「自重知らずの異世界転生者-膨大な魔力を引っさげて異世界デビューしたら、規格外過ぎて自重を求められています-」

mitsuzoエンターテインメンツ

文字の大きさ
73 / 145
第二章 騎士学園編

073「予選トーナメント一回戦(2)」

しおりを挟む

「それでは、予選トーナメント一回戦第一試合、マルーク・マキアート、イグナス・カスティーノ選手の入場です」
「「「「「うおおおおおおお!!!!」」」」」
 司会の学園アイドル、フェリシア・ジャスミンが高らかに選手入場を告げると、大きな歓声が上がった。

「どうも、イグナス様」
「⋯⋯マルーク・マキアート」
「イグナス様とこうやって試合をするのは『子供教室』の卒業前の模擬戦以来ですね」
「⋯⋯ああ。そうだな」
「まあ、あの時は私の圧勝でしたが⋯⋯フフフ」
「⋯⋯」

 イグナスはマルークの言葉に無言の返事を返す。

「さあ、試合の前にもう一度、ルールをご説明しますですー! まず⋯⋯」

 そう言って、フェリシアが試合前に再度ルール説明を始めた。

——————————————————

【クラス編成トーナメント※ルール】

・目的は「生徒の実力測定」であるため殺し合いではない
・実力差がある試合は、レフリーの判断で止めるレフリーストップがある
・舞台の外に出た場合『テンカウント』で戻らなければ負けとなる
・試合続行可能かどうかの判断が必要なときは『テンカウント』を取って判断する
・超級魔法の使用禁止 ←New
・決勝トーナメント進出となるAクラス決定者だけは、全員『序列』が与えられる(基本は十名)
・予選敗退となるB、Cクラスの『序列』は、結果と試合内容で先生方のほうで決定される

——————————————————

「おいおいおい、シレっと『New』なルールが追加されてんぞ?」
「え?『超級魔法の使用禁止』? なんで、そんなルールがわざわざ追加されてんだ?」
「ま、まさか、超級魔法を使える奴が⋯⋯いるってこと?」

 ざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわ⋯⋯。

 観客がフェリシアのルール説明に、大いにざわつく。

「えー、今回新しく導入されたルールにつきましては、万が一ということが無いようにという配慮で追加となりましたので、特に気にしないでください~⋯⋯と学園長が言ってたよーん!」

 観客のざわつく空気をものともしないフェリシアが、キャピキャピーンとテンション高く補足を入れる。

「フ⋯⋯。『超級魔法の使用禁止』か。まったく、笑わせる。これって、アレですよね? イグナス様と一緒にいるあのカイト・シュタイナーという下級貴族が、合同魔法授業で魔力暴走させたのを誰かが『超級魔法』だと勘違いしたやつですよね?」
「さあ⋯⋯」
「魔力暴走を超級魔法と勘違いするとは、全く迷惑な話です。しかも、何を血迷ったか大会のルールに『新ルール』として適用するなんて、これじゃあ、まるで『本当に超級魔法を使える生徒がいる』と周囲に勘違いさせるようなもんじゃないですか。まったく、学園長も何を考えているのやら⋯⋯」

 そう言って、マルークが大げさに肩をすくめる。

「まあ、そんな話はどうでもいいですね。イグナス様、試合⋯⋯楽しみましょうね?」

 そう言って、マルークがニヤ~と下品な笑みを浮かべる。しかし、

「いや、そんな楽しむほど時間は掛からんだろう」
「何?」
「それでは、一回戦第一試合、試合開始ーーーーーーっ!!!!」

 ゴーーーーーーーン!

 フェリシアの掛け声と同時に、観覧席の最上階にある銅羅がゴーンと大きく鳴った。

「いきますよ、イグナス様! 炎球フレイム・ボール!」

 ゴッ!

 試合開始早々、マルークが先手必勝と言わんばかりに炎球フレイム・ボールを放つ。炎球フレイム・ボールの大きさから見ると、かなりの使い手のようだ。しかし、

 バシュ!

