぬよ?」
「な、何だとっ?! お、おい! それって、どういう⋯⋯⋯⋯え?」
カイトはガスの反応を無視し、そのまま上にあげた右手に膨大な魔力を収束させる。すると、その上にあげた右手から『炎の塊』が出現。すると、それは『ズズズズズ⋯⋯』とみるみる膨張していく。
「な、何だ⋯⋯あれ?」
「炎球? いや、でもそれにしては⋯⋯」
「バカ! あんな馬鹿でかい炎の塊が初級魔法の炎球なわけないだろ!」
「お、おいおい、どんどん⋯⋯大きくなって⋯⋯」
「え? え? ちょ⋯⋯あれ、やばくねーか?」
カイトの手のひらの炎の塊はグングン膨張し、あっという間に四メートルほどに達していた。
「な、なんだ、あの馬鹿でかい炎の塊は?」
「い、いや、いや、カイトの奴⋯⋯あれで、何をするつもりだ?」
ザックとイグナスもカイトの見たことのない膨張する炎の塊に目を奪われている。しかし、ここでこの『膨張する炎の塊』に気づく者が⋯⋯約二名。
「え? カ、カイト・シュタイナーのあれって⋯⋯ま、まさか⋯⋯まさかよね?」
「いぃっ!! あ、あいつ、まさかここで、ガス・ジャガーに⋯⋯」
「「超級魔法『極致炎壊』を打つ気ぃぃぃーーーっ!!!!」」
レイア・クラリオンとレコ・キャスヴェリーの真っ青な顔と絶叫がシンクロする。
1
あなたにおすすめの小説
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
俺、何しに異世界に来たんだっけ?
右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」
主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。
気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。
「あなたに、お願いがあります。どうか…」
そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。
「やべ…失敗した。」
女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!
無能と追放された俺の【システム解析】スキル、実は神々すら知らない世界のバグを修正できる唯一のチートでした
夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業SEの相馬海斗は、勇者として異世界に召喚された。だが、授かったのは地味な【システム解析】スキル。役立たずと罵られ、無一文でパーティーから追放されてしまう。
死の淵で覚醒したその能力は、世界の法則(システム)の欠陥(バグ)を読み解き、修正(デバッグ)できる唯一無二の神技だった!
呪われたエルフを救い、不遇な獣人剣士の才能を開花させ、心強い仲間と成り上がるカイト。そんな彼の元に、今さら「戻ってこい」と元パーティーが現れるが――。
「もう手遅れだ」
これは、理不尽に追放された男が、神の領域の力で全てを覆す、痛快無双の逆転譚!
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる