「自重知らずの異世界転生者-膨大な魔力を引っさげて異世界デビューしたら、規格外過ぎて自重を求められています-」

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第二章 騎士学園編

093「決勝トーナメント一回戦(3)」

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「さて、第二試合はザック・カーマイン選手VSウキョウ・ヤガミ選手です! ザック選手は前の試合、上級貴族のドレイク・ガリウス選手相手に引き分け勝利を掴み取り決勝へとコマを進めた、予選トーナメントからの出場選手で唯一の下級貴族出身の生徒となります! すごーい!」

 そう、ザックは予選トーナメントから出場した中で唯一、下級貴族の生徒として決勝トーナメントに進出した生徒となる。俺も身分は下級貴族ではあるが予選はシードだったからね。

「対するは! 先ほどラディット国王様からも発表があったようにヤマト皇国出身で身分はクラリオンでいうところの上級貴族にあたる方! 前の試合も圧倒的な強さで一瞬で試合を終わらせました! そんな強者にザック選手がどこまで迫れるか、目が離せませんっ!」
「「「「「ワァァァァァァァァァァ!!!!!」」」」」

 フェリシアの煽りアナウンスに観客が盛り上がる横で、二人が開始位置に立った。

「それでは、第二試合はじめぇぇぇーーーー!!!」

 ゴーーーーン!

「よ!」
「⋯⋯え? あ、ど、ども」
「君、カイト・シュタイナーの友人だってね」
「え? あ、はい」
「この大会が終わったらさ、カイト・シュタイナーや君たちと仲良くなりたいんだけどどうかな?」
「え? あ、ど、どうでしょう⋯⋯」
「ま、個人的には君にも・・・・興味があるんだけどね、ザック・カーマイン君?」
「え?!」
「クラリオン王国では下級貴族の魔力量は上級貴族と比べてかなり少ないんだろう? なのに君は前の試合、上級貴族の実力者の一人であるドレイク・ガリウス君に引き分けとはいえ勝利に近いものを収めた。そんな君に興味が湧かないわけないだろう?」
「⋯⋯」
「ちなみに俺はカイト・シュタイナーや周囲にいる君たちをずっと見ていたが、ザック君や他の友人たちはあの合同魔法授業の後から・・・・・・・・・・急激に強くなったよね?」
「⋯⋯何が言いたいんですか?」

 二人が⋯⋯というより、ウキョウが試合が始まった途端、一方的にザックに話始めた。すると、

「おい! 何、ブツブツしゃべってやがる! 早く戦えっ!!!!」
「何やってんだー! もう試合始まってんだぞっ!!!!」
「もっとマジメにやれーーーー!!!!!!!」

 試合が始まっても一向に動かない二人に、痺れを切らした観客が不満を叫ぶ。

「いやいや、誤解しないでくれよ。まー確かに、君たちが急激に強くなった理由・・は知りたいけど。それとは別に俺やリュウメイ⋯⋯王太子も君たちに何かしようとしているわけじゃない。本当に仲良くなりたいだけなんだ」
「そ、そんなこと、俺に言われても困ります。カイトに直接聞いてください」
「⋯⋯そっか、そうだよな。じゃあ、いつ当たるかわからないが⋯⋯⋯⋯舞台で直接・・・・・聞いてみるとするよ」
「⋯⋯それは俺に勝って・・・・・、という意味ですか?」
「フッ⋯⋯。想像にお任せする、よっ!!!!」
「っ!?」

 ウキョウは話終わると同時にザックに物凄いスピードの右拳を繰り出す。しかし、

 パシッ!⋯⋯⋯⋯ゴォっっ!!!!

 ザックは突然のウキョウの右ストレートにも驚くことなく、冷静にその拳を左手で受け止めると同時に、その勢いを利用して体を回転させ、裏拳を放つ。

 パシッ! グルンっ!!!!

 が、ウキョウはザックの裏拳を読んでいたのか両手で鷲掴みすると今度は、

「ウォラァァァァーーーーーっ!!!!」

 ブン⋯⋯っ!!!!

 力任せにザックを壁へと無造作に放り投げた。⋯⋯が、

 ダン! バッ!

 ザックは勢いよく壁に飛ばされたものの空中で一瞬で体を入れ替え、壁に着地するように足をつけて、勢いのまま舞台へと戻った。

「やるじゃねーか、ザック・カーマイン」
「⋯⋯どうも」
「「「「「ワァァァァーーーー!!!!!」」」」」

 試合開始後、すぐに動かなかった二人に不満を募らせていた観客だったが、二人の今の一瞬の攻防に大いに湧いた。

「ウォォォ! すげーーー! なんだ、今の攻防はっ!!!!」
「これが一回生⋯⋯十歳って、ウソだろっ!?」
「すげぇ! すげぇ! すげぇぇぇぇーーーっ!!!!」

 観客が興奮して大歓声を上げる中、二人が今度は一気にギアを上げる。


********************


「どんどん行くぞ、ザック・カーマイン! 土属性初級魔法『砂塵ダスト』!」

 ザザァァァァァ!!!!

 ウキョウがザックから一度距離を取ると同時に、土属性初級魔法『砂塵ダスト』を展開。ザックの目の前を大量の砂が襲った。通常、この『砂塵ダスト』は目眩し・・・に使われることが多い。つまり、これはまさに目眩しの攻撃であることには間違いない。

 通常、この『砂塵ダスト』は風魔法や水魔法、氷魔法ですぐに霧散させたり、吹き飛ばしたり、洗い流せば特にどうってことない攻撃ではあるが、だがザックは風や水、氷といった属性魔法を持たない。いや、それどころかザックは『火属性魔法特化』である。

 その場合、火属性魔法で『砂塵ダスト』を防ぐことは難しい。そもそも土属性と火属性だと『土属性』のほうが火属性よりも相性が良い・・・・・為、火属性魔法特化のザックにとって、この攻撃は厳しい攻撃であることを意味する。

「くっ!?」

 ザックは一瞬避けようと考えた。しかし、それは避けることを想定して攻撃を仕掛けてくるというウキョウのであると判断したザックはそのまま『砂塵ダスト』を逃げずに正面から受けた。
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