「え?」
「へ?」
「「「「「は?」」」」」

 マルークの放った五十センチ大の大きな炎球フレイム・ボールを、イグナスが右手だけで払うと炎球フレイム・ボールが消失。そのイグナスの対処に司会も観客も、何より魔法を放ったマルーク本人も「何が起こったのかわからない」とでも言いたげな表情を浮かべ、呆然としていた。

「イグナスのあのオリジナル技。やっぱ凄えな⋯⋯」
「はい」
「ホントっすね」

 ガスもディーノもカートもイグナスのマルークの炎球フレイム・ボールを処理した『技』に軽くため息を吐く。

「氷属性初級魔法と風属性初級魔法レベルの魔法威力を『手』に留めた状態にして、相手の魔法を弾く⋯⋯よく、そんなこと思いつきますね」

 俺もイグナスのそのオリジナル技を初めて見た時は感心した。皆がイグナスの『魔法センスの高さ』を絶賛する所以である。

「まー、氷と風属性の魔法と相性の良い『火属性魔法』限定ではありますが、それでもオリジナル魔法を作れるというのがすごいと思います」

 ディーノが「限定的とはいえすごい」と感心しながら説明する。

「⋯⋯思いつきもすごいが、本当にすごいのはそれを実際に具現化し、オリジナル魔法に昇華できるところだ。やっぱ、イグナスあいつはすげーわ」

 ガスは体を震わせながら・・・・・・・・イグナスを睨む。感心と嫉妬が入り混じっているような表情だ。

「な、なんだ、今のは!? ま、まさか! イグナス様、魔道具を使っているのではっ!?」
「は? んなわけねーだろ?」
「お、おい、レフリー! ボディーチェックだ! イグナス様をすぐにボディーチェックしろ!」

 ここで、一旦試合が中断され、イグナスのボディーチェックが入った。

「え? 何、どうしたの?」
「どうやらマルークが今のイグナスの魔法処理に『魔道具が使われた』と思って、レフリーにボディーチェックを要求したようだな」
「はっはっは。わからないでもないですよ。初見で、イグナスのあのオリジナル魔法『爪弾きストラミング』を見たら、私でもマルークと同じようにレフリーへボディーチェックを要求します」

 ディーノが上品に笑いながら呟く。結局、レフリーがイグナスをボディーチェックしても何も出てこなかったということで試合再開となった。

「ぬ、ぬぅぅ~。卑怯ですよ、イグナス様。魔道具どこに隠しているんですか?」
「いや、卑怯も何も魔道具なんて持ってねーよ」
「そんなわけありません! あんな魔法、見たことないです!」
「いや、だって、あれ⋯⋯俺のオリジナル魔法だもの」
「へ?」

 ざわざわざわざわざわざわざわざわざわ⋯⋯。

「お、おい、聞いたか?」
「あ、ああ。今のオリジナルの魔法だったのかよ?」
「い、いや、オリジナル魔法なんてのを、なんで一回生が編み出してんだよ!?」

 観覧席はもちろんだが、イグナスの『オリジナル魔法発言』に試合を観覧していた他の一回戦シードとなっている入学時Aクラス配属の一回生たちも驚きを隠せないでいた。あ、レイア姫様も「えっ!」てな感じで驚いているな。驚いている顔が普段の凛とした感じじゃなく等身大の女子な感じで実にかわいい。

「そ、そんな、オリジナル魔法だと!? バ、バカな⋯⋯」

 マルークが何度も何度も「そんなことあるわけない」と呟く中、イグナスが一言。

「⋯⋯氷結凝固フリーズ・パック!」

 ピキ⋯⋯っ!!!!

 イグナスが氷属性中級魔法『氷結爆砕フリーズ・ブラスト』の『爆砕』が無いバージョンの『瞬間冷却特化』の氷属性中級魔法『氷結凝固フリーズ・パック』を展開。マルークが一瞬で氷漬けとなる。

 ここで、レフリーがテンカウントを唱えるが、途中で試合続行不可能と判断したのかレフリーストップという仕草をした。

「ストップ! ストーーープッ!! レフリーストップだぁぁぁーーーっ!!!! イグナス・カスティーノ選手の勝利です!!!!」
「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」」」」」

 司会のフェリシアが興奮気味にイグナスの勝利を宣言。観客もイグナスの圧倒的勝利に大興奮する中、イグナスは、

「あーーーー! うるせーーーーっ!!!!」

 と一人、愚痴りながらさっさと舞台から去っていった。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

暗殺者から始まる異世界満喫生活

暇人太一
ファンタジー
異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。 流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。 しかし、暗殺者生活は急な終りを迎える。 同僚たちの裏切りによって自分が殺されるはめに。 ところが捨てる神あれば拾う神ありと言うかのように、森で助けてくれた男性の家に迎えられた。 新たな生活は異世界を満喫したい。

処理中です...