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第二章 騎士学園編
071「一回生クラス編成トーナメント開幕!」
しおりを挟む「一回生の皆さん——これより一回生クラス編成トーナメントの開会式です。至急、屋内武闘場に集合してください」
朝——放送を聞いた俺たちは校舎の左奥にある体育館のような施設⋯⋯『屋内武闘場』へと急ぐ。屋内武闘場は、端的にいうと『体育館』みたいな施設だが、内部は円形で中央に舞台があり、その周囲を客席が囲む⋯⋯いわば地球でいうところの『ローマ時代のコロッセオ』の室内版といったつくりだ。
屋内とはいうものの、舞台はかなり広く、天井も高いので、戦いにくそうな感じはない。それに、学園長も言っていたが、舞台と観客席の間にはすでに『光魔法の防御結界魔法』が展開されている。これは人が魔法を展開しているのではなく、魔道具を利用して防御結界魔法を展開しているようだ。⋯⋯魔道具、便利だな。
この『クラス編成トーナメント』⋯⋯目的は『騎士学園一回生のクラス決め』というもので、要は一回生の実力を競うイベントであり、あくまで学園行事に過ぎないのだが、クラリオン王国騎士学園ではこのクラス編成トーナメントは外部の者たちが鑑賞することを認めている。
理由としては『騎士学園の活動実績』の宣伝というのが名目らしいが、実際は卒業後の主な進路となる騎士団入団ということもあるので、卒業前にあらかじめ騎士団関係者が目ぼしい生徒をみつけるための場⋯⋯いわゆる『青田買いの場』という位置付けとなっているらしい。ちなみに騎士団以外にも冒険者ギルドやその他有象無象が『青田買い』として見に来ているようだ。
もっとも、注目されるのは『三回生のクラス編成トーナメント』らしく、本来、一回生の大会ごときでは外部からの観覧者はほぼ皆無らしい。それはそうだろう。まだ、入学して間もない生徒たちの試合なんて『子供のケンカ』のようなものだろうからな。
しかし、今回はその様相を呈していなかった。
「一回生の皆さん、初めましてー! 私は二回生の放送部部長兼学園アイドルのフェリシア・ジャスミンでーーす! きゃぴーん!」
「「「「「うぉぉぉぉ! フェリちゃーーーん!!!!」」」」」
武闘場に並ぶ俺たち一回生の前でマイクパフォーマンスを披露するのは、二回生の自称学園アイドル——フェリシア・ジャスミン。ていうか、異世界にアイドルがいるのもさることながら『マイク』なんてものがあることに俺は驚いた。まあ、おそらく声を増幅するための魔道具みたいなものだろう。
ていうか、一回生の半分くらいと観覧席からもこのフェリシア・ジャスミンに激しい声援を送っていた。割と有名な人なのかもしれない。ま、たしかに美少女ではある。しかし、ザックの美少女名鑑にこの子の名前はなかった。ザックの好みじゃなかったのかな?
「さて! なんとなんとーぉ! 今回の一回生クラス編成トーナメントは、これまで類を見ないほどの観覧者が詰めかけております! びっくりー!」
「「「「「わあああああああああ!!!!!!!!!」」」」」
そう。今回の一回生クラス編成トーナメントの観覧席は、ほぼ満席状態となっていた。観客の熱い声が試合前の武闘場を軽く揺らす。
「さて、クラス編成トーナメントは皆さんご存知かと思いますが、あくまで『生徒の実力』を測るための大会ですですー! なので、試合とはいえ、力の差が出た場合は審判のほうで判断して試合をストップする⋯⋯『レフリーストップ』を採用しているよー!」
ふーん、なるほど。レフリーストップがあるのか。たしかにこれなら『力の差』がわかった時点で止められるから大ケガを防げるな。
「今年の一回生は、Aクラス:10名、Bクラス:22名、Cクラス:14名の計46名。ですので、予選トーナメントは三回戦までとなり、その次の試合から『決勝トーナメント』という形になります。尚、予選トーナメント二回戦まではB、Cクラスの生徒だけでの試合となります。これは、皆さんもご存知の通り、Aクラスの上級貴族との魔力差があるため、B、Cクラスの生徒で『選抜』し、その勝ち残った者たちと『入学時Aクラス配属の生徒(上級貴族)』と予選トーナメント三回戦で対決となります」
ふーん。予選二回戦まではBクラスとCクラスのみの戦いとなるわけか。
「そして、この予選トーナメント三回戦で勝ち残った生徒は決勝トーナメントへと進みますが、その時点でその生徒たちはAクラス入りが確定。『Aクラス序列』が獲得となりますぅ~!」
「おお~」と一回生から軽く声が上がる。どうやら『Aクラス序列』をかなり意識しているようだ。
「そして! 今回はなんとサプライズがありますっ!」
「え? サプライズ?」
「なんだ、なんだ?」
「何があるんだ?」
司会のフェリシアの『サプライズ』という言葉に、周囲の一回生だけでなく、観覧客も含めてザワザワとざわめき出す。そして、
「一回生のカイト・シュタイナー君。彼はなんとクラリオン王国騎士学園史上初となる『学園長推薦シード』というシード枠として、決勝トーナメントからの出場となりまーす! すごーい!」
「「「「「な⋯⋯っ!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」
フェリシアのキャピキャピなテンションで伝えられたサプライズは、一回生はもちろん、観客席及び先生たちも含めた、ほぼ全員にかなりの衝撃を与えたようで、皆が呆気に取られ場がシーンとなる。しかし、
「もちろん、決勝トーナメント出場決定なので、カイト・シュタイナー君のAクラス入りはこの時点で確定どぇーす!」
「う⋯⋯うぉぉぉぉ! なんじゃ、そりゃー! こんなの聞いたことねーっ!!!!」
「マジか! 予選なしのシードて、それって⋯⋯めちゃめちゃ強いってことなのか! カイト・シュタイナーって奴は!」
「どいつだ! どいつがそのシードの生徒なんだぁ?!」
観覧客が一斉に声を上げると、一回生の全員が俺に目線を向けた。
「あ! あいつだ! あいつが『学園長推薦シード』の⋯⋯⋯⋯カイト・シュタイナーだぁぁっ!!!!」
「「「「「おおおおおおおおおおお!!!!!!!」」」」」
俺の想像以上に観覧席から一斉に歓声が上がった。
何、そのテンション⋯⋯怖いんだけど。
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【一回生クラス編成トーナメント】
『一回生の人数』
Aクラス:10名、Bクラス:22名、Cクラス:14名の計46名
『予選トーナメント』
・Bクラス:22名、Cクラス:14名の合計36名のうち、カイト(俺)を除く35名で二回戦まで試合を行う
・予選トーナメント一回戦終了の時点で勝者はシード1名を入れた『17名+シード1名』の『18名』となる
・予選トーナメント二回戦終了の時点で勝者は『9名』となる
・予選トーナメント三回戦で、『入学時Aクラス配属』の上級生徒10名が加わり『19名』で試合を行う
・予選トーナメント三回戦終了の時点で勝者はシード1名を入れた『9名+シード1名』の『10名』となる
『決勝トーナメント』
・予選トーナメントを勝ち上がった10名と、カイト(俺)を加えた『11名』で対決となる
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